男女間賃金格差の公表、ほぼ前年同か

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2019年7月

男女間賃金格差に関する情報公開を義務付ける制度に基づき、2019年4月までに全国で官民合わせて約1万組織がデータを公表した。昨年と同様、全体の約8割の組織で女性より男性の賃金が高く、全体の賃金格差は1割前後だが、建設業や金融業など一部の業種では2割を超えるとみられている。

企業等の8割で男女間に賃金格差

賃金格差の公表制度(gender pay gap reporting)は、男女間賃金格差の縮小に向けた施策として、2017年4月(公共部門は同年3月末)に導入された。従業員の規模が250人を超える雇用主に対して、毎年、男女間の時間当たり賃金と一時金(bonus)(注1)に関する格差(平均及び中央値による比較)のほか、一時金支給の対象となる男女別の従業員比率、また賃金水準の四分位別男女比率(注2)の公表を義務付けている。雇用主は、一般からアクセス可能なウェブサイトに結果を掲載するとともに、政府の設置する専用ウェブサイトへの登録を行なうこととされている。対象となる「従業員」の範囲には、雇用契約のある従業員のほか、雇用契約はないが従属的な働き方の者(注3)が含まれる。賃金格差は、賃金の単純な平均及び中央値の比較であり、職務等を考慮していないため、そのまま違法な賃金差別の存在を示すものではない。

対象となる組織は、民間組織については4月はじめ、公的機関については3月末が公表期限となっていた。政府の発表によれば、民間部門で8424組織、公共部門では1536組織、計9960組織がデータを公表した。政府は集計結果を示していないものの、民間シンクタンクCIPDの分析によれば、賃金の中央値に関する賃金格差の平均は9.6%で、昨年の9.2%から0.4ポイント悪化している。一方、平均値については、昨年の13.4%から13.1%と改善がみられた。また、女性より男性の賃金水準が高いとする組織の比率も、77.1%から77.8%へと上昇している。組織規模別には、従業員規模が2万人以上の組織で賃金の中央値に関する格差が7.6%と最も低いという(注4)。また業種別には、前年に続き建設業(24.4%)や金融業(23.9%)における賃金格差が大きい一方、ホスピタリティ業などでは0.6%(いずれも中央値に関するもの)と極めて低く、CIPDは後者について、男女ともに最低賃金水準の労働者の比率が高いことが要因となっているとみている。

政府によれば、全体の45%の組織(4439組織)が前回に比べて賃金格差が縮小したと報告する一方、41%(4045組織)はむしろ賃金格差の拡大を報告しているという。また、賃金格差の縮小に向けたアクションプランを作成したとする組織は、全体の50%にとどまっており、政府はこの比率の改善を目指すとしている。

参考資料

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