第93回ILO総会「世界的な雇用危機」への対応

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  • 国別労働トピック:2005年7月

スイス・ジュネーブで開催された第93回ILO総会(2005年5月31日~6月16日)は、強制労働の撤廃、若年雇用の創出、職場における労働安全衛生の向上、ソマビアILO事務局長が述べたいわゆる「世界的な雇用危機」について討議を重ね、これらの問題の緊急対策に道筋をつけた。

ソマビアILO事務局長は演説で、経済成長と雇用が大きく分断された現状に触れ、民主主義への信頼と自由市場が危機に直面していると指摘し、世界的な雇用危機への早急な対応を求めた。そのためILOでは、人間らしいまともな働き方を意味する「ディーセント・ワーク」を全世界の目標とするため、1)政労使の強化を通じた集団的な能力構築、2)ILOの更なる努力、3)国際協力におけるディーセント・ワークの議論活性化、の三点を行動に移すと述べた。また、マクロ経済、金融、貿易、投資、労働の諸政策を統合し、ディーセント・ワークを更なる進歩のカギとして政策策定における目標とすることを提案した。

下記は各分野における議論の概要と総会の成果である。

  1. 強制労働

    「労働における基本的な原則及び権利に関するILO宣言」のフォローアップとして出された、強制労働に関するグローバル・レポートについて、今後4年間の行動計画の基礎となる審議が行われた。この中で、強制労働は人間の尊厳の侵害であるとして強く非難され、国際的取り組みを強化するとのILO事務局長の提案が支持された。強制労働廃絶のための具体策としては、法の執行、啓発キャンペーン、政府及び社会的パートナーの能力開発、被害者の社会復帰、地域・世界レベルでの協力、持続可能な技術協力計画が挙げられた。

  2. 国際労働基準

    基準適用委員会では、ミャンマーの強制労働状況に関して特別会合が開かれ、状況が依然として改善されないことに対し、ミャンマー政府への警戒感を表明した。委員会は、これ以上の静観視はできないとし、海外直接投資や国有・軍所有の企業を含む対ミャンマーの関係見直しを至急行うよう各加盟国政労使に求めた。また、委員会はミャンマーについて強制労働と87号条約に定める結社の自由の保障問題と切り離すべきではないとして、ILO連絡駐在員の任務に87号条約の適用に関する支援を加えるべきだとする結論を出した。

    ベラルーシの結社の自由問題については、審査委員会の勧告に対して具体的な措置が講じられていないとして、ILO使節団のベラルーシ派遣を求めた。

  3. 労働安全衛生(一次討議)

    第91回総会における一般討議を踏まえ、労働安全衛生の分野では、条約とそれを補足する勧告の形で促進的枠組みを作るべきであるとの結論に達した。その枠組みによって労働安全衛生が国の重要課題と位置付けられ、より安全で健全な職場環境作りや各国の安全衛生制度の改良が促進されるよう求めている。

  4. 漁業部門における労働(二次討議)

    第92回総会における一次討議を踏まえ、漁業労働者の最低年齢、健康診断、食事、医療及び社会保障並びに漁船の設備等、漁業部門の労働条件に関する包括的な条約・勧告の採択に向けた議論が行われた。しかし、採決に当たっては定足数未満のため、本議題については来年の総会に持ち越しとなった。

  5. 若年者の雇用及び能力開発の促進(一般討議)

    世界的に若者の失業率が記録的な高水準に達する中、100カ国以上の代表が若年のディーセント・ワーク確保のための対策と、この課題についての国際社会の役割について討議した。若年雇用の委員会の最終報告は、ILOが知識構築、広報、技術支援を通じて実効のある行動計画を策定することにより、若年雇用を促進するよう求めている。また、国連事務総長の提案による若者雇用ネットワーク(YEN)においてILOが引き続き主導的な役割を果たし、途上国・先進国を問わずネットワークを拡大するよう要請した。

上記の主な議題以外に、アラブ被占領地の労働者の状況、2006/07年の2年度にわたる事業計画・予算案などの審議も行われた。事業計画は、ディーセントワークを全世界の目標とし、地域・国家レベル、国際レベルでの実現に向けた対策に重点を置いている。予算は5億9431万ドル(現行予算に対し約1%の微増)で議決された。また、政府、使用者、労働者の代表で構成される理事会の選挙も行われた。今年のゲスト・スピーカーはアラブ連盟の議長も務めるアルジェリアのアブデラジズ・ブテフリカ大統領と、アフリカ連合(AU)の議長もナイジェリアのオルシェグン・オバサンジョ大統領が演説を行った。ブテフリカ大統領はグローバル化に新たに社会的側面を与えることを求め、オバサンジョ大統領は「新しいアフリカ」の構築にはディーセント・ワーク、債務免除が必要と述べた。

参考レート

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