欧州委員会、成長と雇用のための新戦略及び新社会政策アジェンダを発表

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  • 国別労働トピック:2005年3月

欧州委員会は、2月2日、2000年に開始されたEUの10カ年経済計画「リスボン戦略」を再活性化し、成長と雇用創出を実現するための新戦略を発表した。新戦略は、2004年11月に発足したバローゾ新欧州委員会の2010年までの施政方針となるものである。新戦略の行動計画が達成されると、2010年までにGDPは3%上昇し、600万人の雇用が創出されるとしている。欧州委員会はまた、2月9日、この新戦略の社会的側面に対応する「新社会政策アジェンダ」を発表した。新アジェンダは、すべての人々に仕事と平等な機会を提供し、EUの成長と雇用の増大に伴う利益が社会のすべての人々に及ぶよう保証することを目指している。

なお、これに先立つ1月27日、欧州委員会は、欧州雇用ガイドラインに基づき加盟国が提出した国別雇用行動報告を、欧州委員会と欧州理事会が検証し取りまとめた年次合同雇用報告(2004~2005年)を採択した(関連情報は2を参照)。同報告は、リスボン戦略の中間見直しについて討議する2005年3月の欧州理事会に提出される。

1.成長と雇用のための新戦略

欧州委員会が発表した成長と雇用創出の実現に向けた新戦略の目的は、2000年に開始されたEUの経済改革アジェンダ「リスボン戦略」を再活性化することにある。リスボン戦略は開始から5年が経過したが、期待された成果を上げていないと総括された。その原因は、リスボン戦略が28の主要目標、120の補助目標、117の異なる指標からなり、評価の手続きがあまりに複雑すぎる点に起因する。

欧州委員会は、EUの競争力を強化し、持続的経済成長と雇用創出を達成するために、より焦点を絞ったEUと加盟国の具体的な行動計画を策定した。計画は、1)規制緩和と官僚主義の脱却、2)EU社会資本の整備と拡張、3)研究開発のための投資拡大と税制改革、4)研究開発、技術革新促進のためのEU補助金制度の改革、5)地域の技術革新拠点とEU技術研究所の創設、6)環境技術開発の促進、7)欧州技術イニシアティブの設定、8)EU若者イニシアティブを通じた若年失業との闘い、9)技術革新、職業訓練、社会資本整備のためのEU結束基金、構造基金の活用促進――などの欧州単一市場を拡大・深化させるための政策を盛り込んでいる。

評価の過程は単一の国別行動計画と単一の国別報告書に基づき大幅に簡素化されることとなった。加盟国はリスボン戦略の実行に係る調整を担当する政府レベルの責任者(Mr or Mrs Lisbon)を任命することとされた。

欧州委員会は、リスボン戦略の新行動計画が実行されると、1)教育水準の向上2)研究開発投資の拡大3)情報通信技術、電力市場の自由化――などの影響により、2010年までにEUのGDPは3%上昇し、600万人の雇用が創出されるとしている。

2.新社会政策アジェンダ(2005~2010)

欧州委員会は、2月9日、2005年から2010年までの「新社会政策アジェンダ」を発表した。新アジェンダは、2000年策定され今年期限切れとなる現行アジェンダを維持・発展させ、リスボン戦略を再活性化する「成長と雇用のための新戦略」の社会的側面に対応するものである。

新社会政策アジェンダは、新戦略に基づき、1)フル就業及び2)貧困との闘いと機会均等の促進――という2つの重要な優先課題を設定した。これらの優先課題は、欧州委員会の向う5年間の戦略目標「繁栄と連帯」を支援するものである。新アジェンダは、地方・地域・国レベルの公共機関と使用者、労働者代表及びNGOのパートナーシップを呼びかけている。

雇用に関して、新アジェンダは、1)労働者が異なる加盟国で働く場合にも、年金と社会保障の受給権を保証し、国境を越えた団体交渉の選択的な枠組みを設定することを通じた欧州労働市場の創造、2)欧州若者イニシアティブ及び女性の労働市場への参加を通じて、より多くの人々により良い仕事を提供、3)短期契約、新しい医療・社会保障戦略など、新しい労働組織の必要性に適応した労働法の改正、4)労使対話を通じたリストラクチャリング過程の管理――などの分野に焦点を当てている。

貧困、機会均等に関しては、1)人口統計学に関するグリーン・ペーパーの策定及び高齢化の影響と異なる世代間の将来の関係に関する分析、2)加盟国の年金・医療制度改革支援を通じた貧困との闘い、3)差別、不平等に対する取り組み(最低賃金制度の検証、マイノリティーに対する差別との闘い)、4)ジェンダー研究所の設立などを通じた男女機会均等の促進、5)社会的に関心のある社会サービスの役割、性質の明確化――などの取り組みを挙げている。

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