失業率、3か月連続で8.3%にとどまる

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2009年10月

8月の失業者数は前月比0.1万人減、予想外の減少

ドイツ連邦雇用エージェンシー(Bundesagentur für Arbeit:BA)が9月1日に発表した8月の失業率は8.3%(注1)で、市場予想(注2)の8.4%に反して横ばいにとどまった。なお8月の失業者数は348.1万人と、同じく予想(前月比3.0万人増)に反して7月の348.2万人から0.1万人減少した(前年同月比、27.4万人増)。

図表1 ドイツの失業率の推移 (季節調整値)(%)

図表1

注:09年4月と5月を…で結んであるのは、失業統計手法に変更があり直接比較できないことを示す

出所:連邦雇用エージェンシー

図表2 ドイツの失業者数の推移 (季節調整値)(単位:千人、%)
  08年8月 9月 10月 11月 12月
失業者数 3207 3192 3183 3185 3225
失業者数の対前月比 -26 -15 -9 2 40
失業率 7.7 7.6 7.6 7.6 7.7
  09年1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月
失業者数 3286 3330 3396 3456 3460 3487 3482 3481
失業者数の対前月比 61 44 66 60 4 27 -5 -1
失業率 7.8 8.0 8.1 8.3 8.2 8.3 8.3 8.3

出所:連邦雇用エージェンシー

失業統計手法の変更も影響か

景気が底をついたとはいえ、本格的な経済の回復が見られない中で、ドイツの失業率が市場予想を下回っている点について、専門家は、操業短縮手当の拡充政策(注3)が功を奏していることに加え、今年5月から失業率統計手法が変更された影響を指摘している。

失業統計手法の具体的な変更点は、2008年12月の法改正(Gesetz zur Neuausrichtung der arbeitsmarktpolitischen Instrumente :ArbMINAG)を受け、政府の職業訓練プログラムの一部として民間の職業訓練機関(PSI)でサービスを受けている者が今年5月1日から失業者と見なされなくなったことである。その数はおよそ2~3万人と推定されている。

連邦雇用エージェンシーは、変更の理由について「EUの国際的失業統計に近づけるため」と説明している。2009年1月にEUが公表した2008年12月のドイツの失業率は7.1%であったが、連邦雇用エージェンシーの従来統計では7.7%であった。連邦雇用エージェンシーはさらに「上記のような訓練プログラムに義務として出席している者は、厳密な意味で『失業者』とは言えない」と述べている。

今回の失業統計手法の変更について、労働市場・職業研究所(IAB)のレギーナ・コンレー=ザイドゥル(Regina Konle-Seidl)研究員は、「従来から、ドイツの失業統計は、連邦雇用エージェンシーに自ら申し出て登録を行った者のみが失業者とされている(注4)点で厳密とは言えず、登録をしていない『沈黙の失業者』が潜在的に存在する問題を含んでいる」ことを指摘した上で、「国際統計に沿うことは重要であるが、実際の失業者数と統計上の失業者数との乖離が広がりすぎると、正しい労働市場政策の遂行が困難になる」との懸念を示している。

また、ドイツの一部のメディアでは、「今回の統計手法の変更には、9月27日に予定されている総選挙を控え、失業率の統計値を低く抑えようとする政府の意図が感じられる」といった声もあがっている。

参考資料

  • 連邦雇用エージェンシー発表資料、委託調査員月次報告、Spiegel(09年5月28日)、IAB Kurzbericht(09年4月)

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