世界の労働所得の約半分が上位10%の就労者に集中
―ILO統計局データより

カテゴリ−:統計労働条件・就業環境雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2020年1月

ILO統計局は2019年7月、労働所得分布および労働分配率(注1)に関する統計データを公開した。以下、当該データに基づくILOの分析結果を紹介する。

人間中心のアジェンダ推進に向けた統計指標の開発

2019年1月に公表されたILO仕事の未来世界委員会による報告書『Work for a brighter future』では、人間と仕事を経済社会政策およびビジネスの中心に据えた、仕事の未来に対するアプローチ「人間中心のアジェンダ」が提唱されている。同書では、アジェンダの進捗状況をより正確に追うための新しい指標の考案が求められており、その勧告に応えるものとして、世界189カ国を対象とした「労働分配率・労働所得分布データ集合」が新たに開発・公表された。今後、ILOの持続可能な開発目標(SDGs)の進捗状況のモニタリングにも用いられる予定である。

所得階層ごとの労働所得の不平等が浮き彫りに

世界全体の就労者の労働所得を所得階層別に見てみると、世界の労働所得の約半分は上位10%の就労者に配分されている。上位20%に属する就労者の労働所得が全体のほぼ70%を占めている一方で、下位20%に属する就労者の労働所得は全体のわずか1%にも満たない(図1)。

図1:所得階層別 総労働所得に占める割合(2017)
画像:図1

注:所得階層は十分位で示す。

出典:ILOStat"Labour income distribution - ILO modelled estimates, July 2019"より作成。

この状況は過去13年間、ほとんど変化していない。また、2017年の世界全体の労働分配率は51.4%であり、2004年の53.7%から減少傾向にある(図2)。これは、南北アメリカやヨーロッパの労働分配率の低下が主な要因とみられる。

図2:労働分配率の推移
画像:図2

注:一部の値は補外値。アメリカ及び日本はすべて補定値。

出典:ILOStat"Labour income share as a percent of GDP - ILO modelled estimates, July 2019"より作成。

不平等の地域間格差

2017年における、所得階層の下位50%の労働所得に対する上位50%の労働所得の比率は、世界全体で約14倍であった。しかし、地域ごとにみると、アフリカが約28倍である一方でヨーロッパは約4倍と、労働所得の不平等の地域間格差が明白に表われている(図3)。労働所得の不平等は貧しい国ほど大きくなる傾向にあり、人々の生活をさらに悪化させる懸念がある。

図3:下位50%に対する上位50%の比率(1:X)2017
画像:図3

出典:ILOStat"Labour income distribution - ILO modelled estimates, July 2019"より作成。

参考

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