社会統合法の成立

国会で審議の続いていた社会統合法(loi Borloo de cohesion sociale)が、2004年12月20日、与党の賛成多数で、可決・成立した。同法は、雇用や住宅など社会問題全般に関する改善を目的としたもので、ボルロー雇用・労働・社会統合相が中心となって準備を進めてきた。5年間で150億ユーロを投入し、社会的不均衡の是正を目指す。なお、就職差別をなくすことを目的に、従業員数250人以上の大企業に対して、名前や年齢、性別などを明記しない匿名履歴書による応募を義務付けるという条項は、最終的に削除された。「弱者救済」的な性格を有すとしながらも、「企業の自由活動を促進させる」という現政権の基本路線に沿ったものとなった。同法に盛り込まれた雇用に関する主要な項目は以下の通り(注1) 。

1)将来契約(Contrat d’avenir)の創設

将来契約とは、社会復帰最低手当(RMI)など福祉手当の受給者を対象に、地方自治体や非営利団体における一定期間の就労を促すもの。有期のパートタイム就労をしながら、職業訓練に参加し、将来の恒久的な就労につなげることを目的とした契約である。週の一部は、職業訓練(研修)に充てられ、労働時間分に対してSMIC(法定最低賃金)の給与が支払われる。

  1. 対象

    社会参入最低所得(RMI)、失業保障制度の特別連帯給付、単親手当のいずれかの手当を、政令で定められる期間(当初は6ヵ月の予定)を超えて受給している者。なお、社会参入最低所得(RMI)に関しては、受給権者も含む。

  2. 契約締結可能な雇用主

    地方自治体および公共団体、公的サービスの提供を委託されている民間企業、非営利目的の組織・団体(各種協会、共済法に基づいて設立された共済組合、企業委員会、労働組合等)など。

  3. 契約期間

    2年間の雇用契約だが、12カ月を限度に更新することが可能。ただし、50歳以上の場合は、36カ月を限度に更新することができる。

  4. 就労時間及び職業訓練時間の規定

    週当りの就労時間は、「26時間程度」と定められ、契約期間内で変動可能。例えば、「契約期間の前半は20時間、後半は32時間」というような就労時間を設定することもできる。職業訓練時間は、就業時間と合計して、法定労働時間を超えない範囲で設定できる。

  5. 賃金および失業保障

    契約締結によって採用された従業員には、「SMIC以上の報酬を支払う」という労働協約がない限り、就労時間に応じて、SMICの報酬が支払われる。職業訓練中の時間は、無報酬でもよい(注2) 。

    また、他の賃金労働者と同様に、失業時の所得が保障されている。非営利民間団体で将来契約によって採用された従業員は、他の従業員と同様に、失業保険制度に加入する。公共部門の雇用主は、彼らを直接保障するか、失業保険制度に加入させなくてはならない。

  6. 雇用主に対する優遇措置

    雇用主には、1)社会保障制度の保険料雇用主負担の免除、2)採用手当の支給、3)逓減定額手当の支給――という優遇措置がとられる。

    1)については、健康保険、公的年金、労災保険、家族手当などの保険料が対象。免除される範囲は、政令によって定められる報酬(当初は、SMICを予定)を限度とされる。

    2)の採用手当は、将来契約による従業員採用時に、県または国が雇用主に支給するもの。社会参入最低所得(RMI)、特別連帯手当、寡婦手当に相当する額(同条件の場合、いずれも同額)が支給され、その額は2004年10月31日現在で、417.88ユーロ(日本円で約5万9000円)。

    3)の逓減定額手当とは、「雇用主負担の報酬総額」から「RMIや特別連帯手当、寡婦手当の額」を差し引いた額の一定割合にあたる額を、国が雇用主に支給するもの。3年間を限度とする。1年目は、<「雇用主負担の報酬総額」‐「RMIや特別連帯手当、寡婦手当額」>の75%、2年目は同50%、3年目は同25%にあたる金額が支給される。

  7. 契約締結労働者に関する定期審査

    契約の適用者の状況について、6カ月毎に審査される。もし、手当を受給する条件を満たさなければ、政令であらかじめ定められる方法 (現在は未定) で、他の契約に置き換えられこともあり得る。

2)社会統合法によるその他の雇用関連の法改正

「将来契約の創設」のほかに、雇用・労働に関する法規制の改正が定められた。例えば、1)雇用契約の際、移動時間を就業時間に含めない、2)雇用センター(Maison de l'emploi:直訳すると、『雇用会館または雇用の家』)を全国300箇所に創設する――等である。2)の「雇用センター」は、これまで求職者の再就職手続き業務を独占してきた職業安定所(ANPE)にかわって、失業給付に関する手続きや求職者登録などの窓口業務、失業者個々人に合わせた求職活動を提案する機関。

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