コロナ感染拡大による自動車産業の業績悪化

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2021年8月

フランスの2020年の新車販売台数は前年比25.5%減少し、1975年の水準まで落ち込んだ。コロナ禍の業績悪化が大きく影響しており、自動車部品として欠かせない半導体の不足による操業停止が追い打ちをかけている。各社とも部分的失業制度を活用するほか、労使合意に基づく希望退職制度などを導入して危機を乗り切ろうとしている。

販売台数が1975年の水準まで減少

フランスの2020年の新車(乗用車)販売台数は約165万台で、前年の220万台と比較して25.5%減となり、1975年の水準まで落ち込んだ(注1)。特に2020年3月は前年同月比72%減まで急激に落ち込み、翌4月は同88.8%減まで達した。その後は持ち直し、12月は前年同月比11.8%減にとどまったが、最終的に年間の販売台数落ち込みは1990年代の不況や2000年代の経済危機にも経験したことのないものになった。

現時点の予測では2021年は前年比10.7%増、2022年は10.5%増に回復する見込みであるが、コロナ禍前の水準に戻るのは2025年と予想されている。

この業績悪化は、2020年春の1回目のロックダウン時に、販売店や工場が休業したことに加え、経済危機への懸念から消費者の間で買い控えが広がったことに起因する(注2)。また、ロックダウンや国境閉鎖の影響で旅行客が減少したため、乗用車販売の大口顧客であるレンタカー会社の購入台数が減少した要因も大きい。

半導体不足による操業一時停止と給与への影響

さらに追い打ちをかけるように、主要部品に欠かせない半導体不足が自動車生産に影響を与えている。2020年の自動車需要の激減を受け、自動車部品メーカーは、半導体の発注量を削減した。同時期に携帯電話やタブレット向けの半導体需要が高まったため、半導体メーカーは生産体制を切り替えた。しかしその後、自動車の需要が盛り返したため、改めて半導体を発注したが、半導体メーカーはすぐにその要求に応えることはできなかった。

2021年3月の調査結果では、部品メーカーの92%で自動車部品に組み込む半導体の納品に遅れが出ており、52%で原材料費が上昇している(注3)。それにより、半数以上の部品メーカーが生産ラインの停止を余儀なくされ、3分の1に相当する従業員が部分的失業制度による休業をしている。

こうした部品メーカーからの供給の遅れによって操業を停止せざるを得ない自動車メーカーが続出した。ステランティス (プジョー・シトロエン(PSA)・フィアットの合併による企業)では、ラ・ジャネ工場やソショー工場で、2021年3月以降、断続的に数日間から1週間程度、操業が停止した。ルノーでもフィラン工場やSTA工場などフランス内外の工場で操業が一時停止に陥った。

自動車メーカーにおける操業停止が繰り返されたことにより、従業員の給与にも影響が出ている。ステランティスでは、休業の場合に賃金が全額保証される84時間を超過するケースが出てきており、労組は長期部分的失業制度(注4)の適用に向けて労使交渉の開始を要求するとしている(注5)

ルノー:部分的失業と希望退職制度

ルノーは、2020年の損失が80億ユーロに達したため、2021年2月、経費節減策の一環としてパリ首都圏で就労する従業員のうち約1万5000人に部分的失業制度を適用し、毎週金曜日を休暇(週休3日)にすることを決定した(注6)。パリ近郊の4事業所で就労する技術者及び事務部門が対象で、工場労働者は含まれていない。部分的失業は2020年3月から実施されおり、今回はそれを8月中旬まで拡充する予定である。

部分的失業制度により国および失業保険から従前賃金の70%が支給され、会社が残りの30%分を補填することで労使が合意している。ただし、5日間の部分的失業につき1日の有給休暇が減らされることとなる。

ルノーはこの他の経営改善策として希望退職制度を実施中である。2020年11月、技術者及び事務部門で2500人の希望退職を募る計画に労使が合意した(注7)。2021年9月末までに1900人達成を目標としているが、3月までに応募してきたのは約300人にすぎない。労組によると経済情勢が悪化する中での希望退職応募には、他社の採用計画や個人的な起業が欠かせないが、コロナ禍でそれも難しく、会社側に不満を持っていたとしても、退職することを望まない者が多いという。そのため好条件を提示して改めて募集しているが、退職圧力を問題とする労組もある(注8)

(ウェブサイト最終閲覧:2021年8月12日)

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