労働・社会保障事業の発展に関する『第11次5カ年(15)』計画綱要(2006年~2010年)

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国務院の労働・社会保障事業発展の「第11次5カ年」計画綱要に関する通知の転送

国発〔2006〕35号

省、自治区、直轄市人民政府および国務院の部門・委員会、直属機構各位

国務院は、労働保障部および発展改革委員会の制定した「労働・社会保障事業の発展に関する『第11次5カ年(15)』計画綱要(2006年~2010年)」に賛同し、ここに通知を転送する。関係各位の徹底的な実施をお願いしたい。

国務院
2006年10月13日

労働・社会保障事業の発展に関する『第11次5カ年(15)』計画綱要
(2006年~2010年)目次

序言

1.「15(第10次5カ年計画)」期間における主な成果と経験

  1. 主な成果
    1. 就業・再就業の問題においての顕著な成果
    2. 職業訓練においての大きな進展
    3. 社会保障事業の目覚しい進展
    4. 労働関係調整メカニズムの初歩的形成
    5. 労働保障法制の構築における新しい進展
  2. 主な経験
    1. 党中央および国務院から高く重視されることが、労働保障事業の全面的かつ調和の取れた持続可能な発展を推進するための根本的な保証となる
    2. 科学的発展観を全面的に実行に移すことは、労働保障事業を確実に行うための重要な指針となる
    3. 労働者の根本的利益を擁護することは、労働保障事業を成功裏に遂行するための出発点であり、足がかりである
    4. 適法に行政活動を行う姿勢を堅持することは、労働保障事業を成功裏に遂行するための強力な保障となる
    5. 就職基礎能力の育成を強化することは、労働保障事業を成功裏に遂行するための必要条件である

2.「15」期間において直面する情勢

  1. 雇用情勢は依然として厳しい状況である
  2. 社会保障制度は早急な完備が望まれている
  3. 労働関係における矛盾が日増しに顕在化している

3.「15」期間における指導思想と基本原則

  1. 指導思想
  2. 基本原則
    1. 人間本位という理念を堅持し、労働者の合法的権益を的確に擁護する
    2. 統1的に計画し、かつ各方面に配慮するという原則を堅持し、協調的発展を促進する
    3. 改革の深化を堅持し、業務メカニズムを刷新する

4.「15」期間における発展目標と主な任務

  1. 発展目標
    1. 就業機会の継続的な増大を図る
    2. 労働者の資質を不断に向上させる
    3. 社会保障体系を完備する
    4. 労働関係を概ね調和的・安定的に維持する
    5. 労働保障法制を健全化する
  2. 主な任務
    1. 就業促進の長期的戦略および政策を実施し、あらゆる手段を講じて就業を拡大する
    2. 職業教育および訓練を強力に推進し、労働者の技能と資質の向上を加速させる
    3. 社会保障体系の完備を加速し、社会保障力を増強する
    4. 労働関係調整メカニズムを健全化し、調和の取れた労働関係を創造する
    5. 労働保障法制の構築を強化し、法に基づいた行政を堅持する

5.「15」期間における保障措置

  1. 政府の投入を拡大し、政策面からの扶助を強化する
  2. 重要プロジェクトおよび制度改革を実施する
  3. 労働保障の情報化構築を強化する
  4. 労働保障に関する科学技術研究を強化する
  5. 国際交流と国際協力を強化する
  6. 労働保障事業の広報活動を強化する
  7. 労働保障システムの能力構築を強化する

労働・社会保障事業の発展に関する『第11次5カ年(15)』計画綱要
(2006年~2010年)内容

序言

21世紀初頭の20年において、我が国は小康社会(いくらかゆとりのある社会)の全面的な構築、調和の取れた社会主義社会の構築、社会主義現代化の推進の加速化における新しい発展段階へと突入した。この期間は、我が国における経済社会の発展が第3段階の戦略目標へと邁進していくための重要な時期である。この重要な時期において、労働者全体の資質と就業能力と就業の質の向上、雇用情勢の安定化、社会保障体系の完備、労働関係の調和を図ることは、我が国における経済社会の発展をより早く、より良く推進し、社会主義の現代化という目標の実現に向けて、着実に邁進して行くための基本条件である。また、我が国において経済体制改革を深化させ、社会の安定と国家の安定成長の持続を維持するための重要な任務でもある。科学的発展観の要求に基づいて実行に移し、我が国は経済社会の協調的発展をより重視していく計画である。また労働と社会保障事業を、調和の取れた社会主義社会を構築するための重要な保障とし、労働者の基本的な生活を保障し、社会の安定を維持し、経済発展を促進する上で、より重要な機能を発揮させる。

「中華人民共和国国民経済と社会発展の第11次5カ年計画綱要」に基づき、「労働・社会保障事業の発展に関する『15』計画綱要(2006年~2010年)」(以下「綱要」という)を制定した。これは「15」期間中に就業を拡大し、社会保障体系を整備し、労働関係を調整し、労働者の権益を擁護する等の面において措置を講じ、国民の生活水準を向上させ、調和の取れた社会主義社会の構築を推進するための重要な政策である。また、国民経済と社会発展において労働保障事業の効果をさらに発揮させ、労働保障事業の全面的かつ調和の取れた持続可能な発展を推進することにより、国家の「15」計画の目標の全面的な実現を推進するために、非常に重要な意義を有するものである。

本「綱要」の計画期間は2006年~2010年である。

1.「15(第10次5カ年計画)」期間における主な成果と経験

(1)主な成果

「15」期間中、労働保障事業において顕著な成果があった。改革を深化し、経済発展を促進し、社会の安定を守る上で多大な貢献を果たした。

  1. 就業・再就業の問題において、顕著な成果が見られた。積極的な就業政策が実施され、政府において就業を促進するための目標責任制が樹立され、「労働者が自由意志によって職業を選択し、市場が就業をコントロールし、政府が就業を促進する」というメカニズムが確立された。就業者総数は着実に増加しており、就業構造はより最適化され、雇用情勢は概ね安定的に維持された。「15」期間末期になると、全国の都市と農村の就業人口は7.6億人に達し、都市部の登録失業率は4.2%内に抑制された。5年間で都市部の就業者は新たに4200万人増加し、レイオフ失業者の再就業者数は1800万人となった。5年間で移転した農業労働力は4000万人となった。
  2. 職業訓練においても大きな進展が見られた。市場化、社会化された職業訓練の体系が初歩的に確立され、高度な技能を持つ人材の育成力が向上し、再就職訓練や起業訓練および農村労働力の移転訓練には着実な進歩が見られた。レイオフ失業者ではのべ2500万人が訓練を受け、全国100カ所の都市で起業訓練が実施された。職業資格証書制度が広範囲に普及し、技能を有する人材の評価と就業・使用・待遇との連動が初歩的に実現した。「15」期間末期には、全国でのべ6000万人以上が職業資格証書を取得した。
  3. 社会保障事業には目覚しい進展が見られた。国有企業にレイオフされた従業員の基本的な生活の確保と、企業離退職者に対する基本養老年金の定時・定額支給を確保するという成果を継続的に得ることに成功した。各保険制度の改革を着実に推進し、国有企業をレイオフされた従業員の基本生活保障制度を失業保険制度へ移行するための「併軌」政策は概ね完了した。社会保険がカバーする範囲は継続的に拡大され、保障力は目に見えて向上した。「15」期間末期には、全国で基本養老保険、基本医療保険、失業保険、労災保険、出産育児保険の加入者はそれぞれ、1.75億人、1.38億人、1.06億人および8478万人、5408万人に達した。また農村社会養老保険の加入者は5442万人に達した。2005年度の社会保険基金の収入は6968億元,支出5401億元だった。企業退職者の社会化管理サービスにおいても大きな進展が見られた。企業年金制度の実施も開始された。東北3省(遼寧省・吉林省・黒龍江省)においては都市社会保障体系整備の試行が行われ、有益な経験を得ることができた。
  4. 労働関係の調整メカニズムが初歩的に形成された。労働契約制度および集団契約制度は順調に推進され、全国の地・市級以上の都市には、労働関係の3者調整メカニズムが普遍的に構築された。国有企業の改革および資産再編時の労働関係処理政策は、徐々に完備されつつある。労働争議の処理機能も強化され、労働争議の解決率は90%以上に維持されている。体制変容期の特徴に応じた企業の賃金分配体制が初歩的に確立され、最低賃金制度と賃金ガイドライン制度も普遍的に確立された。労働力市場における賃金ガイドライン価格および人的コストの情報ガイドライン制度の構築も徐々に進められている。また、従業員の賃金水準に大幅な上昇が見られた。
  5. 労働保障法制の構築において新しい進展が見られた。「経済発展水準に応じた社会保障制度の確立と健全化」を「憲法」の中に記載した。国務院は「少年労働者の使用禁止規定」の修正案を公布し、「労災保険条例」および「労働保障監察条例」を制定・公布した。労働保障部は「労災認定方法」、「最低賃金規定」、「集団契約規定」、「企業年金試行方法」等の16部門の規則を公布した。各地で110以上の地域性のある労働保障法規および規則が施行され、社会主義市場経済体制に適した労働保障法律体系の枠組みが初歩的に形成された。労働保障監察機構は、社会保険料の徴収、労働力市場の秩序の整頓、建設分野における農民労働者の賃金支払遅延等の問題に対する専門調査を実施し、大量の違法案件を取り締まり、労働者の合法的権益を強力に擁護した。

(2)主な経験

「15」期間における労働保障事業の急速な発展によって、「15」期間において良好な基礎が打ち立てられ、今後の業務のための有益な経験が培われた。

  1. 共産党中央委員会(党中央)および国務院から高く重視されることが、労働保障事業の全面的かつ調和の取れた持続可能な発展を推進するための根本的な保証となる。党中央および国務院は、経済社会発展の全体の中で労働保障事業をより際立たせ、国民経済と社会発展の総体計画の中に組み込んだ。就業に関する政策を提起することは、「国民生活の基本であり、国を安定させるための策」を打ち出すことである。経済発展と就業の拡大という2つの政策を併用する戦略を確立し、就業および再就業の推進業務を強力に展開した。改革の構想をより明確なものとし、社会保障システムを徐々に完備している。党中央と国務院および地方各級の党委員会と政府からの高い重視と、各関連部門および各関連方面からの強力な支援を得て、労働保障業務の順調な前進は保証された。
  2. 科学的発展観を全面的に実行に移すことは、労働保障事業を確実に行うための重要な指針となる。各級の労働保障部門は、統一的に計画され、かつ、調和の取れた持続可能な発展の要求に基づき、党と政府の行う業務全体において労働保障事業の検討を行い、国民経済と社会発展の全体で労働保障事業を捉え、都市と農村を統一的な計画によって発展させるという全体的な構想から業務の配置を行った。改革の推進力および改革のリズムを的確に把握し、労働保障に関する各業務間の関係を調和的に処理した。経済発展を促進し、国有企業の改革に尽力し、社会の安定を守る上で、重要な効果を発揮した。
  3. 労働者の根本的利益を擁護することは、労働保障事業を成功裏に遂行するための出発点であり、足がかりである。労働者の根本的利益の擁護を最優先する姿勢を、一貫して堅持してきた。労働保障事業に関する法規の施行、政策の制定、業務の実施のすべてにおいて、各所得層における利益関係の調和の取れたバランスを重視し、労働者の経済的・心理的な許容度を十分に考慮することによって、幅広い労働者の支持と支援を得ることができた。このため、労働保障事業の発展に広範囲な大衆という基礎を構築することができたのである。
  4. 適法に行政活動を行う姿勢を堅持することは、労働保障事業を成功裏に遂行するための強力な保障となる。労働保障に関する一連の法律・法規および部門の規則が前後して施行されたことによって、労働保障事業はさらに従うことのできる法があり、後ろ盾となる規則を得たという状況になった。各級の労働保障部門は、適法に行政活動を行う意識を不断に強め、法律を拠り所とした方法を一層重視しながら労働保障事業を管理し、規範化し、推進した。労働保障の監察・法執行力および労働争議の処理能力を常に拡大し、労働者の合法的権益は基本的な保障を得ることになった。
  5. 就職基礎能力の育成を強化することは、労働保障事業を成功裏に遂行するための必要条件である。職業の斡旋、職業訓練等の就業サービス機能は不断に完備され、社会保険取扱機構および業務フローは徐々に健全化、規範化されている。街道(行政の末端機構)社区(地域コミュニティー)における労働保障事業プラットフォームが、初歩的に確立された。「金保工程」(情報技術を利用して実施される、労働と社会保障に関する電子政務プロジェクト)構築が積極的に推進され、幹部グループメンバーの資質は不断に向上し、労働保障に関する科学研究において喜ばしい成果が挙がった。就職基礎能力の育成強化によって、労働保障事業の発展は強力なバックアップを得た。

2.「15」期間において直面する情勢

「15」期間とは、我が国が小康社会を全面的に構築し、社会主義現代化構築の推進を加速するための重要な時期である。この期間、労働保障事業が発展する上で、得がたいチャンスと厳しい試練が待ち受けている。科学的発展観の実施と調和の取れた社会主義社会の構築の要求に基づき、我が国は経済社会の協調的発展をより一層重視し、労働保障事業を調和の取れた社会主義社会の構築における重要な内容および力点として定義する。労働者の基本的な生活を保障し、社会の安定を守り、改革の深化を推進し、経済発展を促進する等の面において、労働保障事業は日増しに重要な役割を担っていくことになる。また同時に、社会主義市場経済体制の不断なる完備と国民経済の持続的かつ急速な成長によって、労働保障事業が持続可能な発展を実現するための、強大な内的動力および堅実な経済的基礎が提供され、より有利な条件が引き出されてくるだろう。しかし今後の一時期では、経済情勢や社会構造の絶えざる変化に伴い、各種の社会問題や矛盾が常に増加かつ複雑化、多様化してくること、労働保障事業の発展が恐らく直面するであろう多くの困難と問題に、冷静に対処していかなければならない。これは主に、以下のような現象として表れるだろう。

  1. 雇用情勢が依然として厳しい状況を呈している。我が国は人口が多く、就業に伴うプレッシャーも大きい。今後5年間、あるいはさらに長い期間、労働力の供給過剰という矛盾が依然として存在するだろう。2010年には、我が国の労働力総数は8.3億人に達する見込みである。都市部には新たに5000万人の労働力が供給される。しかし需要の状況から見れば、労働力の新たな就業ポストはわずか4000万件しか増加しない見込みであり、労働力人口の約1000万人は余剰労働力となってしまう。体制変容期の遺留問題である国有・集団企業(郷鎮企業など)のレイオフ失業者の再就職問題も未解決である。国有企業の改革や資産再編および閉鎖・破産過程における労働者の分流(サービス業などの新規事業を興すことによって国有企業の余剰労働力を吸収すること)による再配置の任務は非常に重い。一部には経済未発達地域、経済的に困難な業種、社会的弱者層の就業問題が依然として存在する。高卒者等の新しく成長してくる労働力の就業問題、農村労働力の移転による就業問題および土地を徴収された農民の就業問題は特に際立ってくる。労働者全体の技能水準は非常に低く、高い技能を持った人材は極めて不足している。経済成長方法の転換の加速と、産業構造の最適化と向上を推進するための要求とが一致していない。
  2. 社会保障制度は早急な完備が強く望まれる。我が国は既に高齢化社会に突入しており、養老保険や医療保険等の社会保障基金は、給付による巨大なプレッシャーにさらされている。退職者は年々増加しているが、養老保険の個人口座(積立型の年金保険)には個人と企業による賃金の一定比率の積み立てが行われていない。企業退職者の基本養老年金の水準と国家機関および事業部門(公務員)の退職者の退職金水準には開きがあり、社会の安定に影響を及ぼす要因となっている。一部の都市部住民の医療保障には、制度による対応が不足している。失業保険の持つ、就業を促進する機能は未だ十分に発揮されていない。安全生産への厳格な取り組みを求める傾向は、労災保険に対してさらに高い要求を提示している。都市部の個人経営を行う労働者やフレキシブルな職業に従事する労働者、農民労働者、土地を徴収された農民、農村の農耕従事者に対する社会保障の問題が際立ってくる。社会保険に関する統一計画のレベルは低く、一部の流動する就業者の保険については移転が困難である。これらの問題は社会的関心の焦点となり、強く重視されることになるのは必至である。
  3. 労働関係における矛盾が日増しに顕在化する。都市化、工業化、経済の構造調整過程の加速、および経済成分の多元化と就業形態の多様化に伴い、労働関係はより複雑化する傾向にあり、利益関係を調整する難度はさらに上昇する。国有企業時代の労働関係の問題は早急な解決が待たれている。賃金分配については不合理で、分配秩序は規範化されておらず、矛盾は日増しに際立ってくる。市場経済の要求に適合した企業の賃金決定メカニズムは不完全で、一般従業員の賃金アップが緩慢な企業もある。事業主の労働者に対する限度を超した残業の強制、労働者賃金の支払遅延やピンはね等、労働者の合法的権益を侵害する行為が深刻化する。労働争議は引き続き大幅な増加傾向を呈する。労働争議の予防や処理業務は、依然として非常に大きなプレッシャーに直面している。

3.「15」期間における指導思想と基本原則

(1)指導思想

「15」期間において労働保障事業の発展を図るためには、鄧小平理論および「3つの代表」(中国共産党の寄って立つ基盤を指すもので、1.進的生産能力の発展要求、2.進的文化の前進方向、3.国の最も広範的な人民の根本利益、これら3つを代表するのが中国共産党であるとする理論)という重要な思想を指導指針として、科学的発展観によって統率し、国民経済と社会発展の全体的な面から判断する。労働者の密接な利益を擁護することから着手し、労働保障事業を法制化、科学化という軌道に乗せる。就業の拡大と労働関係の改善および社会保障体系の完備との有機的な連携と、相互に促進し合う労働保障事業の新しいメカニズムを徐々に形成して、調和の取れた社会主義社会を構築し、小康社会の全面的な構築という努力目標を実現するために、新たな貢献を果たしていく。

(2)基本原則

  1. 人間本位という理念を堅持し、労働者の合法的権益を的確に擁護する。国民の根本的利益を擁護することを、業務の出発点および足がかりとして一貫して定義する。政策の決定、制定および実施の過程においては、国民の関心が最も高く、最も直接的で、最も現実的な利益に関する問題から着手する。異なる利益集団の関係性を適切に処理し、社会的弱者層の生活に関心を向け、かつ支援を提供する。あらゆる策を講じて就業を拡大し、社会保障体系の完備を加速させ、労働者の合法的権益の保護に努める。収入分配を適度に調節することによって、労働者が改革と発展の成果を享受する機会を拡大し、社会の調和と安定を積極的に推進する。
  2. 統一的に計画し、かつ各方面に配慮するという原則を堅持し、協調的発展を促進する。我が国の基本的な国情に立脚して、国民経済と社会発展を一致させ、各種労働者の需要を統一的に計画し、かつ配慮する。就業や社会保障および労働関係の調整等の労働保障に関する各事業の発展を協調的に推進する。就業者総数を増大させていくと同時に、就業の質の向上も一層重視していく。社会保険がカバーする範囲を拡大させていくと同時に、制度体系の完備も一層重視していく。労働者の合法的権益を全面的に擁護すると同時に、各所得者層の利益関係の協調的なバランスも一層重視していく。各制度改革を推進すると同時に、法制、計画・統計、情報ネットワーク、監督、管理、サービス体系等のインフラ建設についても一層重視していき、労働保障事業の全面的かつ調和の取れた持続可能な発展を促進していく。
  3. 改革の深化を堅持し、業務メカニズムを刷新する。改革の構想や改革の手法を用いて労働保障事業の深部における矛盾を解決し、労働保障事業の発展に影響を及ぼす制度的な障害を解消する。改革の推進力、発展の速度、社会の許容度を調和させることに重点を置き、重要な各改革方案の制定および実施においては、大多数の人々の利益に適っているか否かを十分に考慮しなければならない。国家財政や企業と一般大衆の許容力および社会の各方面に対する影響を考慮し、改革、発展、安定の関係を的確に処理する。労働保障事業の新しいメカニズムを積極的に模索かつ確立する。業務目標を確定する上では、現実の状況に基づいて長期的な観点から判断し、労働保障事業の持続可能な発展を実現する。業務の重点を把握する上では、現実に際立っている矛盾を解決すると同時に、長期的な効果が表れるメカニズムを追求かつ確立することに重点を置く。業務方法を改善する上では、制度の完備、メカニズムの刷新、管理能力の向上をより重視し、模範的事例によって全体を推進し、区域間の協調、分類指導(個別の状況に合わせて指導を行う方法)を行う等、立証済みの効果的な業務方法を重視する方針を堅持する。

4.「15」期間における発展目標と主な任務

(1)発展目標

「15」期間における労働保障事業の主な発展目標は、次の通りである。国民経済と社会発展が一致した、完備された労働保障制度および運用メカニズムを確立かつ健全化する。就業機会の充実、収入分配の合理化、労働関係の概ね調和的・安定的な維持、社会保障体系の完備、管理サービスの規範化かつ高効率化という発展目標を徐々に実現する。

  1. 就業機会の継続的な増大を図る。就業の拡大を経済社会の発展においてより際立たせ、積極的な就業政策を継続的に実施する。体制変容期の遺留問題であるレイオフ失業者の再就業問題の解決に重点を置くとともに、都市部において新たに増加する労働力の就業と農村余剰労働力の移転・就業に関する業務に尽力し、かつ成功裏に遂行する。社会主義市場経済の条件下で就業を促進するための、長期間の効果を発揮するメカニズムを模索かつ確立する。都市と農村において統一的な就業支援を積極的に推進し、都市においては統一的な労働力市場と公平な競争が確保された就業制度を徐々に確立する。就業ルートを広げ、就業ポストを増加させ、就業構造を改善し、就業の質を向上させる。失業率のコントロールを強化し、雇用情勢の安定を維持する。「15」期間に、全国の都市部で新たに増加する就業人口4500万人を実現させる。都市部の登録失業率を5%内に抑え、移転する農業労働力人口を4500万人とする。
  2. 労働者の資質を不断に向上させる。市場に向けた、秩序のある運用、高効果な管理、都市と農村をカバーする職業訓練および技能を有する人材の評価制度と政策体系を形成する。各種の労働者に対する訓練をより強化し、巨大な規模の、各種の専門職に対応できる、適切な機構を有する技能労働者グループの基礎を確立する。「15」期間末期には、全国の技能労働者の総数を1.1億人にまで増加させる。内訳は、労働者総数における技師および高級技師の割合は5%、高級工(上級労働者)の割合は20%とする。
  3. 社会保障体系を完備する。社会保障制度および管理サービス体系を確立かつ健全化する。資金調達ルートの多元化、保障方法のレベルの多様化、管理サービスの社会化を実現する。社会保障がカバーする範囲をより広範にし、都市における各種の就業人員が平等に社会保障を享受できる体制を概ね実現する。農村の社会保障制度を健全化する。「15」期間末期には、都市部の基本養老、基本医療、失業、労災および出産育児保険の加入者数をそれぞれ2.23億人、3億人、1.2億人、1.4億人および8000万人以上に引き上げる。農村社会養老保険および企業年金の加入者数を徐々に引き上げる。
  4. 労働関係を概ね調和的・安定的に維持する。労働関係調整メカニズムをより完備し、労働関係調整の法制化を徐々に実現する。労働契約制度を普遍的に実施し、集団契約制度を継続的に推進し、労働関係の3者調整メカニズムを徐々に健全化し、労働争議処理体制の改革に顕著な進展が得られるよう図る。企業における賃金収入分配の秩序を規範化し、従業員の賃金水準を徐々に引き上げる。
  5. 労働保障法制を健全化する。労働保障に関する法律・法規体系の確立と健全化を加速し、労働保障の法に基づく行政制度をより完備し、都市と農村をカバーする労働保障の監察・法執行ネットワークを概ね形成する。法律普及活動の強化を通じて、広範囲な労働者と事業主の権利保護の意識および法律遵守の意識を大幅に向上させる。

(2)主な任務

1.就業促進の長期的戦略および政策を実施し、あらゆる手段を講じて就業を拡大する。
  1. 経済発展と就業促進の両方を目的とした戦略を実施し、就業を拡大するのに有利な経済成長方法を確立する。経済の構造調整を推進し、個人経営や私営企業等の非公有制経済組織の発展を奨励かつ支援する。就業容量の大きい労働集約型産業やサービス業および各種所有制の中小企業の発展を積極的に推進し、就業構造を改善し、就業容量を拡大する。地区間の協力関係を強化し、研修、就業、権利保護が3位一体となった業務モデルを普及させ、労務輸出業務を成功裏に実施し、農業労働力が非農産業および都市部への秩序ある移転を指導かつ組織する。
  2. 積極的な就業政策を継続的に実施し、レイオフ失業者の再就業を促進する。良好な就業および起業環境を創造し、体制変容期の遺留問題であるレイオフ失業者の再就業問題を適切に解決し、国有および集団企業のレイオフ従業員、国有企業の閉鎖・破産による人員の再就業に重点を置いて適切に処理する。労働者の職業観念の転換を指導し、多様な就業形態を推進して、労働者自らによる就職活動や自主的な起業を奨励する。扶助政策による指導を通じて、レイオフ失業者の再就業者の受け入れを企業に奨励する。公益性のある法人の開発力を増強し、各扶助政策を全面的に実施して、就業の安定性を向上させる。就業と失業保険および都市住民の最低限の生活を保障する業務が連動するメカニズムを構築し、レイオフ失業者の一刻も早い再就業の実現を推進・支援する。
  3. 市場主導の就業メカニズムを不断に完備する。都市と農村に統一的で平等な競争が行われる労働力市場を確立し、徐々に就業差別を解消していく。農村労働力の都市への流入および越境就職の制限を取り払い、農民労働者の都市部での就業環境を改善する。新たに成長する労働力、特に高卒者の就業を積極的に推進する。労働力市場の構築を強化し、労働者の求職活動、事業主の人材募集活動および職業仲介行為を規範化する。各種の失業者をカバーする失業登録制度を確立し、失業登録した高卒者へのサービスと管理を強化し、事業主による人材募集の任用記録制度および就業登録制度を完備する。各種の職業仲介行為に対する監督管理を強化し、労働力市場の秩序を維持する。
  4. 制度化、専業化、社会化された公共就業サービス体系を確立する。都市と農村の労働者をカバーする就業管理サービス組織体系を完備する。全県・郷における公共就業サービスネットワークを構築・健全化する。政府による就業促進の公共サービス機能を強化し、公共就業サービス制度を完備する。公共就業サービスの統一計画・管理を、都市を中心に徐々に実施し、サービスの方法を完備し、サービスプロジェクトを開発し、サービス機能を大きく充実させ、都市と農村の各種労働者に効果的なサービスを提供する。経済未発達地域、経済的に困難な業種、社会的弱者層に対する就業支援制度を完備する。各種の専門的な職業仲介機構および労務派遣、職業コンサルティング指導、就業情報サービス等の社会化されたサービス組織を支援し、かつ規範化された発展を推進する。政府が就業サービスの成果物を買い取るメカニズムを徐々に確立し、社会の各種就業サービス機構の力を存分に発揮させる。
  5. 失業率のコントロールを強化する。閉鎖・破産および資産再編・制度改革した国有企業の従業員の分流を適切に行う。主副分離(主業務と副次業務の分割)・副次業務の制度改革により、余剰人員の分流・再配置を行うことを国有大中型企業に奨励する。企業のリストラ行為を規範化し、正常な生産経営を行う企業のリストラ行為に対する指導を強化する。失業早期警報メカニズムを構築し、予備案および適切な措置を策定して、効果的に失業率をコントロールし、長期失業者数を減少させ、雇用情勢の安定を維持する。
  6. 海外就業の管理体制を完備し、外国人の我が国における就業管理制度を健全化する。海外就業に関する突発的なトラブルの調整・処理メカニズムを確立し、海外就業者の合法的権益を保護する。海外就業の仲介機構に対する監督管理を強化し、海外就業者に対するサービスを規範化する。海外就業市場の推進力を拡大し、在中外国人の就業に対する管理を強化する。
2.職業教育および訓練を強力に推進し、労働者の技能と資質の向上を加速する。
  1. 経済社会の発展に必要な技能労働者の訓練を加速する。現有する教育訓練資源の機能を十分に発揮させる。大型の中堅企業および職業学校、高級技術労働者学校、技師学院等の主要な職業教育訓練機構を拠り所として、模範的で、国家級の高い技能を持つ人材の訓練基地および地域性のある公共実地訓練基地を複数建設して、高い技能を持つ人材の育成を加速し、現代的な職業訓練制度モデルの確立を推進する。実用的な技能訓練を強化し、レイオフ失業者の再就職力を向上させる。起業訓練を実施し、起業によって就業機会の倍増を図る。農民の職業技能訓練と指導的な訓練を積極的に展開し、農民の職業技能、転職の能力および環境適応能力を向上させる。労働予備制度(中卒者および高卒者に対する職業訓練を行う制度)を完備することによって、都市と農村で新たに成長する労働力の90%以上に対し、就業前に必要な職業技能訓練を受けさせる。政府による推進、企業による主導、異業種間の協調、学校の参加、社会からの支持、個人の努力による、技能労働者の育成事業の新しい枠組みの形成を加速化する。技術労働者学校と職業訓練機構の能力構築を強化し、学校と企業が協同した技能労働者の育成制度を確立する。適切な構造を有する技能労働者群を徐々に形成する。
  2. 職業資格証書制度をさらに完備し、技能労働者の評価、選抜、使用および奨励メカニズムを形成する。社会化職業技能鑑定、企業の技能労働者の評価、職業学校の資格認証および専門職種の技能試験などの業務体系を完備し、労働者の就業および技能の形成過程において、職業資格証書が有するガイダンス効果を発揮させる。業種や企業および社会全体において各種の職業技能競技会や崗位練兵活動(職場で行われる職員の資質を高めるための教育活動)の実施を奨励する。技能労働者の使用と訓練試験が一体化し、待遇と業績・貢献度が連動する奨励メカニズムを確立するよう企業を指導する。
  3. 職業教育と訓練の技術サポート体系およびサービス体系の構築を強化する。国家の職業分類体系および職業標準体系の構築を完備し、新しい職業の定期的な公表制度を確立する。国家問題集の作成と職業訓練教材の開発を加速し、現代的な訓練技術と遠隔訓練を幅広く利用し、訓練方法、訓練モデル、訓練機構の評価方法の改革を加速して、職業訓練教師グループの創設を強化する。高い技能を持つ人材の開発・交流メカニズムを徐々に完備し、技能を有する人材および技能・成果の情報データベースを構築する。全国の条件の整った地区において、社会に実地訓練および技能鑑定サービスを提供する公共実地訓練基地を50カ所建設する。合理的に構成された公共訓練鑑定サービスネットワークを初歩的に形成する。
3.社会保障体系の完備を加速し、社会保障力を増強する。
  1. 各種の社会保険制度を完備する。我が国の現段階における経済社会の発展レベルに基づき、異なる地区、異なる所得者層間の収入水準の格差および事業主と個人の実際の許容力を総合的に勘案する。国民の基本的生活と基本的な医療のニーズを保障することに重点を置き、都市基本養老、基本医療、失業、労災、出産育児保険制度をさらに完備して、農民労働者および土地を徴収された農民の社会保障問題を適切に解決し、農村社会養老保険事業を研究・追及し、積極的で確実な推進を図る。
    養老保険について。基本養老年金の定時・定額支給を継続的に確保する。東北3省で、都市社会保障体系整備の試行によって培われた経験を積極的に普及し、都市部の個人経営者およびフレキシブルな職業に従事する労働者の保険加入・保険料納入に関する政策を統一化して、非公有制企業(個人企業・合弁企業・独資企業などの民営企業)、都市部の個人経営者およびフレキシブルな職業に従事する労働者が、都市基本養老保険のカバー範囲に組み入れられるよう図る。基本養老保険の個人口座の積立を徐々に行い、基本養老年金の計算・支給方法を改革する。基本養老年金の正常な調整メカニズムを確立し、企業退職者の基本養老年金の水準と国家機関および事業部門の退職者の退職金水準との格差を縮小する。条件の整っている企業に対して企業年金の確立を奨励し、基本養老保険、企業年金および個人貯蓄型養老保険などを結びつけた多元的な養老保険体系を初歩的に形成する。国家機関および事業部門の養老保険制度改革を推進し、国家機関および事業部門と企業の養老保険制度の適切な連携を実現する。
    医療保険について。都市部の基本医療保障政策と管理を不断に改善し、運用保障メカニズムを確立・健全化する。都市部の医療救助制度建設を加速し、高額医療費補充医療保険をさらに規範化する。基本医療保障が主体となった、重大疾病のリスクを保障することに重点を置いた、多元的なニーズに応じることのできる医療保障体系を構築し、基本医療保障がカバーする範囲を徐々に拡大していく。
    失業保険について。失業保険金の取得申請方法をさらに完備し、失業者の求職と職業訓練への参加状況とを結びつけることで取得申請条件を完備して、失業保険と就業促進の連動メカニズムを確立する。東部地区において失業保険基金の支出範囲を適切に拡大する試験の実施を積極的に推進し、失業保険制度の持つ再就業促進機能を一層発揮させる。フレキシブルな職業に従事する労働者の失業保険問題を研究し、適切な制度による対応を図っていく。
    労災保険について。労災保険に関する政策と標準体系をより完備する。各種企業および雇用者を抱えた個人経営者の労災保険への加入を継続的に推進する。事業団体、社会団体、民間非企業単位(老人福祉、児童福祉などの福祉施設)の労災保険への加入推進活動を計画かつ実施する。労災認定制度および労働能力鑑定制度を完備し、労災補償と労働災害防止および労災リハビリテーションを結びつけた効果的な方法を積極的に模索し、労災事故を防止する効果的なメカニズムを構築し、我が国の国情に適した労災リハビリテーション制度を徐々に確立する。
    出産育児保険について。出産育児保険のカバー範囲を拡大する。出産育児保険医療サービス管理体系と費用の決算法を確立かつ健全化する。
    農村社会保険について。都市と農村の発展の要求に基づいて、農村の経済発展レベルに応じ、かつ、その他の保障措置と組み合わせることのできる農村社会養老保険制度を模索・確立する。異なる所得者層の特徴とニーズに適した方法を採用して、土地を徴収された農民に対する社会保険事業の推進に力を入れ、農民労働者の労災保険および重大疾病に対する医療保障の問題を優先的に解決する。低価格でカバーする範囲の広い、移転可能な、現行の養老保険制度と連結した農民労働者養老保険の方法について早急に研究を行う。新型農村合作医療制度(農民・集団(村)・政府の3者による共済型の医療保障制度)を概ね確立する。
    社会保険に関する統一計画のレベルを向上させ、統一計画の調整力を不断に高めていく。条件を積極的に創造し、基本養老保険の省レベルの統一計画を概ね実現させる。失業保険の市(地)レベルの統一計画を徐々に推進し、労災保険の準備金制度を確立かつ完備する。
  2. 社会保険の資金調達ルートを多元化する。徴収フローを規範化し、徴収管理を強化し、各社会保険料の適法で統一的な徴収を実現する。徴収奨励メカニズムを確立し、徴収するべき社会保険料をすべて徴収する。社会保険基金の予算・決算制度を確立かつ健全化する。新たな社会保障基金の資金調達ルートの開拓を積極的に展開し、規範化された社会保障資金の調達および支出制度を確立し、安定的な財源を形成し、各社会保険の支給を確保する。社会的弱者層に対する医療保障の財源問題を適切に解決し、経済的に困難な企業の従業員、閉鎖・破産企業の退職者、都市部住民の中の低所得家庭を医療保障体系に組み入れる。
  3. 社会保障基金の運営と監督管理メカニズムの模索を、積極的かつ確実に行う。社会保障基金の監督管理制度と早期警報モニタリングメカニズムを完備し、行政監督、専門監督、社会監督、内部コントロールが一体化した監督体系に徐々に健全化する。収支別建ての方法をより完備し、基金の性質に基づいて分類した投資政策を制定する。基金の安全を確保することを前提として、養老保険の個人口座基金、農村社会養老保険基金の投資・管理方法を研究かつ制定する。全国の社会保障基金および企業年金の市場化方式に基づく投資運営に対する監督管理を強化し、運用の規範化と基金の維持と増加を実現する。社会保険の支給を規範化し、基金の流失を厳重に防止し、社会保険料を詐取する行為に対する取り締まりを強化し、基金の支払に関する制度上の抜け穴をなくす。
  4. 加入者の社会保険関係の移転や、関係継続に関する政策措置を完備する。都市部における各所得者層間の社会保険制度の設計および政策との連結における問題を研究かつ解決する。異なる所得者層間における社会保障制度・政策の効果的な連結を実現し、流動的労働者の社会保険の関係継続問題に対する効果的な解決方法を模索する。
  5. 社会化管理サービス体系を確立し、健全化する。社会保険取扱機構のサービス基準を制定し、サービス施設の建設を規範化することから着手する。基礎管理を強化し、サービス資源を整合し、サービスフローを規範化して、社会保険取扱機構のサービスの規範化、情報化、専業化の構築を推進する。奨励メカニズムおよび制約メカニズムを確立して、社会化管理サービスの水準を全面的に高め、企業退職者を社会化管理へと組み入れる。公共老年サービス施設およびサービスネットワークの構築を加速し、条件の整っている地域に、退職者専用マンションを建設することを奨励し、退職者の生活の質を不断に向上させる。
4.労働関係調整メカニズムを健全化し、調和の取れた労働関係を創造する。
  1. 労働関係調整メカニズムの構築を加速させる。労働契約制度を全面的に実施し、各種企業において普遍的に、従業員と労働契約を締結し、厳格な履行を行うよう推進する。集団契約制度を推進し、地域性、業種性のある賃金集団協議を強力に展開する。労働関係の3者調整メカニズムの組織の構築および制度の構築を強化し、3者調整メカニズムの機能を十分に発揮させる。国有企業・事業部門の改革における労働関係を継続的に規範化する。
  2. 企業の賃金収入分配制度を調節し、賃金分配の秩序を規範化する。企業の賃金決定メカニズムの転換を継続的に推進し、賃金集団協議制度の確立に尽力する。最低賃金制度を健全化し、経済発展の水準に基づいて最低賃金の基準を徐々に向上させる。賃金ガイドラインおよび労働力市場における賃金ガイドライン価格や、人的コストの情報ガイドライン等のマクロ的なガイドライン制度をより一層完備する。国有企業の賃金収入分配規則および監督管理メカニズムを完備し、高収入の国有単独資本企業および国有持株企業の賃金分配に対するコントロールを強化する。企業の賃金支給制度を完備し、賃金支給に対する監督・制御の制度および賃金支給保障制度を確立し、健全化する。
  3. 労働争議の処理体制の改革を推進し、労働争議の処理業務を全面的に強化する。現行の「一調一裁両審」(企業内部の調停委員会による調停、政府労働仲裁委員会の仲裁、裁判所による2級審判)という労働争議の処理制度を改革する。予防と調停を重視し、仲裁の利点と効果が際立った労働争議の処理メカニズムを模索・確立する。労働争議仲裁機構の実体化を全面的に推進し、市(地)レベル以上の都市および条件の整っている県(市・区)において、実体性のある労働争議の処理機構を徐々に構築する。労働争議仲裁機構の専業化、職業化の構築を積極的に推進する。労働争議の調停業務を強化し、企業における労働争議調停委員会を健全化すると同時に、地域性、業種性のある労働争議調停組織の構築を積極に推進する。
5.労働保障法制の構築を強化し、法に基づいた行政を堅持する。
  1. 我が国の労働保障法律体系を確立かつ健全化する。労働法を改正かつ完備し、労働契約法、就業促進法、社会保険法、労働争議処理法等の法律を制定する。障害者の就業、職業技能訓練と鑑定、労働力市場、企業賃金、基本養老保険、医療保険、社会保険基金の監督管理等の行政法規を研究・制定する。「失業保険条例」を改正・完備し、地方における労働保障に関する立法作業への指導を強化する。
  2. 労働基準の制定と改正作業を強化する。特殊勤務時間審査認可制度および従業員休息休暇制度を完備する。女性従業員と未成年労働者に対する特殊労働保護を強化する。経済的に困難がある職場の特別労働手当制度を研究・完備し、労働定員定額国家基準の制定・改正作業を実施し、業種および企業集団において労働定員定額業種基準の制定・改正作業を指導する。
  3. 労働保障監察制度および体制構築を強化する。労働保障監察制度の構築および業務メカニズムの刷新を継続的に推進し、監察・法執行力を一層増強し、事業主の労働保障のコンプライアンス制度を全面的に確立する。監察プロセスをさらに規範化し、監察業務制度を完備し、労働保障監察の職能、機構、マーク、法執行の文書の統一化を実現し、労働保障に関する法執行の監察グループを充実させる。関連部門と共同で、労働保障法律・法規の違反行為を取り締まる総合管理メカニズムを完備する。農民労働者に対する賃金支払遅延等の、労働者の合法的権益を侵害する行為に対する取り締まり力を強化する。
  4. 完備され、法に基づいた行政および法執行に対する監督の業務制度を確立する。労働保障の政務公開制度を確立・完備し、各級の労働保障行政部門および取扱機構の規範化されたサービス行為を適法に推進し、労働保障に関する事務を適法に処理する。行政による審査認可および行政による許可行為を規範化し、被許可者に対する監督検査制度を確立する。行政再議制度を完備し、行政過失責任追及制度を確立する。
  5. 法律普及教育の業務制度を確立・健全化する。労働保障法律を普及するための新しく効果的な方法を積極に模索し、法律普及業務の特化性と実効性を強める。労働保障システムの作業員に対する法律普及のための輪訓制度(順繰りに訓練を行う制度)を確立する。事業主および労働者に対する法律普及教育を強化し、農民労働者に対する就業前の労働保障法律・法規の教育訓練を実施し、自らの労働保障権益を適法に擁護するという労働者の意識と能力を適度に増強し、労働保障法律の普及業務の制度化を推進する。

5.「15」期間における保障措置

  1. 政府の投入を拡大し、政策面からの扶助を強化する。中央および地方財政の労働保障事業の発展への投入を一層増大し、農村労働力の訓練、就業の促進、社会保障、労働監察・法執行等の業務への投入に重点を置く。労働保障業務の目標任務に適した財政資金投入メカニズムと奨励メカニズムを形成する。政府、企業、社会による多元的な資金調達のできる高い技能を有する人材の投入メカニズムを確立する。財政資金および政策による貸付金について計画し、技術労働者学校および公共実地訓練基地、実習基地の建設を扶助する。職業技能訓練および職業技能鑑定に参加した要件を満たしているレイオフ失業者、農民労働者および土地を徴収された農民に対して、補助金や奨励金を提供する。国内総生産における社会保障のための支出の割合を徐々に増やし、中央および地方財政の社会保障事業に対する資金援助を拡大する。社会保険基金の徴収・納付および支出に対する監督を大幅に強化し、企業と個人の責任を全面的に徹底することを基本とし、各級の財政の各社会保険基金に対するバランスを保つ責任を明確化する。「15」期間において、社会保障のための支出の国家財政総支出における比重を徐々に高めるとともに、就業を促進し、社会保障制度を完備する等の面において財政・税務や貸付金等の特恵政策を完備する。
  2. 重要プロジェクトおよび制度改革を実施する。都市と農村において就業および訓練プロジェクトの統一計画を順序立てて推進する。農村労働力の移転就業を促進し、国家における高い技能を有する人材の育成、再就職訓練、労働力市場と公共就業サービス能力の構築を強化する。都市と農村における労働保障モデル区の構築を統一的に計画する。社会保障サービスの管理能力構築プロジェクトを実施する。社会保険取扱管理サービスセンターの建設および労働災害の防止と職業リハビリテーションモデルの開発を強化する。都市部住民に対する医療保障制度の構築および農村社会養老保険制度の構築を整備する。労働保障の基礎能力構築プロジェクトを実施する。労働保障の監察能力構築および労働争議の処理能力構築を強化する。「金保工程」の第2期構築および労働保障システム作業員の業務訓練を成功裏に実施する。重要プロジェクトの実施を通じて、労働保障のインフラおよび管理サービス能力の向上を促進する。
  3. 労働保障の情報化構築を強化する。「完全、正確、統一、適時、安全」という要求に基づき、労働保障の情報化構築を大幅に強化する。労働保障の情報化総合管理を強化し、全体の情報化水準を向上させ、就業促進サービス、職業訓練、技能鑑定、社会保険、労働関係、労働保障の監察等の、各労働保障業務の情報化を全面的に推進する。全国情報ネットワークの機能をさらに発揮させ、各労働保障業務間の情報の共有と協調処理を実現し、地区を越えた業務に対するサポートを提供する。情報技術を応用して労働保障統計制度の改革を深化させ、就業状況のモニタリングおよび失業早期警報体系、給与調査システム、社会保険基金の監督管理応用システムを確立する。計画の予測、統計分析、モニタリング、早期警報等を含む、多元化された科学的な政策決定支援システムを形成する。
  4. 労働保障に関する科学技術研究を強化する。科学技術の刷新を一層推進し、労働保障事業の発展に、システマティックな理論指導と科学技術という拠り所を提供する。労働保障の科学技術体制改革の歩調を加速し、資金調達ルートの多元化、科学研究経費への投入を増加する。科学研究に携わる人材グループの構築を強化する。科学研究員による積極的な開拓、不断なる刷新、多大な成果の創出を奨励する。科学研究成果の強力な普及と応用を行い、政策決定、管理、サービスの科学化を促進する。
  5. 国際交流と国際協力を強化する。交流および協力ルートを開拓し、技術協力プロジェクトの実現に向けて努力し、国際的な経験を参考に労働保障分野の改革を深化するため、より良好な条件を創造する。国際的労働者組織等の国際組織との協力体制を構築し、強化する。国際労働条約および提案書等の国際労働基準の制定活動に積極的に参与する。我が国の国情に適した国際労働条約を適時に認可し、国際的な労働分野における影響力を強めていく。
  6. 労働保障事業の広報活動を強化する。世論に対する正しい指導を堅持する。労働保障の広報活動の推進力を不断に向上させる。各種マスメディアや、さまざまな形の広報活動を通じて、労働保障の法律・法規および政策を広範囲に宣伝し、労働保障事業に関心を抱き、理解し支持するよう社会全体に働きかける。一般大衆を指導し、就業観念を新たにし、保険加入の意識を高揚して、調和の取れた労働関係を構築する。我が国の労働保障に関する経験と成果の対外的な宣伝を強化し、外部への影響力を不断に拡大する。広報活動の機能を強化し、広報活動への投入を増大させる。広報活動の特化性および有効性を不断に向上し、労働保障事業の健全なる発展の推進に有益な世論と環境を創造する。
  7. 労働保障システムの能力構築を強化する。公共就業サービス、社会保険取扱、労働保障監察、労働争議処理等の業務機構を健全化・規範化する。街道(郷鎮)社区の労働保障業務プラットフォームの建設を強化する。労働保障業務の職能を一層調整・整理する。労働保障システム業務の規範化、標準化、科学化を推進し、情報化の水準を高める。幹部教育訓練体系を完備し、投入を増大する。各級各種幹部および専門技術者に対する大規模な訓練を実施し、勤勉、清潔、実務的で、効率の高い労働保障業務に従事する幹部によって構成された人材グループの創設に努め、労働保障事業の発展に組織的、人的な保障を提供する。

出所

  1. 中央政府ポータルサイト
  2. (労働政策研究研修機構国際研究部仮訳)

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