サービス指令案、競争力相理事会で政治合意

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  • 国別労働トピック:2006年6月

欧州連合(EU)の競争力相理事会が5月29日、30日に開かれ、域内サービス市場の自由化をうたった「サービス指令案」(通称ボルケシュタイン指令案)が全会一致で政治合意された。年内に欧州議会の第2読会で審議された後、正式に発効する見通しである。

EU域内25カ国における経済活動のうちサービス産業は60から70%を占める。一方、輸出高の約20%を占めるにすぎない。2002年7月欧州委員会によって発表された報告書「域内サービス市場の状況」(COM(2002)441)(注1)によれば、国境を越えたサービス提供にはさまざまな障壁があることが確認されている。サービス成長の潜在能力を生かしきれていないとされている。ヨーロッパを世界で最も競争力があり活発な地域にするという目標(リスボン戦略)を達成するために、欧州委員会は域内市場での国境を越えた取引促進を目的とするサービス指令案を2004年1月に発表した。

この指令案の発表後、経営側からは高く評価し早急に採択を求める声明が出され、労働側からは労働者の権利を侵害する恐れがあると懸念する声明が出された。旧加盟国側からは新規加盟国からの労働力流入を恐れる強い反発もあり、審議は難航していた。

こうした中、2006年2月16日の欧州議会(第1読会)において当初の指令案からは大幅に修正した内容の案を可決した(注2)。採択後、4月4日に欧州委員会が修正案を提示(注3)、4月22日にはオーストリアで開かれた非公式理事会において修正案合意の方向性が確認されていた(注4)。

今回、競争力相理事会において政治合意に至った案は欧州議会第1読会の修正案をもとにしている。母国法主義の条項を削除するという点で2月の欧州議会での修正に沿っているが、医療関連サービスをはじめとする社会公益サービスは指令の適用範囲から除外することを明確化しているという点で更なる修正が加えられている。

欧州労連(ETUC)はこの政治合意を歓迎するとした上で、指令が対象とする社会的側面に関しての詳細を明らかにしていく必要性があると主張する。今後の推移を見守りたいとしている(注5)。一方、欧州産業経営者連盟(UNICE)は理事会に先立ち、指令案を骨抜きにする方向にあることに対して懸念を示している(注6)。サービス提供の自由に制限をかけたり、バイアスをかけるような修正は好ましくないとしている。

なお、関連するプレスリリースとして4月26日に雇用社会総局からは社会的公益サービスに関するコミュニケーションも発表されている(注7)。医療や福祉といった社会的公益サービスは市民ボランティアの参加に支えられる非営利組織のための活動であり、通信や運輸のような別の公益サービスとは性格が異なることを明記している。

参考

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