コロナ後を見据えた若年者就労支援策

カテゴリー:若年者雇用労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2021年5月

カステックス首相は労使代表を集めた社会対話会議(以下、会議)を3月15日に開催し、直近の新型コロナウイルスの感染拡大は厳しさを増す傾向にあるが、一連の支援策の出口戦略を示す必要性を改めて強調した。首相は、特に若年者支援について言及し、将来を見据えて社会的保護を保障するとともに、専門性を高めることによって長期雇用へと導く方策に注力する考えを示した(注1)。また、昨年に引き続き、コロナ禍の影響を受けた就労者の支援策として特別賞与の非課税措置を実施する考えを表明した。

見習訓練支援を延長

会議では、2020年7月から実施されている見習訓練を対象とする支援の期限を延長することが決まった。2021年2月末までに契約を締結した企業に対して、18歳以上30歳未満の場合は1人当たり8000ユーロ、18歳未満の場合は1人当たり5000ユーロの奨励金を支給する支援策(注2)を、現行制度のまま制限を加えず、2021年末まで継続する。

また、2020年8月から実施されている26歳未満の若年者を3カ月以上の有期あるいは無期の雇用契約で採用した企業を対象として4000ユーロの奨励金を支給する措置は、3月31日の期限を5月末まで延長する。ただし、4月からは対象範囲を制限することになり、法定最低賃金(SMIC)の2倍までの上限を1.6倍までに引き下げる。

この見習訓練契約と若年者雇用の促進策(1人の若者に対して、一つの解決策:1 jeune, 1 solution)によって、2020年8月から2021年1月までの間に26歳未満の若年者約130万人が3カ月以上の有期あるいは無期の雇用契約で採用され、そのうち見習訓練契約は50万人以上であった(注3)。見習訓練に対する奨励金には49万5000件の申請があり、若年者雇用に対する奨励金には約34万件の申請があった(注4)

労使合意の企業に特別賞与の非課税措置

首相は会議において、若年者対策に加えて、コロナ禍の影響を受けた就労者の継続的な支援を発表した。2019年の黄色いベスト運動や2020年のコロナ危機の中で労働者を支援するため時限的に導入した措置と同じく、従業員へ支給された特別賞与のうち、1000ユーロまでを対象に公租公課・社会保険料を全額免除する特別措置である。今回は労使合意を条件として上限が2000ユーロに引き上げられる。

従業員への利益分配協定(accord d’intéressement)を年末までに締結した企業や、店舗のレジ業務や会計処理係、清掃スタッフ、ごみ収集員、配達員など、いわゆる「第2線」(« deuxième ligne »)に分類される職種の就労者の賃上げに関する産別労使交渉を開始した部門が上限引き上げの対象となる(注5)

労使双方から異論を唱える指摘

会議では、若年者対策の出口戦略に関して、労組から異論が出された。FO(労働者の力)からは、公的支援の出口戦略を考える必要性は認めるが、支援の終了を過度に早めないよう留意する必要があるとの指摘が出された(注6)

特別賞与の非課税措置についても、労使それぞれの立場から異論が表明された。経営者団体MEDEFは、任意制度ではあるものの、企業にとって最悪の時期であり、決して小さくない賞与支給の負担を企業側に強いる圧力が働くのではないかとの懸念を示した。労組側は、任意制度であることを問題視し、FOは恩恵を全就労者に行き渡らせるべきであると指摘した。他方で、CGT(労働総同盟)は低賃金層の購買力を向上させるためには、任意制度よりも最低賃金の引き上げが必要との姿勢を改めて示した(注5参照)。

(ウェブサイト最終閲覧:2021年5月24日)

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