ディスカッションペーパー 11-05
労働組織のソーシャルネットワーク化とメゾ調整の再構築
─アメリカの新しい労使関係、職業訓練、権利擁護─
概要
研究の目的と方法
本研究は、アメリカで1990年代以降に拡大している労働者の権利擁護や労働条件向上、職業訓練を担う「労働組織」とそのネットワークの構造、成り立ち、および方向性を探ることを目的としている。
その姿は断片的にしか日本に紹介されていないため、それぞれの組織の具体的な姿と組織が織りなすネットワークの実像を日本に紹介するとともに、社会政策的な含意を考察することを目指している。本研究は平成22年度、23年度の二カ年計画で行っており、先行研究の文献調査と平成22年度の22組織39人を対象とする面接インタビューに基づいている。
主な事実発見
非正規、低賃金といった労働者や失業者、学生などを対象とした「労働組織」は、直接の組織化対象とする労働組合、労働組合員以外にも対象を拡大して相互扶助、権利擁護などを行う「次世代型労働組合」などのほか、ワーカーセンター、職業訓練NPO、労働者所有企業、労働者権利擁護団体などの新しい組織がある。ワーカーセンターは、移民労働者、中小企業、教会などを基盤とする労働者が会員である。これらの組織は、リーダーの人材育成を積極的に行うほか、教会やNPOなどが組織間の中間的な役割を演じることを通じて密接なネットワークを構築していることがわかった。
図表 新しい労働組織のネットワーク
政策的含意
労働組合組織率の低下や労働組合の経営協力の進展などを通じ、労働組合は労働組合員以外に対する医療保険、年金などの社会保障制度、職業訓練を通じた労働条件の向上といった社会政策的役割が大きく低下している。したがって、「新しい労働組織のネットワーク」は、非正規、低賃金労働者の社会保障や教育訓練による労働条件の向上、権利擁護、労働者の代表性など、従来は企業と労働組合が担ってきた機能を代替するものとなる可能性だけでなく、経営側との新しいパートナーシップの構築を背景とした教育訓練やキャリアラダーの構築、就業支援などの可能性を期待できるものである。
本文
研究期間
平成22年度~23年度
執筆担当者
- 山崎 憲
- 労働政策研究・研修機構 主任調査員補佐
入手方法等
入手方法
非売品です
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