雇用労働部の2019年の優先政策課題と対応方針

雇用労働部は、国民誰もが希望の仕事で能力を存分に発揮できる包摂的労働市場を実現するため5つの政策目標を掲げている()。2019年の優先政策課題に対する具体的な対応方針は以下のとおり。

1.脆弱なグループの支援及び地域に根ざした雇用創出の強化

韓国政府は、脆弱なグループの雇用機会を拡大するため、雇用関連予算を2018年の19兆ウォンから2019年は23兆ウォンに19.3%増額する。脆弱なグループの労働力参加率を2017年の36.3%から2019年は42%に引き上げるため、脆弱なグループ向けにより多くの仕事を直接創出し、職業訓練や雇用サービスを拡充するため、失業者に対する財政支援を増額する。

雇用のミスマッチを解消するため、地域の実情に精通した地方政府が自ら雇用政策を立案し、中央政府がそれを支援する。地方政府は、地域に根ざした雇用創出プログラムの運営に強い自治権を有する一方、中央政府は、若者や新中年層のための、「若者求職促進手当」「経験を有する新中年層のための仕事」などの雇用創出プログラムの運営に関し、地方政府との調整・協力を強化する。

雇用労働部は、雇用優先の政策を促進するため、産業ごとの雇用影響評価を実施する。自動車産業を含む主要な製造業の事業再編に関する政策対応及び支援も強化する。

雇用労働部は、「若者求職促進手当」「若者のための相互援助プログラム(1カ月から3カ月の雇用後に採用される若者のための一括助成金)」によって若者の就職活動や雇用維持を支援し、「2+1若者雇用助成金(新たに3人の若者を雇用した使用者に対し1人分の賃金を助成)」を通じて、若者を雇用する中小企業に対する優遇措置を強化する。

雇用労働部は、働く女性の出産・子育て負担を軽減する対策を講じ、彼らが雇用保険適用の隙間に陥ることを防止する。臨時・日雇い労働者、特殊形態勤労従事者、自営業者のような雇用保険の出産休暇手当の受給資格がない人々も、2019年から90日間で最大150万ウォンの出産手当を受け取ることができる。出産した配偶者を持つ男性労働者は、現在の5日(有給3日、無給2日)よりも長い、有給で10日の父親休暇を取得できる。政府は、父親休暇を取得する中小企業の男性労働者のために5日の賃金に相当する財政支援を行う。

雇用労働部は、障害者のための職業訓練及び雇用サービスを強化する。発達障害者及び異なる種類の障害者に適応した訓練センターをより多く設立する。また、職探しを諦めた深刻な障害を持つ人々のために積極的な雇用サービスを提供する。

雇用労働部は、新中年層(50歳以上の人々)が退職後の新たな仕事を通じて3つの収穫(長期の仕事→退職後の新たな仕事→社会貢献のための仕事)を達成できるよう支援する。すべての職場で60歳以上の定年退職年齢 が定着するよう支援し、50歳以上の人々を採用する企業に対する助成金を拡充し、経験を有する新中年層の雇用を創出し、新中年層が社会貢献活動に従事することを支援する。

2.労働時間短縮及び新しい最低賃金の職場における定着

雇用労働部は、職場における週52時間労働制の定着を確実にするため、業界団体を通じて職場での自発的適応を奨励し、好事例の普及を支援する。

雇用労働部は、最低賃金遵守に関する指導を強化する。最低賃金設定制度をより合理的で公平で社会的に受け入れ可能な制度に改善するため、ILOが示す国際的な基準を考慮し、最低賃金設定方式を改善する。中小零細企業の費用負担を緩和するため、雇用安定基金及び社会保険料助成金を拡充する。

3.差別のない健全な職場の創出

雇用労働部は、職場におけるハラスメントの防止に関する制度を確立するため、行政的及び法的努力を推進する。被害者に対する支援を強化する一方、暴力やその他の社会的に受容しがたい慣行が発生した職場に対する特別労働監督を厳格に行う。

労働委員会は、性差別を除去するため、性差別に対する救済手続を導入し、雇用における性差別を禁止する法律の適用範囲をすべての職場に拡大する。

雇用労働部はまた、賃金労働者の生活を迅速かつ実際的に保護するための財政支援を最大化する。

雇用労働部は、非正規雇用労働者に対する差別に関する労働監督を持続的に拡充し、派遣労働者の不法使用を根絶するため職場指導を実施する。公共部門における正規雇用労働者の採用慣行を民間部門に徐々に普及させることを目指す。採用違反を排除するため、ブラインド採用の促進、現場の定期監視の実施、採用手続法の改正を推進する。

雇用労働部は、労働災害を防止するため、労働安全衛生法が適用される労働者の範囲を拡大し、危険労働の外注化を防止するため同法を改正する。特別監査を実施する特権を有する地域横断的な労働安全監督チームを3つから7つに増やす。さらに、労災補償保険の適用を、特殊形態勤労従事者や従業員のいない自営業者にも拡大する。

4.包括的で責任ある社会対話の促進

経済社会労働委員会(ESLC)が2018年11月22日設立され、産業別の分科委員会がスタートした。政府は、分科委員会の議論の成果を積極的に反映し地域レベルの社会対話のチャンネルを通じてウィンウィンの雇用モデルを普及させる。

雇用労働部は、ILO中核的労働基準条約の批准を推進する。結社の自由に関する条約は、2018年11月20日に発表された経済社会労働委員会の公益委員の提案に基づき、労使代表との議論を継続する。強制労働の禁止に関する条約は、雇用労働部が関連政府機関との調整及び関連法の改正が必要かどうかを精査した後、批准手続を推進する。

5.雇用サービスの革新及び雇用安全網の拡充・強化

雇用安定センターの雇用サービスを強化する。雇用労働部は、福祉サービス受給者が仕事を通じて自信を持てるよう、統合雇用福祉サービスを強化する。民間雇用サービスの質を改善するため、民間雇用機関の標準雇用サービス認定制度を創設する。

雇用労働部は、求職者が彼らに最も適した職を見つけられるよう、AIによる職業マッチング制度を構築するなど、オンライン雇用サービスをより精巧にする。同時に、オンライン雇用サービスが求職者の必要に合致し、それによって利用者の利便性を向上させるようカスタマイズする。

雇用労働部は、雇用保険の適用を芸術家や特殊形態勤労従事者に拡大する雇用保険法の改正を推進する。また低賃金労働者のための失業保険の導入に取組む。失業手当の受給期間を30日間延長し、金額も平均賃金の50%から60%を引き上げ、低所得者のための求職奨励手当を導入する。

6. 仕事の世界の変化に伴う職業訓練の革新

雇用労働部は、労働者が第4次産業革命のような仕事の世界で起きている変化に適用できるよう、新技術に関する訓練を大幅に拡充する。スマート工場の増加に伴い、新たな業務に転換する労働者を支援する。地方政府や産業界と共同で需要調査を実施し、業務を転換する労働者を支援するため、職業訓練に特化したキャンパスを運営するポリテックカレッジを指定する。

雇用労働部は、労働者の知識レベルを検査する試験を通じてよりも、教育や労働者が受講した訓練の記録に基づき職業能力を評価する国家技能資格(NTQ)のコースを拡充する。雇用労働部は、NTQに基づくコースを2018年の111から2019年には143に増やすよう計画している。

表:雇用労働部の政策推進方針
国民誰もが希望の仕事で能力を存分に発揮できる国
目標1:労働者を尊重する社会の実現と差別のない職場を創出して、労働者の権益を保護する。
  • 意思疎通と協力に基づき、労働尊重社会実現の基盤づくり
  • 差別のない良い職場を創出して、労働者の権益を保護
  • 脆弱労働者の労働条件を保護して、基礎雇用秩序遵守の雰囲気を拡散
  • 公共部門の労使関係を改善して、労使共生と協力の基礎を用意
目標2:良質の雇用創出と雇用のセーフティネットの強化のための基盤を用意する。
  • 国民の目線に合わせた雇用創出を支援
  • 需要者中心の雇用サービスを強化
  • 働いている人対象に雇用のセーフティネットを強化
  • 社会的企業の活性化を介して雇用機会を拡大
目標3:性別・年齢別のカスタマイズ雇用支援を強化する。
  • 青年のための良い仕事を拡大
  • 女性の雇用機会を拡大
  • 新中年・障害者の雇用機会を拡大
目標4:将来の労働市場に備える職業能力開発体制を構築する。
  • 実力中心社会の実現のための重要な制度を定着
  • 第4次産業革命に対応した職業能力開発体系を構築
  • 労働者の生涯職業能力開発を強化
目標5:安全で健康的な職場を創出する。
  • 重大災害を予防し、安全衛生のギャップを解消
  • 職業病を予防し、労働者の健康を増進
  • 労災労働者の迅速な補償と円滑な就労復帰を促進

出所:雇用労働部ウェブサイト

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