ウォール街占拠運動、新たな局面へ
―ニューヨーク市長が公園から排除宣言

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2011年10月

9月17日から始まった「ウォール街占拠運動」は、ブルームバーグ市長が10月14日午前7時(日本時間同日午後7時)をもって運動の拠点となっている公園から人々を排除すると宣言したことで、新たな局面を迎えている。
(ウォール街占拠運動については、国別労働トピック 「『ウォール街占拠運動』が全米に拡大―労働組合、コミュニティ運動も合流」を参照)

10月15日が世界的な運動へ

労働問題の専門家であるニューヨーク市立大学ステファニー・ルース准教授によれば、10月15日はグローバルな活動を進める運動UNITED FOR #GLOBALCHANGEと連携した運動として、ウォール街からタイムズ・スクエアまでのデモ行進がオキュパイ・アクション・パーティーリンク先を新しいウィンドウでひらくとして予定されているという。

このデモ行進のスローガンは「税制改革による格差是正」を核とし、市民、学生、労働組合員はじめ、反戦、環境、宗教、コミニュティ運動の活動家ら多彩なグループが参加し、これまでで最大規模となることが予想される。(これら労働を背景とした新しい組織のネットワークについては、労働政策研究・研修機構が行なった調査報告「ディスカッションペーパー11-05労働組織のソーシャルネットワーク化とメゾ調整の再構築―アメリカの新しい労使関係、職業訓練、権利擁護―」を参照。)

「ウォール街占拠運動」は国境を超えて拡大中であり、全世界およそ1200箇所以上での運動に拡がる可能性がある。

日本でも、格差是正を訴えるグループリンク先を新しいウィンドウでひらく が六本木で、脱原発を中心に訴えるグループが日比谷公園で運動を予定している。

表現の自由が争点に

「ウォール街占拠運動」は、運動当初、企業の敷地に近づいたことを理由として排除されたほか、マンハッタン島をつなぐブルックリン橋の占拠が交通妨害となることを理由として逮捕者が出た以外は、平和的な運動を掲げてきた。

これに対し、ニューヨーク市長、ブルームバーグ氏とニューヨーク市警コミッショナーは連名で「10月14日午前7時(日本時間同日午後7時)」をもって「ウォール街占拠運動」の拠点となっているズコッティ公園を「清掃する」とし、「清掃」が終了するまで運動に参加する人々が立ち入らないこと、および、寝袋や生活するための器具の持ち込みを禁止する通知を行なった。

「ウォール街占拠運動」側は、もともと環境運動家が参加していたこともあり、花壇や公園施設に損害がでない措置をとったり、自主的な清掃活動を行なったりしてきた。今回の通知により、あらためて自ら公園清掃を始めている。また、ニューヨーク市に対して抗議の電話をかけるとともに、公園に集まって強制排除に抵抗する(PDF:388.3 KB)リンク先を新しいウィンドウでひらくことを支持者に呼びかけている。

ここでの争点は、公園の「清掃」ではない。運動が持つ「表現の自由」が侵害されるかどうかである。

抗議対象だったニューヨーク市長

そもそも、ニューヨーク市ブルームバーグ市長は「ウォール街占拠運動」の発端の一つとなった、コミュニティ運動と労働組合の連合体「5月12日(On May 12, Make Big Banks and Millionaires Payリンク先を新しいウィンドウでひらく)」の抗議対象だった。

その理由は、ニューヨーク市が金融関連企業に対する課税を減免する一方で、老人福祉、医療、教育、移民に対する語学教育、若者支援センターなどの公共サービスを削減してきたからである。

同様の対立はウィスコンシン州など全米各地でもみられる。つまり、ローカルな抗議活動が「ウォール街占拠運動」の背景にあるのである。

「5月12日」は「ウォール街占拠運動」の4カ月前、その組織名となった今年5月12日に、ニューヨーク市の金融関連企業と富裕層に相応の負担をさせることによる、不平等と格差の是正、介護、教育、医療といった公共サービスの復活や維持を掲げたデモ行進を行なっている。その抗議対象にはニューヨーク市長も加わっていた。

これらの背景もあり、「ウォール街占拠運動」にあたって、ブルームバーグ市長は「法を守っている限りは運動の継続に差し支えない」という立場をとっていた。

今回の公園の「清掃」を名目とした運動の排除により、再び緊張が高まることが予想される。

(国際研究部 山崎 憲)

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