GMが2万5000人の大規模リストラへ

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2005年7月

経営不振が続く米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)社は6月7日の株主総会で、2008年までに北米におけるいくつかの工場閉鎖と、北米GMの全従業員数の13.8%にあたる2万5000人の時間給労働者の人員削減を行うとする大規模なリストラ策を発表した。

GMでは、工場閉鎖と、91年の7万4000人以来となる大規模な人員削減により、約25億ドルの年間コスト削減を見込んでいる。これに対し全米自動車労組(UAW)幹部は、「規模縮小だけでは再建はおぼつかない」として、コスト削減を優先する経営側の姿勢をけん制。消費者ニーズに合った車の開発が先決と反発している。(注1)

そもそもGMの経営不振の背景には、1)日本車の攻勢などによる販売不振、2)従業員・退職者のための医療費負担の増大、3)レイオフした労働者への賃金支払い(注2)――があるとされる。このうち医療費負担に関し、GM側は07年まで有効の労働協約を前倒しで改定するよう組合側に迫っている。

医療費負担問題

公的な保険制度を持ないアメリカでは、民間保険会社が販売する医療保険が中心となっている。GMは福利厚生の一環として、従業員・退職者の合計110万人に対し、屈指の好条件で医療保険を提供していると言われ、今年の負担見込み額は56億ドルに上る。ちなみにこの額を生産する自動車一台当たりでみると、GMは約1,500ドルで、トヨタの約200ドルを大きく上回る。ワゴナーGM会長はこの差異が両社の価格競争力に大きな影響をもたらしていると述べている。

揺れる労使関係

GM側の説明によると、非組合従業員が医療費の約27%を負担しているのに比べ、組合従業員は約7%しか負担していないとして、この医療費負担の格差を縮小させたい考えだ。UAWは協約の範囲内を条件に、医療費支出の削減に協力する姿勢を見せているが、協約の改定には応じない方針。現在、GMとUAWは医療費の削減について集中的に協議を重ねているが、経営側が協約の一方的破棄の可能性についても言及しており、労使関係の悪化が懸念される。ちなみにGMは98年に54日間にわたるストライキにより、35億ドルに及ぶ損害をこうむった苦い経験がある。ウォールストリートジャーナル紙によると、この件について結論が出るのは、工場の夏季休業があける7月中旬になると見られる。

参考レート

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