コロナ禍の若者・低賃金層などの雇用への影響

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2021年8月

ロックダウンの段階的な解除を受けて、労働市場にも雇用の増加や失業率の低下など、改善の兆しが見られ始めているものの、若年層は依然として厳しい雇用状況に直面しているほか、低賃金層などでは仕事への復帰が難しい状況もみられる。

若年層が失業・非労働力化

統計局によれば、2021年2-4月期の失業率は4.7%で、ピークとなった昨年10-12月期(5.1%)から4カ月間連続で改善が続いている。歳入関税庁に登録された賃金支払い対象の被用者数も、昨年11月以降緩やかな増加に転じており、5月には前月から19万6780人の増となった(図表)。特に宿泊・飲食業(5万3767人)や事務・補助サービス業(5万28人)などでの増加が顕著だ(注1)。経済の再開に合わせて求人数も多くの業種で拡大しており、一部の業種では労働力の調達が困難な状況に直面しているともいわれる。これを反映して、賃金上昇率は4月時点で5.6%と、消費者物価上昇率(1.5%)を大きく上回る伸びを示している。

しかし、雇用の好調は未だ若年層に十分及んでいないとみられる。2021年2-4月期の失業率は16-17歳層で32.0%、18-24歳層で11.7%であり、同期までの1年間で就業率が大幅に悪化し(16-17歳層でマイナス8.4ポイント、18-24歳層でマイナス2.1ポイント)、失業及び非労働力化が進んだ。非労働力人口では「学生」を理由とする層が急速に増加している。

図表:被用者数の推移 (人)
画像:図表

  • 出所:Office for National Statistics ‘Labour market overview, UK: June 2021’

低賃金層の仕事への復帰に困難

シンクタンクResolution Foundationは、低賃金層における状況をまとめている(注2)。コロナ禍の影響により、失職や一時帰休、時間・収入の減少に直面した労働者の比率を所得階層別にみると、第1五分位層(最も所得の低い20%)では21%で、第5五分位層(7%)の3倍にのぼる。また、政府の実施する「雇用維持スキーム」(一時帰休中の従業員について賃金の8割を補助)により一時帰休の対象となった者のうち、全体では44%が元の仕事に復帰しているが、第1五分位層では36%に留まり、38%が未だに一時帰休状態にある(全体平均は34%)ほか、18%が仕事を変えている(同12%)。なお、影響の大きかった業種のうちでも、卸・小売業では元の仕事に復帰する労働者の比率が17%と相対的に低く(飲食業やレジャー・対人サービス業ではそれぞれ23%と31%)、転職についても別業種への転職比率が12%と他業種に比して高い(同、4%と5%)傾向にあるという。

シンクタンクはまた、今後の経済回復の過程では中高年層の労働市場への復帰が課題となる可能性を指摘している(注3)。理由として、高年齢層では、一時帰休がより長期にわたっていること、また若年層と違って、コロナ禍の影響をそこまで受けていない業種の従事者が多いとみられる(今後の経済の回復の恩恵を受けにくい)ことなどを挙げている。

参考資料

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