各州で進む失業保険財源不足への対応
―課税対象賃金や保険税率の引き上げを実施

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2010年1月

米国の州別失業率は、直近の3カ月を見る限り横ばいの傾向にあり急激な上昇は見られないものの、依然として高い水準にある。失業期間の長期化が問題となっており、給付期間を満了してしまう労働者への対応もとられている。このため連邦政府は州政府の失業保険制度に対して財政的な支援を強化している(当海外労働情報2009年7月2009年12月参照)。National Association of State Workforce Agencies (NASWA)(注1)が発表した『失業保険基金支払能力調査』(注2)によれば、失業保険制度の歳入にあたる課税方法を見直す州が目立っている。すなわち課税の対象となる従業員一人当たりの賃金額や課税率を引き上げることによって税収を増加させることを目的とする対応が相次いでいる。2010年に8つの州が課税対象賃金を引き上げる改革を計画しており、20の州において保険税率の変更を予定、また6つの州で2つの改革を同時に行うことを計画している(表1参照)。州別の改革概要については表2参照。参考のために各州の失業率についてもつけ加えた。

米国の失業保険の徴収の仕方は、ほとんどの州において、使用者に対して(3つの州に関しては労使双方に対して)歳入庁が税として課税するかたちをとっている。一定の雇用期間に対して一定以上の賃金が支払われていれば失業保険に加入する義務がある。加入要件を満たした場合、使用者は従業員一人一人に支払った賃金の一定額に対して税を支払う義務が生じる。税率は過去の解雇実績などに応じて使用者ごとに決定される。税の対象となる賃金額や税率、加入要件は州によってさまざまである。

ニューハンプシャー州(注3)では、2010年1月1日から課税の対象となる賃金額を8000ドル(年額)から1万ドルに引き上げることを決定した。また、2011年1月1日から1万2000ドルへ、2012年1月1日から1万4000へ引き上げることが決まっている。

ハワイ州(注4)では課税対象賃金が1万3000ドル(年額)から3万8800ドルに引き上げられることになっている。また、ビジネスを開始したことにより新規に失業保険に加入することになった経営者を対象とする税率を1.70%から4.00%へと引き上げる予定である(表3参照)。この改革によって税収が6倍になると見込んでいる。その他の州の税収の増加見込みに関しては、ネブラスカ州で1.5倍(税率の引き上げによる効果)、サウスダコタ州で1.4倍(課税対象額を9500ドルから1万ドルへ引き上げ)などが高く見込んでいる一方で、オハイオ州では税率の引き上げを予定しているものの、税収アップは4%程度と低い試算であり、ミシガン州では課税対象額・税率ともに引き上げる予定であるが、税収アップはゼロと見込んでいる。

その他の州の改革内容は、アーカンソー州で課税対象賃金額を1万ドルから1万2000ドルへ、フロリダ州で7000ドルから8500ドルへなど、課税対象賃金の引き上げの平均は約3800ドルとなっている。給付額については、インディアナ州、ニューハンプシャー州、ウェストバージニア州の3つの州で何らかの形での引き下げを検討している。

資料出所:National Association of State Workforce Agencies (NASWA)資料

  • 出所:
    (1)労働省ホームページ, EMPLOYMENT AND TRAINING ADMINISTRATION, Office of Workforce Security(SIGNIFICANT PROVISIONS OF STATE UNEMPLOYMENT INSURANCE LAWS JANUARY 2009)
  • (2)National Association of State Workforce Agencies (NASWA), “UI Trust Fund Solvency Survey, Summary Document of State Responses,” December, 2009
  • (3)ハワイ州労働省ホームページ、(4)労働統計局発表"REGIONAL AND STATE EMPLOYMENT AND UNEMPLOYMENT – NOVEMBER 2009"より作成。

資料出所:Department of Labor and Industrial Relations新しいウィンドウハワイ州労働省ホームページ

参考資料

参考レート

  • 1米ドル(USD)=92.93円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2010年1月4日現在)

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