長期化する景気低迷による不法移民労働者、勤続年数、医療保険加入率への影響

カテゴリー:雇用・失業問題非正規雇用統計

アメリカの記事一覧

  • 国別労働トピック:2010年10月

9月3日、米国労働統計局は8月の雇用統計を公表した。失業率は前月比0.1ポイント増の9.6%、非農業部門の就業者数は5万4000人減となった。

民間部門が6万7000人増となったものの、公共部門が11万4000人減となり、全体では減少に転じた。公共部門で就業者数が減少した原因は、国勢調査の終了にある。このため、国勢調査実施に伴う短期雇用者は6月が22万5000人減、7月が14万3000人減と毎月大きく減少してきている。

民間で雇用が増加した主な業種は、ヘルスケアの2万8200人、建設業1万9000人、人材派遣業1万6800人などである。製造業は2万7000人減となったが、自動車が活発で夏季休暇に伴う工場閉鎖期間が短縮されたことで、通常よりも減少幅は少なめとなった。

失業者数の内訳を学歴別にみると、高卒以下が10.3%であるのに対して、大卒以上が4.6%となっており、高卒以下により厳しい状況となっている。

6カ月を超える長期失業者の割合は前月比0.3ポイント減だったが、前年同月比で8ポイント増の42%と失業が長期化する傾向となっている。

9月21日には、米国労働統計局が8月の州別失業率を公表した。これによると、14州で非農業部門の就業者数が増加した一方で、ワシントンD.Cを含む37地域で減少した。前月比では、27州の失業率が上昇し、13州が低下した。最も高い失業率はネバダ州の14.4%で、ミシガン州が13.1%と続いている。地域別では西部が10.8%、中西部が9.4%、南部が9.2%だった。

景気低迷の長期化は失業率の高止まりだけでなく、さまざまな影響をもたらしている。その一つに勤続年数が伸びていることがあげられる。

9月14日に米国労働統計局が公表した調査結果によれば、16歳以上の雇用者の場合、2008年1月には4.1年だった勤続年数が、10年1月では4.4年となり、0.3年ほど伸びたことがわかった。調査を開始した1996年は3.8年だった。内訳をみると、10年以上の長期勤続者の割合は08年では31.5%だったが、10年には33.1%に伸びている。勤続年数と学歴の関係をみると、高卒未満が4.4年、大卒が5年、大学中退と博士学位取得者が5.2年、高卒が5.4年、修士学位取得者が5.7年となっており、高卒未満がもっとも短くなった。

不法移民労働者数にも影響が出ている。ワシントンにある民間シンクタンク、ピュー・ヒスパニック・センターが9月1日に発表した調査結果によれば、07年に1200万人と過去最高を記録してから減少を続け、09年には1110万人となった。不法移民労働者数は07年から60万人減少して、780万人。しかし、1990年代の不法移民者数が350万人程度だったことと比較すると、3倍程度と依然として高い。ピュー・ヒスパニック・センターの試算では、不法移民の失業率は米国生まれの労働者と比べて1%ほど高くなっている。04年から07年では、反対に不法移民の方が低い失業率を示していた。

医療保険加入率も景気低迷の影響で低下傾向にある。米国国勢調査局は9月16日に、医療保険に加入していない人の数が09年に5070万人となり、前年の4630万人から大きく増えたと発表した。

個人加盟の民間医療保険加入者の割合は08年の66.7%から63.9%へ、雇用主負担による医療保険加入者の割合は08年の58.5%から55.8%へといずれも09年に低下した。世帯年収別では、7万5000ドル以上の世帯のうち医療保険未加入の割合が9.1%にとどまっているのに対して、2万5000ドル未満では27%へと上昇している。

医療保険加入率は、正規雇用か非正規雇用かという雇用形態に左右される。これは、アメリカの医療保険が雇用主負担を基盤としているためだ。正規労働者の医療保険加入率の低下が08年から09年で0.6ポイントに留まったのに対し、非正規労働者の未加入率は2.7%ポイント上昇した。景気後退の中で正規雇用労働者数が大幅に減少し、非正規へと移行したことに原因の一端があるとされる。米国労働統計局によれば、1990年から2008年の間に人材派遣業に雇用される労働者数が110万人から230万人へと倍増するなど、非正規労働者数が増加傾向にある。

このような状況に対し、米国商業会議所はレイバーデーに合わせた年次報告を行った。これによれば、向こう5年間にわたって、月あたり24万人の雇用創出が必要であり、そのためには雇用創出をもたらす高所得者向け減税の延長が不可欠であるが、現在のオバマ政権が高所得者への税負担を重くしているとして批判した。

一方、オバマ大統領は同じくレイバーデーに合わせた演説を9月6日にミルウォーキーで行い、国内の輸送インフラの新設と改修に向こう6年間で500億ドルの予算を投入して、雇用を創出するとしている。

参考

  1. BLS Says Temporary Help Jobs Expanded Over Past Two Decades, Remain Volatile, Daily Labor Report, Sep.21, 2010
  2. Chamber Says 240000 Jobs a Month Needed For Five Years, Criticizes Obama initiatives, Daily Labor Report, Sep.2, 2010
  3. Jobless Rates Fell in 13 States in August, As Payrolls Increased in 14 States, BLS Says, Daily Labor Report, Sep.2, 2010
  4. Obama Unveils Infrastructure/ Jobs Plan During Labor Day Speech in Milwaukee, Daily Labor Report, Sep.7, 2010
  5. Pew Center Says Illegal Immigrant Total Fell By 1 Million Over Two Years to 2005 Lvel, Daily Labor Report, Sep.1, 2010
  6. Uninsured rose to 50.7 Million in 2009, Highest Since Data Collection Began in 1987, Daily Labor Report, Sep16, 2010
  7. Income, Poverty, and Health Insurance Coverage in the United States, The Census bureauリンク先を新しいウィンドウでひらく
  8. Pew Hispanic CenterリポートU.S., Unauthorized Immigration Flows
  9. Are Down Sharply Since, Mid-Decade (PDF:820KM)リンク先を新しいウィンドウでひらく(2010年9月1日閲覧)
  10. The expanding role of temporary help services from 1990 to 2008 (PDF:1.4MB)リンク先を新しいウィンドウでひらく,, The Monthly Labor Review August 2010, Department of Labor, Bureau of Labor Statistics
  11. 米国労働統計局WEBサイトリンク先を新しいウィンドウでひらく(2010年9月3日閲覧)

参考レート

  • 1米ドル(USD)=83.55円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2010年10月05日現在)

2010年10月 アメリカの記事一覧

関連情報

Adobe Readerのダウンロード新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。Adobe Readerをダウンロードしても、PDFファイルが正常に表示されない場合は「閲覧に必要なソフトウェアについて」をご覧ください。