大統領選挙:ロワイヤル氏とサルコジ内相、労働契約改革をめぐり対立

カテゴリー:雇用・失業問題労働条件・就業環境

フランスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2007年2月

2007年4月の大統領選挙の候補者である野党・社会党のロワイヤル氏(元家庭・児童担当相)と与党・UMP(国民運動連合)のサルコジ内相は、CNE(新しいタイプの期間の定めのない雇用契約)の今後をめぐり対立。試用期間(2年間)の解雇を容易にする点を問題視してCNEの廃止を提言するロワイヤル氏に対し、サルコジ内相は「CNEは社会にとっての進歩である」とし継続を主張している。

2005年8月に導入されたCNEは、従業員20人以下の企業が対象。基本的にはCDI(期間の定めのない雇用契約)に等しいが、大きな違いは、契約締結後の2年間に限り、企業側はいつでも「契約破棄=解雇」することが可能とされていること。解雇の理由を説明する必要もない。ただし、契約開始から、6カ月未満なら2週間前、6カ月以上であれば1カ月前に、解雇を予告する義務がある。契約開始後2年間に解雇された場合、解雇された従業員には、失業保険給付資格が解雇された月から生じ、再就職のための訓練を受けることができる。

2年の期間が終了すると同時に、CNEはCDIに切り替えられ、CDIと共通のルールが適用されることになる。

企業側は、有能な人材をフレキシブルに活用できるとしてCNEを歓迎。経営者団体であるMedef(フランス企業運動)のパリゾ会長は、「CNEは成功しており、現在の様々な『しがらみ』を解くことの重要性を伝えるもの」として評価している。一方、労組側は「雇用の不安定さを招く」として強く反発。最近では、CNEによる採用者が「不当に解雇された」と労働裁判所に訴えるケースも増えており、労組からの「CNE撤廃」の声は一段と高まりを見せている(注1)。

こうしたなか、ロワイヤル氏は公約のひとつとしてCNEの廃止を掲げ、「CDIの発展」を通じて、労働契約の改革を実施する意向を示した。その背景には、「CDIこそが労働の安定化をはかる解決策」とする同氏の考えが存在する。同氏は、「CDIをフランスにおける労働契約の標準に戻すことが重要である」と主張。このため、社会保険料負担の軽減、労働契約の種類に応じた企業への援助の調整、失業者が新しい職を見つけるまでの「つなぎ契約」の創設などにより、CDIを発展させるとしている。

これに対しサルコジ内相は、中小企業の経営者たちを前にCNEの長所を挙げ、「CNEは社会の進歩であり、廃止することは社会の後退を意味する」と主張。さらに、自らの労働契約改革案として、CNEをモデルとした「単一労働契約」の導入を提案した。同氏は、単一労働契約で解雇の手続きに要する期間がより短くなり、試用期間があることで不確定要素も減少し、企業にとってはより柔軟な契約が開始できること、労働者にとっても必然的に期限の定めのない契約となると述べた。

しかし、「CNEをモデルとする」という点に対し、野党だけでなく与党内でも疑問視する声があがり、1月29日、UMP党は「単一労働契約の導入は、CNEの一般化を意味するわけではない。CNEは、理由なき解雇や長すぎる試用期間が欠点であるため、解雇理由の明示を義務付け、試用期間は3カ月月以上6カ月未満とする」との改革案を表明した。

高失業率(2006年11月で8.6%)に悩むフランスでは、労働契約改革の必要性が指摘されてきた(注2)。CDIとCDD(期間の定めのある雇用契約)の中間のような「長期的なCDD」の導入や、期間の定めのない「単一労働契約」を新たに導入しCDDを完全に廃止するなど、様々な案が出されるなか、ドヴィルパン首相は2005年夏、CNEを創設。次いで、CNEを基礎とした25歳未満の若者向けにCPEを提案したが、「理由なき解雇」が受け入れられず、事態は学生たちの大規模な反対運動にまで発展し、結局CPEは廃案となった(注3)。

大統領選挙を前に、労働契約改革論争は再び中心的なテーマとなりつつある。世論調査機関CSAの調査によれば、フランス人の98%が雇用・失業問題を「最も重要かつ最優先すべきテーマ」として捉えているにも関わらず、67%の人々が「大統領選では十分に取り扱われておらず、国民の期待にこたえる内容になっていない」と感じている(注4)。各候補者がどれだけ国民の期待に添える政策案を提示できるのかが注目される。

関連情報