コロナ禍の新卒者を対象とする雇用促進策
 ―新規若年者採用の企業に助成金

カテゴリー:若年者雇用雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2020年11月

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて企業が人員の採用を手控える中、夏休み明けには新卒者70万人~90万人の若年者が労働市場に流入したと見られている。そうした若年労働者がコロナ禍の影響で失われた世代とならないための対策が実施されている。2020年7月末に可決した第三次補正予算では若年者(16歳以上25歳未満)を採用したり見習訓練契約を締結した企業を対象とする助成が盛り込まれた。また、9月初旬に新たに決定した1000億ユーロの経済対策でも就職が困難な若年者を対象とする雇用対策が盛り込まれている。この対策を実施した結果、8月と9月に70万人以上の若年者が新規採用された。

25歳未満の若年者採用の企業に特別手当の支給

夏休み前の7月23日、カステックス首相は、若年を対象とした雇用促進策(1人の若者に対して、1つの解決策:1 jeune, 1 solution)を発表した。2020年8月から2021年1月の間に、雇用契約期間3カ月以上で若年者(16歳以上25歳未満)を採用した企業を対象として、1人当たり4000ユーロを支給するという措置である(注1)。対象となるのは、無期雇用契約(CDI)に限らず、3カ月以上の有期雇用契約(CDD)にも適用される。また、法定最低賃金(SMIC)の2倍の給与額を上限とするが、この上限であればほとんどすべての新規採用者が適用対象になるとされている(注2)

見習契約締結の企業に特別手当の支給

第三次補正予算では、見習制度の促進も盛り込まれている。見習契約で若年者を採用した企業に対して特別手当を支給するための10億ユーロが計上されている。18歳以上(成人)30歳未満の場合は1人当たり8000ユーロ、18歳未満(未成年)の場合は1人当たり5000ユーロを支給する。受給対象は、2020年7月1日から2021年2月28日までに締結された見習契約や熟練化契約である(注3)。従業員数250人未満の企業が対象であるが、250人以上の企業でも2020年12月31日時点での見習や熟練化契約の比率を5%以上にすることを確約、達成すれば対象となる。

この他の見習い訓練促進措置として、雇用契約なしで見習職業訓練センターの受け入れができる期間を、従来の最長3カ月から6カ月へ延長する。これにより、景気の悪化に伴い見習の採用を躊躇する雇用主が多い中、若年者が見習の実地研修を受ける企業を探すための期間が延長されることになる。この措置は、2020年8月1日から12月31日までに職業訓練センターへ入所した若年者が対象となる。

また、若年者20万人を将来性のある分野や職種での就労を目的とする職業訓練の促進も打ち出された。無資格者に対して、情報通信分野や環境負荷軽減の企業(ゼロエミッションや温室効果ガス削減等に積極的な企業)、ヘルスケア関連の職種での就労能力を習得するための職業訓練の機会を提供するという措置である。さらに、就職困難な若年者30万人を対象として、労働市場参入や定着の支援のための指導を伴った職業訓練や特殊雇用契約などを増加させる措置も実施される(注4)

経済対策に若年者職業訓練と就職支援策を盛り込む

9月3日には新たな経済対策が発表されており、この対策の中にも若年者雇用促進策が盛り込まれている。この経済対策は、「エコロジー(300億ユーロ)」「競争力(340億ユーロ)」「社会的・地域的結束(360憶ユーロ)」の3本柱で構成される1000億ユーロ規模の対策であるが、特に「社会的・地域的結束」関連では、将来性のある戦略的部門(デジタル関連産業等)における若年者の就職支援のための職業訓練(16億ユーロ)、26歳未満の若年者と障害者の就職支援(38億ユーロ)などのほか、経済的解雇の未然防止や部分的失業中の労働者の職業訓練のための支援(76億ユーロ)や医療部門への投資(60億ユーロ)などが盛り込まれている(注5)。2020年末から2022年末にかけて実施される予定で、2021年末までに16万人の雇用を創出し、2022年末までにGDPを新型コロナウイルス危機前の2019年末の水準に回復させることを目標としている。

70万人以上の新規採用

この対策を実施した結果、若年者採用を手控えると見込まれていた2020年8月と9月の時期に、70万人以上の若年者が採用された。また、見習訓練については10月中旬までに31万4000の契約が締結された。ボルヌ労働大臣は、2021年の終わりまで継続する予定のこのプログラムによって、今後も採用人数が増えるだろうという見解を示した(注6)

(ウェブサイト最終閲覧:2020年11月24日)

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