コロナ下における若年者訓練支援

カテゴリー:若年者雇用人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2021年4月

政府は、コロナ下における若年者の職業訓練ポストの確保と訓練実施企業の支援拡大を図るため、連邦事業の「職業訓練ポストの確保(Ausbildungsplätze sichern)」を拡充する。同事業の改正が2020年12月10日付連邦官報で公表され、翌11日に発効した。

中小企業における訓練支援を強化

ドイツでは、2020年夏からコロナ下でも以前と同じ人数、もしくは以前より多い人数の訓練生を受け入れた中小企業を対象に奨励金を支給している(職業訓練ボーナス、職業訓練ボーナス・プラス)。また、コロナが原因で支払不能に陥った中小企業から訓練生を新たに引き受けた中小企業に対しても、奨励金を支給している(訓練生引き受けボーナス)。今回の改正は、これらの支給要件を緩和したり、適用期間を延長したりすることで支援を拡大するのが目的である。

(1)「職業訓練ボーナス」、「職業訓練ボーナス・プラス」

「職業訓練ボーナス(Ausbildungsprämie)」は、要件を満たす中小企業(従業員249人以下)が、以前と同じ人数の訓練生を2020年も受け入れた場合、その企業に対して訓練生1人につき2000ユーロを支給する措置である。また、「職業訓練ボーナス・プラス(Ausbildungsprämie plus)」は、要件を満たす中小企業が、以前より多くの訓練生を2020年に受け入れた場合、訓練生1人につき、3000ユーロを支給する措置である。

今回の改正によって、訓練を実施する中小企業は、2020年4月から12月までの期間の連続する2カ月平均で前年同期と比較して50%以上、売上が減少した場合、または連続する5カ月平均で30%以上、売上が減少した場合に、奨励金を受給できる。従来は、2020年4月から5月までの2カ月平均で前年同期比60%以上の減少が要件となっていた。

また、支給要件である「コロナの影響」には、売上減のほか、2020年中に1カ月以上の操業短縮を実施したことも含まれるが、従来は2020年上半期に実施した操業短縮のみが考慮されていた。しかし、今回の改正で、2020年下半期に実施した操業短縮も考慮されるようになった。

さらに、従来は2020年8月1日までに開始された訓練が対象とされていたが、新たに2020年6月24日から2020年7月31日までに開始された職業訓練も支給対象に含められるようになった。

(2)訓練生引き受けボーナス

「訓練生引き受けボーナス(Übernahmeprämien)」は、支払不能に陥った中小企業から訓練生を引き受けた企業に支給される奨励金である。従来は、双方が249人以下の中小企業である場合に支給要件が限定されていたが、今回の改正により、支払不能のために訓練ポストを失った訓練生を引き受ける企業は、企業規模を問わず、支給を受けることが可能になった。また、従来、訓練生引き受けの適用期間は2020年12月31日までだったが、今回の改正で2021年6月30日まで延長された。

若年者の職業訓練の重要性

これら支援の念頭に置かれている職業訓練は、主に若者向けの「デュアルシステム(実務と座学を並行して二元的に行う訓練)」と呼ばれるもので、ドイツでは若者の多くが参加し、訓練費用の殆どを企業が自主的に負担している。企業と訓練生は「職業訓練契約」を締結し、期間中は訓練手当が支給され、社会保障の対象にもなる。主な訓練対象者は、基幹学校の卒業生等の義務教育修了者や大学入学資格 (アビトゥーア)取得者で、若者が労働市場に参入する主要な経路の一つとなっている。

改正に対する担当閣僚のコメント

フベルトゥス・ハイル連邦労働社会相は、今回の改正目的を、「コロナの影響を受けても、訓練生を受け入れようとする企業にインセンティブを追加的に提供することだ。より多くの企業が恩恵を得られるようにするため、2020年秋に初めて売上が落ち込んだ企業や、損害は比較的小さいが、長期間続いている企業も支援を受けられるようにした」と説明する。また、アーニヤ・カーリクチェク連邦教育研究相は、「企業が訓練生を受け入れるためには、さらなる支援が必要だ。今後は、支払不能に陥った企業から訓練生を引き受ける場合、企業規模に関わらず、ボーナスを受け取ることが可能となる。若者が職業訓練を修了できるようにすること、そして職業の未来に確かな展望を与えることが重要だ」とコメントしている。

参考資料

  • BMAS、BA、IHKサイトほか。

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