最低賃金の引き上げ等、いくつかの制度変更について
2017年1月1日から、法定最低賃金、求職者基礎保障の標準給付額、児童手当の額などが引き上げられたほか、外国人に対する社会給付の新規定、高齢者の継続就労を促すフレキシ年金も導入された。以下に概要を紹介する。
最低賃金、引き上げ
法定最低賃金が、時給8.5ユーロから8.84ユーロに引き上げられた。これは、2016年6月28日の最低賃金委員会(労使代表等で構成)の決議に従ったもので、次回の改定は2019年1月1日を予定している。
求職者基礎保障給付、引き上げ
求職者基礎保障の新しい標準給付額が適用された。失業手当Ⅱ(ArbeitslosengeldⅡ)、および社会手当(Sozialgeld)に関する単身受給者の標準給付月額は、404から409ユーロに引き上げられた(詳細は図表1の通り)。
「求職者基礎保障」とは、主に長期失業者とそのパートナー等の生活保障を目的とした制度である。同制度では、求職者本人に「失業手当Ⅱ」を、同一世帯の就労能力のない家族に「社会手当」を給付する。なお、病気や事故等で稼得能力のない困窮者の生活保障を目的とした「社会扶助(Sozialhilfe)」の給付水準も、求職者基礎保障の標準給付額と同額で設定されており、1月1日から同様に引き上げられた。
受給資格者 | 2016年 | 2017年 |
---|---|---|
単身者(成人1人あたりの標準月額)、単身養育者(ひとり親)の受給資格者 | 404 | 409 |
家計を一つにして同居するカップル | 364 | 368 |
独自の家計を営まない、またパートナーと家計を一つにしない成人の受給資格者 | 324 | 327 |
14歳から18歳未満の若者 | 306 | 311 |
6歳から14歳未満の子供 | 270 | 291 |
0歳から 6歳満の子供 | 237 | 237 |
- 出所:BMAS (2016)
児童手当等引き上げ
子育て世帯の経済的負担軽減を図るため、児童手当、児童加算、基礎控除(児童控除)の額が各々引き上げられた。これらは、2018年にも再度引き上げが予定されている(図表2)。同制度は、18歳未満(教育期間中の子は25歳未満、失業中の子は21歳未満、25歳到達前に障がいを負い、就労困難になった子は無期限)の子を扶養する者が対象となっている。
受給資格者 | 2016年 | 2017年 | 2018年 |
---|---|---|---|
児童手当(Kindergeld) 1~2人目(月額) | 190 | 192 | 194 |
児童手当(Kindergeld) 3人目(月額) | 196 | 198 | 200 |
児童手当(Kindergeld) 4人目以降(月額) | 221 | 223 | 225 |
児童控除(Kinderfreibetrag)(年額) | 7248 | 7356 | 7428 |
児童加算(Kinderzuschlag)上限額(児童1人につき) | 160 | 170 | 170 |
- 出所: Bundesregierung (2016)
社会法典第2編、および第12編における外国人に対する新規定
社会法典第2編に基づく求職者のための基礎保障と、社会法典第12 編に基づく社会扶助における外国人の請求に関する新規定が施行された。これにより、ドイツで働かず(自立せず)、社会法典第2編の給付請求権を有していない者は、滞在後5年間は社会法典第2編または12編による継続的な給付受給権はないとされる。
なお、該当者は、ドイツ出国までの橋渡し給付金を最大で1カ月得ることができる。
就労可能な給付受給に該当する外国人は、社会法典第2編に基づく生活維持の保証のための給付金を得るが、同時に『支援と要請』の基本原則(注1)の適用も受ける。
フレキシ年金の導入
フレキシ年金(Flexi Rente)が新たに導入された。これにより、法定年金受給年齢を超えて働く就業継続者(主に63~67才)のパートタイム労働と部分年金の関係が改善された。具体的には、これまでは月450(年5400)ユーロの収入を得ると、年金受給額の3分の2がカットされていたが、新制度では、年6300ユーロまで年金を満額受け取ることができる。
注
- 要扶助者は、支援を求める前に、自らの資産や能力によって生計費を確保するためのあらゆる可能性を活用しなければならないとする考え方。例えば失業手当Ⅱの受給者は、正当な理由なしに紹介された仕事を断った場合には、失業給付Ⅱの減額などの制裁措置が課される。(本文へ)
参考資料
- Bundesministerium für Arbeit und Soziales(Pressemitteilungen, 19. Dezember 2016), Bundesregierung(Artikel 16. Dezember 2016) ほか
参考レート
- 1ユーロ(EUR)=120.59円(2017年3月7日現在 みずほ銀行ウェブサイト)
関連情報
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:掲載年月からさがす > 2017年 > 3月
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:国別にさがす > ドイツの記事一覧
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:カテゴリー別にさがす > 雇用・失業問題、高齢者雇用、外国人労働者、労働法・働くルール
- 海外労働情報 > 国別基礎情報 > ドイツ
- 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書:国別にさがす > ドイツ
- 海外労働情報 > 海外リンク:国別にさがす > ドイツ