創立100周年記念宣言及び初のハラスメント禁止条約を採択
―第108回ILO年次総会

カテゴリ−:雇用・失業問題労働法・働くルール労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2020年1月

2019年6月、スイス・ジュネーブにて、国際労働機関(ILO)の創立100周年の節目にあたる年次総会が開催され、ILOの任務の重要性と妥当性を再確認する記念宣言や、仕事の世界における暴力とハラスメントを禁止する初の条約が採択された。

ILO創立100周年記念宣言

2017年にILOにおいて発足した「仕事の未来世界委員会」は、人と仕事を経済社会政策とビジネスの中心に据える「仕事の未来のための人間中心アプローチ」を提唱しており、ILO創設100周年記念宣言はその取組みを推し進めるための指針として作成された。当該宣言はILOだけでなく、政労使全てにおける今後の活動指針となるものである。

変化し続ける仕事の世界の中で、全ての労働者を十分に保護できるように法制度を強化すること、誰も置き去りにすることなく経済を持続的に成長させること、完全雇用を促進し生産性の向上を目指すことなどが呼びかけられ、人間を中心に据えた政策へ重点を置くよう各国に求めている。

ILO創設100周年記念宣言が呼びかける主な取組み

  • 労働者の基本的な権利の尊重
  • 機会及び待遇における男女平等の実現
  • 十分な最低賃金の確保
  • 労働時間の上限の規制
  • 労働安全衛生の確保
  • ディーセント・ワークの促進
  • 効果的な生涯学習と全ての人への良質な教育の実施
  • 全ての人を対象とする包括的で持続可能な社会的保護の提供
  • 仕事のデジタル化に伴うプライバシーや個人データ保護に係る対策

暴力・ハラスメント条約及び付帯勧告の採択

仕事の世界における暴力・ハラスメントに関する国際基準の設定に向けた動きは2015年のILO理事会で始まり、政労使による総会での2回の討議を経て合意に至った。当該基準が条約(第190号)及びその付帯勧告(第206号)という形で採択されたことで、加盟国は今後条約の批准の可否について国内で検討することが求められる。批准した国は、条約に沿って国内の法制度を整備していく義務を負う。

条約及び付帯勧告では、仕事の世界における暴力・ハラスメントの定義を具体的に明示する一方、適用対象者や発生場所についての基準は広く設定されている。また、暴力・ハラスメントの被害者と加害者の範囲、仕事や雇用における不平等や差別の被害を受けやすい弱い立場の者の例などについては条約・勧告内での明文化を避け、各国の裁量に委ねることとした。

仕事の世界における暴力・ハラスメントの除去に関する条約のポイント

  • 暴力・ハラスメントの定義
    「単発的または反復的に関わらず、身体的、心理的、性的または経済的損害を与えるまたは与えうる行動や慣行」と一体的に定義(各国内の法制度により個別に定義することも可)
  • 対象者の範囲
    一般的な被雇用者だけでなく、インターン、ボランティア、退職者、求職者なども含む
  • 発生場所の範囲
    職場だけでなく、休憩場所や更衣室、通勤・出張時、ICT利用による暴力・ハラスメントなどを含む

参考

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