厳しい経済見通しのなか、政府は失業者数減少に自信を示すも、2005年1月の失業率は5年ぶりの2けた台に

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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厳しい2005年の経済見通し

フランス政府は、2005年の経済成長率の目標を2.5%とすることを決定した。これに対し、CCF銀行のニコラ・クラカン氏は、「目標達成は困難である」との認識を示している。個人消費に力強さが見られないことから、2005年も、企業経営者が投資に慎重な態度を取り続けるというのが、同氏の予想である。

保険会社Euler Hermesのフィリップ・ブロサール氏は、2004年第4四半期に個人消費の回復が確認された場合は、数値の見直しがなされるとしながらも、2005年の経済成長率は2%と予想している。

INSEE(フランス国立統計経済研究所)は、2%をやや下回る水準になると予想。輸出の減少や個人消費の落ち込みを受け、商業部門の成長は僅かしか見込めず、その他のサービス部門の拡大もあまり期待できないとしている。

2004年の失業状況

このように、2005年の景気に関して厳しい見通しが多いなか、2005年1月28日、雇用・社会統合省は、2004年12月の雇用統計を発表した。それによると、2004年末の時点で、失業率(ILOの基準に基づく)は、9.9%であった(注1)。

失業者数について、2003年と比較すると、年齢別では、25歳以下の若年者は2.2%の増加であったのに対し、50歳以上の中高年は、2.3%減少。また、男女別では、女性が0.8%増加したのに対し、男性は1.0%減少であった。また、職業安定所に1年以上求職登録している長期失業者は、3.1%の増加。3年以上職に就いていない失業者も、2.5%増加している。

失業率(季節調整済み)は、2003年12月の9.9%から、2004年2月には9.8%へ下がったが、同年6月には再び9.9%に上昇し、翌7月に9.8%に戻った以外は、年末まで9.9%の水準であった。つまり、年間を通じて常に10%近い水準であったことがわかる。

政府の目標(公約)

ラファラン首相は、2004年11月10日、「2005年は、失業者数を10%減少させ、同年末までに失業率を9%未満の水準にすることを約束する」と表明。1)製造業の生産高が1997年以来の高い伸び率を示している、2)2004年の経済成長率が、当初の予測の1.7%を超えている――ということにより、2005年は、更なる景気拡大が期待され、それが雇用の増加に繋がると、同首相は主張している。

こうした政府の公約に対し、職業安定所のミシェル・ベルナール所長は、「楽観論である」としながらも、ある条件がそろえば、その実現も不可能ではないとの認識を示した。その条件とは、2005年の経済成長が少なくとも2.5%を超え、その上、特殊雇用契約での雇用が25万人以上に上るなど、社会統合法(注2)による諸政策が着実に実行されるというものである。

INSEEによる予測

INSEEは、2005年6月末までに、公共部門・民間部門合わせて、5万7000人の雇用純増と推測している。民間企業における雇用拡大のペースに関して、2004年第3四半期の製造業の生産高が非常に好調だったことを考慮しても、今後大きな変化はなく、2005年上半期は、2万5000人程度の増加にとどまるというのが、INSEEの予想である。また、公共部門においては、特殊雇用契約による大量採用は期待できないとしている。労働力人口については、僅かながら増加すると予想。これらを総合的にみて、INSEEは、2005年6月末の失業率を、現在の9.9%から僅かに低い9.7%と予測している。

国民の反応

ある世論調査によれば、ラファラン首相による「失業者10%減少の公約」は達成できないと考える国民が75%に及ぶことがわかった(12月2日付けのユーマニテ誌)。内訳は、「絶対に実現不可能」が41%、「おそらく不可能」が34%。一方、「実現可能」であるとした人は22%であった(3%は、無回答)。

最近の状況

こうしたなか、ラファラン首相は、1月14日、リベラシオン誌のインタビューに対しても、「失業者を10%減少する」という公約には変化がないことを強調した。さらに、2005年には、景気拡大で新たに15万人の雇用が生まれ、また、社会統合法により新設された「将来契約contrat d’avenir」(注3)は、18万5000人に職を与えることができると主張している。

経済見通しは厳しいものが多く、また、雇用情勢の先行きも明るいとは言い難いフランス。INSEEの発表によれば、2005年1月の失業率は10%と、約5年ぶりの2けた台となった。ラファラン首相は自信を示しているが、「失業者10%減少」という公約実現に向けて、厳しい1年となることが予想される。

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