無給労働日の「連帯の日」の混乱とEU憲法拒否の関係

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  • 国別労働トピック:2005年6月

2005年から、労働者が無給で労働力を提供する「連帯の日」を、原則として年に1日設けることになったフランス。政府は、これまで祝日であった「聖霊降臨祭の翌日の月曜日」(注1) を「連帯の日」として定めた(今年は、5月16日にあたる)。これに対し、休みを削られた労働者たちは反発。当日は公共機関のストなどで、各地で混乱が生じた。

フランスでは、2004年6月17日に、労働者が無給で労働力を提供する「連帯の日」を、原則として年に1日設けるとする法律が成立した(注2)。その趣旨は、労働者が無給で1日余分に働くことによって年間20億ユーロの増収になると見込み、その増収分は高齢者介護拡充予算に充てるという計画。年間13日あった祝祭日(2004年)のうち、「聖霊降臨祭の翌日の月曜日」を、「連帯の日」とすることを決定した。これに対して、労働組合は猛反発。労働総同盟・労働者の力(CGT-FO)は、「聖霊降臨明けの月曜日に就労することは、受け入れられない」とし、「社会的弱者に関連する費用は、別の方法で財源確保すべきである」と主張した。

労働総同盟(CGT)は、傘下の鉄鋼産業系労働組合にストライキを呼びかけ、ティボー書記長は、「勤労者は黙っているのではなく、無報酬での労働を強いられるこの『連帯の日』を廃止するために、必要であれば、ストライキに訴えなくてはならない」と檄を飛ばした。

フランス民主労働同盟(CFDT)も、「祝日の削減は、高齢者との連帯の問題に応えたものではなく労働時間の問題。すなわち『労働時間の延長』と密接に関連している」とし、「連帯の日」に何らかの行動をとる意向を表明した。

公務員の労働組合も、ストライキを含めた抗議行動を行う意向を示し、「労働時間の延長や時短の見直しは、労働者のみに負担を強いるため、連帯の概念とは相容れない。政府は、社会保障制度全体を見直し、公平な方法で財源を調達すべきである」と主張した。

政府は、こうした労働組合の動きを受けても、「連帯の日」の政策を見直す考えは示さなかった。労組との対立は、「連帯の日」当日を迎えるまで解決できず、5月16日は、公務員を中心に多くの労働者が出勤を拒否。多くの自治体では役所の窓口は閉じたままとなり、各都市の公共交通機関がストの影響を受けた。

欧州連合(EU)憲法批准可否を問う国民投票が実施されたのは、この「連帯の日」の2週間後にあたる5月29日。国民は「ノー」という答えを出した。同憲法批准否決という結果を受け、シラク大統領は、5月30日、ラファラン首相を更迭。翌31日に、ドピルパン内相を新首相に任命した。与党内では、投票前から、「この『連帯の日』問題が、国民投票に悪影響を及ぼすのではないか」とする懸念が広がっていた。

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