非典型就労者の数、全就労者数増加の中で減少

国別労働トピック：2013年10月

2012年の非典型就労者数が、前年の約804万人（全就労者に占める非典型就労者の割合：22.4％）から約789万人（同21.8％）へと、約14万6000人減少していたが連邦統計局の調査でわかった。全就労者数が増加する中での非典型就労者数の減少は、東西ドイツ統一後初である。もっとも、その要因については、専門家らの間で見解が分かれている。

非典型就労、4つすべての形態で減少へ転じる

連邦統計局が2013年8月28日に発表した報道資料によると、2012年における「非典型就労者」の数は、有期就労者が約274万人（前年比約17万人減）、週20時間以下の短時間就労者が約502万人（前年比約2万7000人減）、僅少就労者が約255万人（前年比約12万4000人減）、派遣就労者が約75万人（前年比約2万7000人減）であった。

一方、2012年の全就労者数は前年の約3177万人から約3212万人へと増加し、東西ドイツ統一後、最高を記録した。その背景には、増大する女性や高齢者の就労参加があると見られている。

なお、同調査において、単なる週20時間以上の短時間就労者は、「非典型就労者」ではなく、他方の「標準的労働関係にある就労者」に含まれている。

要因は、好景気？　専門労働力不足？　法規制の再強化？

全就労者数が増加する中で非典型就労者数のみが減少した要因については、まだはっきりとしていない。だが、ドイツ労働市場・職業研究所(IAB)のエンゾ・ヴェーバー氏は、その要因として、2010年ころから続くいわゆる「ユーロ危機」の中でもなお好調なドイツ国内経済を背景とした失業率の低下と、看護・介護職や技術職をはじめとする専門労働力の不足の２点を挙げている。後者についてヴェーバー氏は、「10年前と比べ、企業側は専門労働者の獲得に苦慮しており、労働者らは、例えば有期であっても更新時に無期転換されるなど、典型的な雇用を獲得しやすくなっているようである」とさらに説明している。

その他、特に派遣労働部門に関していえば、2011年改正労働者派遣法によって規制が再強化されたり（特定部門最低賃金の導入、いわゆる「回転ドア」条項の禁止など）、一部の派遣先産業部門の労働協約において均等処遇実現に向けた派遣特別手当が合意されたり、さらには連邦労働裁判所において派遣先企業の事業所協議会に長期継続的派遣労働者の受け入れ拒否権が認められたりしており、これらをその要因の１つとして指摘する者もいる。

あるいはまた、企業が―多くの場合、比較的低賃金で従業員を雇用する―下請企業等に仕事を外注する請負契約の増加が、非典型就労者数の減少に何らかの影響を及ぼした可能性も指摘されている。

減少傾向が続くか否かは、なお不透明

1990年の東西ドイツ統一以降、非典型就労者の割合は、ほぼ一貫して増大してきていた（1991年の全就労者に占める非典型就労者の割合は12.8％、最高は2007年の22.6％）。しかし、2008年秋のリーマン・ショックごろから、その増加傾向はやや停滞（あるいは後退）しており、連邦統計局は、少なくとも数年は、このような傾向に大きな変動はないだろうと説明している。

しかしながら、前述のヴェーバー氏は、このような非典型就労者の減少傾向が今後も続くかどうかはまだ分からない、と指摘する。その理由について、ヴェーバー氏は、このような就労形態で働くことが比較的多い女性や高齢者の就労者数がしだいに増加している点を挙げている。連邦統計庁の調査によると、2012年の女性就業者数は約1819万人（1991年：約1544万人）で、15歳以上65歳未満女性全体の約68％（同：約57％）、同じく55歳以上64歳未満の就業者数は約656万人（同：約418万人）同年齢層全体の約61.3％（同：約37.8％）であった。