イタリアの政労使、退職手当について合意に至る
政府、コンフィンドゥストリア(イタリア産業総連盟)、ならびに、CGIL(イタリア労働者組合同盟)、CISL(イタリア労働総同盟)およびUIL(イタリア労働連合)は、23日夜、首相官邸で退職手当(TFR)に関する合意文書に署名した。これによって、ついに補足的保障制度改革が具体化することになる。「これは、2007年1月1日から補足的社会保障制度を始動させる…きわめて重要な合意だ」と、ロマーノ・プローディ首相はコメントしている。コンフィンドゥストリア総裁のルーカ・ディ・モンテツェーモロは、「若年者にとってプラスの事実」と評価し、他の「改革」の弾みになるよう期待すると述べている。また、労働組合側のグリエルモ・エピファーニ総裁(CGIL)、ラファエーレ・ボナンニ総裁(CISL)およびルイージ・アンジェレッティ総裁(UIL)も満足の意を表明した。
今回の合意の成立で、2007年1月1日から6カ月間の間に、被用者(公務員は除く)は、退職手当(TFR)の積立金を、補足的保障制度の年金基金の財源として移転するか、あるいは、退職手当(TFR)のまま受け取るべく、現状を維持するかどうかを選択しなければならないことになる。この補足的保障制度は、強制加入の公的年金制度を1階部分とした場合、いわゆる2階部分にあたるもので、任意加入の制度である。このいずれの方法を採択するか明示の意思を表明しなかった場合は、退職手当(TFR)の積立金は、補足的保障制度に移転される(黙示の合意)。
これらの原則は、すでに2005年のマローニ改革で決定されていたが、当初の「2008年から」ではなく、「2007年1月1日から」に繰り上げられた。この前倒し実施は、現在下院で議論中の予算法の中で決定されたことである。予算法は、公的年金基金に50億ユーロの資金を当てるという重要な措置も定めていた。この新措置の前提としては、INPS(全国社会保障機関)のもとに、補足的保障制度の年金基金に加入しない労働者の退職手当(TFR)積立金のうち50%を保管するための基金を創設することが検討されていた。しかし、コンフィンドゥストリアは、INPSへの「法定貸付」だとして反対したため、昨日署名に至った合意においては、この新措置を大企業および中企業に限定し、また、移転の割合も変更した。つまり、従業員数50人以上の企業の被用者で、年金基金に加入しないことを決めた者の退職手当(TFR)積立金の100%を、INPSへ移転することとしたのである。コンフィンドゥストリアとしては、むしろ、上記のようなINPS下の基金創設という案の廃止を望んでいたが、結局はこの妥協案を受け入れた。というのも、イタリア企業の99.5%は、従業員数が50人未満であり、労働者の退職手当(TFR)積立金を(労働者の選択次第ではあるが)企業に留めておくことができるためである。
コンフィンドゥストリアの承諾にとってもう1つ決定的だったのは、マローニ改革が定めた企業のための代償措置を、2007年に前倒しすることが盛り込まれた点である。この代償措置とは、退職手当(TFR)の積立金という重要な資金を手放さなければならない企業について、移転された退職手当(TFR)積立金の4%から6%(企業の規模による)を所得から控除し、INPSの保障基金(使用者が破綻するなどして退職手当(TFR)が支給できなくなった場合、使用者に代わり退職手当(TFR)を給付する基金)への拠出の率を0.2%に引き下げるなどである。これによる国家財政の負担は、「数億ユーロ程度」とトンマーゾ・パドア=ショッパ経済大臣は述べているが、予算法の中で対応する予定であり、「金額の変更はない」とされている。前倒し実施にあたっては、労働者が選択する際の助けになるよう、情報提供キャンペーンが組織される。予算法に関する報告書の中で、政府は、2007年に関して、労働者の45%から50%が補足的保障制度の年金基金に加入すると見込んでいる(現在は15%に満たない)。チェーザレ・ダミアーノ労働大臣は、従業員数50人以上の企業の被用者で、補足的保障制度に加入しない者についても、現状と何ら変わらないと請合っている。つまり、退職手当(TFR)に関する法が定める手当は、家の購入費として使う場合の繰上げ受給を含めて、これからも保証される予定である。
出典
- 2006年10月24日付けCorriere della Sera
参考レート
- 1ユーロ (EUR) =153.83円(※みずほ銀行ウェブサイト
2006年12月4日現在)
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