労使合意に基づく部分的失業の特別制度の導入
 ―コロナ禍で更なる解雇の回避に期待

カテゴリー:労働法・働くルール労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2020年10月

事業の縮小または一時停止を余儀なくされた企業の支援を目的とする部分的失業制度(chômage partie、日本の雇用調整助成金制度に相当)は、コロナ対策の一環として、2020年3月から特別措置が実施されている。最賃水準の労働者には従前賃金の満額を保障するほか、手続きを簡素化し、事後申請も可能となった。6月に入り、ポストコロナを見据えて恒久的な制度の検討がなされ、通常の制度では保障する賃金水準を引き下げることとした上で、労使合意が締結された産業や企業を対象として、より高い水準の賃金を保障する特別制度「長期部分的失業制度(APLD)」が導入された。8月末までに航空機製造大手のサフランや金属産業において労使合意が成立している。

逼迫する失業保険財政を勘案し制度を見直し

部分的失業制度は、新型コロナウイルス感染拡大を受け、2020年3月以降は助成額を拡大する特別措置が取られた(注1)。利用者数は3月下旬から急拡大し、4月末までに被用者の3分の1に相当する880万人にのぼった。制度の拡充によって失業者の急増を防ぐことができたが、保険制度を補填する国の負担は第3次補正予算で310億ユーロにまで膨れ上がった。5月に入って特別措置の見直しが検討され、5月11日の外出制限解除を受けて、6月1日から保障水準が引き下げられた。

労使合意が成立した企業では、より高い賃金水準を保障

6月に入って失業保険制度の恒久的な維持という観点から、利用条件を段階的に厳格化する検討が労使を交えて行われ、長期部分的失業制度の導入が決まった。7月1日から導入されたこの制度は、事業所や企業、企業グループレベル、あるいは産業レベルでの労使合意を条件として、より高い賃金水準(通常は従前賃金の60%だが70%)を保障する制度である。労使合意には、適用期間、対象となる事業や従業員、労働時間削減の上限、雇用及び職業訓練に関する事業主の誓約、制度の実施状況を労働組合や従業員の代表組織に対して情報提供する方法などを明記しなくてはならない(注2)。制度利用中に経済的理由による解雇が行われた場合、助成金の支給は停止され、雇用主は受給した助成金の全額返還が求められる。

航空機業界(サフラン)における労使合意の事例

航空機業界や金属産業において労使合意が成立しており、労使協議に入る予定の企業もある。

航空機エンジンを製造するサフランは、航空機需要の激減などの影響を受けて、全世界の従業員9.5万人(2019年末時点)のうち、アメリカやメキシコ、イギリスなどを中心に1万人を解雇することなどによって削減した。フランス国内の従業員は4.5万人で、そのうち1.2万人を削減する必要あると試算されていたが、7月初旬に労使が合意に至り、長期部分的失業の活用により解雇が回避されることとなった(注3)。2022年末まで制度を利用する予定で、フルタイム換算で6000人の労働時間の削減が実施される。それと同時に、年金支給開始年齢に近い、あるいは独立の意向を持っている従業員のうち3000人を早期退職させることによって、解雇せずに従業員数を削減する計画に労使が合意した。

金属産業における労使合意の事例

金属産業においても、経営者団体・金属産業連合(UIMM)と代表的労働組合のうちフランス民主労働同盟(CFDT)、管理職組合総連盟(CFE-CGC)、労働者の力(FO)の間で同様の合意が7月30日に成立した(注4)。産業レベルでは初めてとなる。この合意は、2025年第1四半期まで有効で、金属産業の企業のうち、事業所や企業、企業グループにおいて労使合意が締結されていない場合に利用することができる。FOは、経済的理由の解雇(整理解雇)など大きな損害を与える他の法的措置が回避できるとして歓迎している。

エアバスにおける労使合意の事例

エアバスでは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、商用航空機製造が約40%削減となり雇用削減の計画が挙がっていた。6月には全世界で1万5000人、フランス国内で4248人を削減する計画が発表された(注5)。労組は経営側に人員削減の計画を回避するために長期部分的失業制度の活用を促した(注6)。労使協議の結果、10月12日に早期退職の実施、再訓練による転職斡旋、起業支援等の活用とともに、長期部分的失業が盛り込まれた労使合意が成立した(注7)。部分的失業制度を約1万人の従業員および生産部門の管理職に適用し、週4日の就業を隔週で実施することによって、今後2年間で1500人の雇用が維持される見込みである。主要労組であるFOは今回の労使合意によって解雇が回避されることを強調しているが、経営側は2021年3月までに早期退職の人数や起業支援が計画どおりに実現できた場合に解雇が回避されるが、計画どおりにいかなければ改めて人員削減の必要性について検討する必要があると強調した(注8)

労組ナショナルセンターによる評価

今回、各社で成立している労使合意についてFOのナショナルセンターは、諸手を挙げて歓迎しているわけではない。労使合意の対象外となる従業員が解雇される可能性が残されていることが大きな懸念材料だと指摘している(注9)

(ウェブサイト最終閲覧:2020年10月26日)

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