イタリアの就業政策:就業サービス、地理的移動および訓練

カテゴリー:高齢者雇用若年者雇用人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2005年1月

1.全国就業計画で示されたイタリアの労働市場の状況

2003年のイタリアは、経済が停滞していたにもかかわらず(国内総生産0.3%増)、就業率に関しては8年連続で伸びがみられた(22万5000人増、前年比で1%増)。

ただし、労働市場のマクロ的な指標が好調を示すとはいっても(たとえば、最新の失業率が8.7%に低下しているなど)、いくつかの点で減速の傾向が現れているのも事実である。まず、経済の停滞の反映として当然ではあるが、2003年の就業率の伸びはここ数年で最も低かった。また、労働ポストの増加はとくに北部および中部の州に集中しており(それぞれ14万4000人増と7万人増)、南部の州ではそれほどでもなかった(1万1000人増)。2005年に関して定められた就業戦略の目標指数から就業率が乖離しているのは、こうした南部の州なのである。

実際、2003年において、15歳から64歳の年齢層におけるイタリア全体の就業率は、2005年の目標指数より2.5ポイント低い56%であったが、南部では44.1%に過ぎなかった。

2005年に58.5%という就業率を達成できるかは、南部と北部との伸び率の格差を前に、依然危ういといえよう。

2002年から2003年にかけては、女性の労働力人口比率が若干上昇した(15歳から64歳の年齢層で47.9%から48.3%へ)。北部および中部では、女性の労働力人口比率がそれぞれ0.8%と1%増加したのに対し、南部では0.5%の減少であった。2003年の全国雇用措置計画(NAP)で設定された2005年の目標は、女性就業率を46%に引き上げることであった。最近の就業率の増加および失業率の減少のために、女性就業率は2002年から2003年の間に0.7ポイント上昇し、42.7%となっている。

2002年および2003年の15-64歳の年齢層に関する労働人口比率(a)および就業率(b)(%)
  2002 2003
男性 女性 男性 女性
a b a b a b a b
北部 76.0 74.0 55.7 52.5 76.6 74.6 56.5 53.4
中部 74.0 70.5 50.8 46.0 74.9 71.4 51.8 46.9
南部 71.4 61.2 36.8 27.0 71.4 61.4 36.3 27.1
74.0 68.8 47.9 42.0 74.4 69.3 48.3 42.7

出典:ISTAT、「労働力四半期測定」

高齢労働者の増加も、労働市場の発展に関する重大な要素である。実際、55歳から64歳の大多数が労働市場に残る選択をすれば、全体の就業率が上昇し、経済成長にプラスに働き、また、非活動者に対する活動者の割合が高まることで、社会保障費の均衡を保つのに寄与する。

今のところ、2005年に関して定められた目標(55歳から64歳の年齢層に関する就業率を40%にすること)との格差は、約10%とみられている。現在の伸び率(2000年から2003年の間に2.6%増)では、就業に関するガイド指針で定められた、2010年の50%という目標の達成も危ないだろう。ただし、年金改革の結果次第では、以上の状況に変化が出る可能性もある。

55-64歳の年齢層に関する就業率(2003年、%)
  男性 女性
中北部 39.7 19.0 29.1
南部および島嶼部 49.6 17.2 32.8
42.8 18.5 30.3
2005年全国就業措置計画(NAP)の目標値 40.0
2010年欧州雇用戦略(EES)の目標値 50.0

出典:ISTAT、「労働力四半期測定」、2003年平均

2.就業サービス網

イタリアの公的就業サービス制度(州の運営する就業センター)は、536組織を数え(2002年の527に対し9組織の増加)、イタリア全土に普及している。これに加えて、2002年にシチリア州によって開始された多機能窓口の220組織も、労働積極策の実施を担う機関として機能している。

2003年にISFOL(労働者訓練支援機関)が全国規模で実施したモニターによると、就業サービスは構造や機能の点で向上したことが明らかになっている。労働市場改革、配置転換に関する最近の措置、および失業状態の定義等、そしてさらには、これらの諸要素を通じて、イタリアの制度に浸透しているEU委員会の指針(長期失業の予防措置、労働市場の透明性、労働積極策の受益者層の合理化等)などと合わせてみると、こうした進展状況はいっそうの重要性を帯びてくる。

情報提供システムに関しては、労働市場改革(いわゆるビアジ改革、2004年2月14日法律30号)の定める旧労働情報制度(SIL)から継続労働取引制度への移行が行われたことにより、集権的で階層的なシステムが、自立性を備えた多様な主体が関わるという点で多極的ではあるが、制度内部では集約された総合システムへと変化した。すなわち、専門的、共同織的および共有的な基準に基づく「ネットワークのネット」である。これにより、オンライン管理という州の戦略に合致する形で、技術的な問題処理が可能になると期待されている。

3.地理的な移動

イタリアにおいて、国内の移動は、数の上で重要になっている現象である。移動の主たる理由は労働である。最近のISTAT(国立統計局)とSVIMEZ(南部産業支援協会)のデータによると、15万人から20万人が労働により移動していると推計されている。その多くは25歳から35歳までの高卒者および大卒者である。

興味深いのは、流入が起こっているのが北部、中部新興地およびアドリア海沿岸の山稜地域ということである。これらの地域は、北西部の大都市地域に移住する50歳代および60歳代とは異なり、南部に住む失業者がより関心を示す地域のように思われる。動機という点からこの現象を正しく評価するために、移動しようとする目的が、一連の要因、たとえば、働くことによって得られる収入や移動先で利用しうるサービスの質や量の影響を受けることも付け加えておこう。

効果的なサービス制度を構築できるように、移動という現象を管理することも必要である。そして、需要と供給を合致させる必要性に対応できるようなサービスを作れば、移動しようとする者の不都合をできるだけ小さくすることや、必要に迫られてではなく、職業的および人格的な発展の機会から移動が行われるように、徐々に移動の概念を克服していくこと、要するに、自由な選択に基づく移動を実現することも可能であろう。こうした観点からすると、移動者について、労働に関する状況以外にも目を向けることが不可欠である。

4.継続的訓練政策

継続的訓練政策は、財政および管理機構が強固で広範にわたる制度(欧州社会基金(FSE)や1993年7月19日法律236号〔就業支援に関する緊急措置〕のほか、新労使同数代表職業間基金など)を基礎としている。

労使同数代表職業間基金に関しては、2003年に基金の始動に関する移行期間が終了している。3年の試運転期間を経て、同基金のメカニズムが完全に実施され、これにより、企業は、INPS(全国社会保障機関)に納付する給与の0.3%分の拠出金を、自己の従業員の継続的訓練に充てることが可能になったわけである。

今までのところ、10の基金が設立・承認され、企業および労働者の大部分をカバーしている。2003年に関しては、企業は、6月30日までにこれらの基金に自由に加入することができた(効果は2004年1月1日より生じる)。この日までに基金に加入した企業は、29万6644に上る。INPSによれば、労働者数にして427万2178人(関係する労働者の約40%)と推計されている。

1993年法律236号の規定については、1996年までは、労働省が、就業者の訓練のために、各州に財源を配分することで法の規定を実行していた。この仕組みは、FSEに関する措置と並んで、イタリアの継続的訓練の財源配分に関して長年採用されてきたものである。しかし2003年には、1993年法律236号に関する戦略として、新たな方法が採用されることになった。2003年10月28日に労働社会政策省局長令が公布され、州に対し、新たな財源の配分が定められた(5000万ユーロ)。この財源配分には、個別訓練、企業による訓練および地域訓練に関する計画を促進するための一般基準を対応する措置が組み合わされている。

同令は、新労使同数代表職業間基金では達成が困難な、継続的訓練措置の対象者の関与を確保できるように、既存の財政制度の「特化」を目指すものである。そのため、一方で、FSEとの共同財源による均一的な措置により統合を促進し、職業間基金の指導も考慮しながら継続的訓練に対する様々な公的支援を有効活用すること、そして他方で、各州に配分される財源のうちの70%は、以下の主体に対する措置に充てられるべきことが定められた。a)従業員数が15人に満たない民間企業の労働者、b)パートタイム労働契約、有期労働契約、連携的継続的協働労働契約、引き下げられた労働時間、変則的労働時間または弾力的労働時間が適用される契約類型、および、2004年法律30号で定められたプロジェクト労働契約を締結している民間企業の労働者、c)通常所得保障金庫および特別所得保障金庫の措置の適用を受ける民間企業の労働者、d)年齢が45歳を超える民間企業の労働者、e)小学校または義務教育の卒業資格しかもたない民間企業の労働者、である。残りの30%の財源は、州および自治県が各自で定める主体のために使われることになっている。

財源の大部分のターゲットとなっている主体が、労働社会政策省によりこのように定められたのは、これまで継続的訓練措置にあまり関わってこなかった領域について政策を実施する必要性が認識されたためであろう。実際、従来の継続的訓練措置が主として対象としていたのは、すでに十分な学歴を有した、職業上「強い」立場にある若年者である。ISFOLの支援を受けて、労働社会政策省が策定した指針および(財政および人数に関する)数的指標に基づき実施されるべき財政措置の監督活動もまた、以上の枠組みに沿って定められている。

4-1.個別的要請による継続的訓練

個別継続訓練(FCI)の試みは、1998年労働省通達139号(1993年法律236号の実施令)により始まった。同通達は、州に対し、企業、部門および地域の訓練計画に充てられる財源の一部を、労働者個人が提案する継続的訓練計画の財政のために用いることを認めたものである。FCIは、州(訓練制度が分散している場合には県)によって提供されるが、その仕組みは、主として2つある。すなわち、カタログ方式とクーポン方式である。一般に、労働者は、費用全体の20%までを負担することになっている。

今のところはこの試みを概説するに足る掘り下げた検討はなされていないが、これまでに実施された部分的な分析によれば、多くの労働者により制度が利用され、また、クーポン方式の簡便性が州の行政機関から好意的に評価されていることが明らかになっている。ただし、以下のような改善点も指摘されている。a)より「弱い」立場に置かれた労働者の要請をも満たせるような付随的な措置を実施すること、b)当該地域の職業上の必要性やその他の支援状況、および、利用者の特性や要請に見合った制度を提供すること、である。

「生涯訓練」政策の発展にとっての非常に重要な機会として、FCIの試みがどのような経緯をたどっているかについては、注意深く見守っていかねばならない。実際、この試みを監督し結果を評価するための措置を実施している州は多数に上る。また、組織化および運営のためのさまざまな措置を改善するために、次々と重要な仕組みを導入する州も多い。企業の訓練計画の実施に関わる組織的な複雑さや経済的なコストを小さくすることで、労働者によるFCIの利用を促進するといった、企業行動の点からも新しい仕組みも現れ始めている。最近採用され始めた訓練形態としては、企業のクーポン方式に注目が集まっている。これは、文字通りの個別的クーポンと企業による計画との中間に位置づけられるもので、対象者(企業の労働者)の選択した訓練活動(文書で裏付けの取れるものに限る)を金銭的に支援するための個別的な経済的インセンティブと捉えることができる。このほか、全国レベルの財政措置(1993年法律236号および2000年3月8日法律53号〔父母の支援、ケアおよび訓練の権利ならびに各町の時間の調整に関する規定〕タイプB)を通じて支給されるクーポン方式に関する分析からは、この制度を利用した労働者が、1993年法律236号に関しては約2万4000人、そして2000年法律53号については約1万人であったことがわかっている。よくあることだが、より「専門的」で入念に準備された管理体制が、結果の差となって現れたのだろう。

措置の実施に際して州が直面している困難を考慮して、労働社会政策省は、州への財源の配分に関する新措置を計画するにあたり、州が、配分される額の5%相当額を、「労働者、企業ならびに使用者組織および労働組合への」情報提供および宣伝活動に充てることができると定めた。さらに、州が、労働社会政策省の示す指針および指標に基づき年間報告書を作成し、これを送付することについても規定が置かれた。最後に、中央政府および州政府によって発表された入札の公示に関する分析によると、2003年に関しては、FSE計画における訓練クーポンの利用が増加していることが明らかになっている。

4-2.成人の教育

地域常設センターは、下記の3つのコースを提供しており、41万4000人の成人がこれに参加している。

  1. 学位獲得のためのコース(利用者6万2451人)
  2. 外国人のための語学コース(利用者5万9996人)
  3. 情報処理および外国語コース(利用者29万2216人)

高等学校での夜間コースに通う成人の数は増加しているものの(6万3000人)、高校卒業証書を有する成人の数を大幅に増加させるためのプロジェクトも進められている。

4-3.18歳までの若年者に対する教育および職業訓練

2003年法律53号は、憲法34条にいう教育の義務および1999年5月17日法律144号〔投資措置、就業インセンティブおよびINAILの定める規定との調整に関する政府委任ならびに社会保障機関の再編に関する規定〕68条で導入された訓練の義務を再定義して、12年以上の教育・訓練の権利・義務または18歳までの資格獲得の権利・義務に拡大した。

2003年法律53号の実施令の公布を待って、教育大学研究省、労働社会政策省、州、トレント・ボルツァーノ自治県、県、市町村および山岳地は、2003年6月19日の統一会議において、2003/2004年からの教育訓練および職業訓練制度の暫定的実施に関する枠組み協定に署名した。この暫定的制度を実際に始動するため、州は、同協定に従い、教育大学研究省および労働社会政策省と、個別に合意規約を締結している。この結果、2003年から2004年にかけての1学年の間に、3年間のコースが1363設けられ、2万4552人の生徒がこれに参加している。2004年6月15日には、全国レベルで通用する職業資格を付与できるように、国・州会議において、基礎的資格に関する最低訓練基準が定められた。現在は、中間的および最終的な認証に関する共通の定義および各制度で通用する単位の認定を定めているところである。これらの実験的なプロジェクトの実施のために、2003/2004年に関しては、教育大学研究省へ113億4500万ユーロ、労働社会政策省へ3億400万ユーロの予算が割り当てられた。2004/2005年に関しては、これらの額は若干増える見込みである。教育大学研究省は、前学年に実施された既存のコースの継続および新3年コースの実施のために、226億9000万ユーロを充てる予定である。

4-4.学校と労働の代替

学校と労働の代替に関する一般的な規制の制定についての委任立法は、15歳になったことで、教育・訓練の権利・義務との関係で、少なくとも1つ以上の職業資格を得なければならない生徒のために、中等訓練に関する代替制度を定めている。この新制度の目的は、生徒に、基礎を習得させるだけでなく、労働市場で発揮しうる能力を獲得させることである。したがって、当該教育過程は、教室の外でも実施され、また、教育訓練機関と労働実務とが有機的に結びついた多様な方法で提供される。労働体験学習期間は、個別訓練コースに参入され、経済界や実業界の諸機関や代表者と締結された所定の協定に基づき、学校訓練機関の責任の下で計画、実施、評価される。こうした実務経験は、作業所を同時に体験学習所として用いている仮想訓練企業(後述4-5参照)でも実施することができる。法案の承認後、官民の企業および代理店との協定を通じて、全国津々浦々に配置された約300の教育機関が、学校・労働代替プロジェクトを実施し、約6000の生徒がこれに参加している。

以上の制度につき、2004年には1300万ユーロの予算が計上された。これが、2005年には3000万ユーロに引き上げられる予定である。さらに、学校に関する全国実施計画(PON)によって、研修・交換体験学習に関して2220のコースが認められており、4026万9679ユーロの財源が充てられている。

4-5.仮想訓練企業

仮想訓練企業は、学校・労働代替制度の実施のための特殊な手法である。若年者を労働の実務へ組み入れるのを促進し、学校において、まるで企業にいるかのように作業をさせることで、若年者に横断的な能力をつけさせることができる。また、その規模を国際的に拡大すれば、ヨーロッパの労働市場に通用する資格を獲得させることも可能である。こうした目的から、仮想訓練企業データ通信網が構築されている。企業シミュレーションコースと最新の教育方法を通じて、高等教育機関で「実地学習」が実施されているのである。この制度は、問題解決、共同学習および組織的体験という点に長所がある。

2004年6月には、仮想訓練企業の数は477であった。来学年にはさらに、280増える予定であり、2004-2006年の2学年間に1200万ユーロの財源が充てられることになっている。この制度を利用する生徒は現在約8000人であるが、来学年については約1万2000人にまで増加するとみられている。

4-6.若年者のための訓練を内容とする契約:見習労働

最新のINPSのデータによると、1997年以降継続的に増加してきた見習労働形態での就業が、ここに来て停滞したようである。全国レベルでみると、見習労働者の平均数は、2002年1月から7月にかけては476201人であった。これは、前年の2001年と比べると若干の減少(1.2%減)であり、1998年から2001年の連続増加傾向に歯止めがかかっている。2002年における見習労働者の平均数の減少は、とくにイタリア北部で顕著である。逆に、見習労働を通じて教育・訓練の権利・義務から免除された若年者の数は、増加傾向にあった。最新のデータは2002年10月31日時点のもので、これによると、15歳から17歳までの見習労働者数は、5万9189人となっている。

見習労働を通じて教育・訓練の権利・義務を免除されるという若年者側の要請は、これまでのところ、部分的にしか満たされていなかった。2001年と比べると、2000年第2四半期においては、多くの州で若年見習労働者の利用を促進しようとする動きがみられた(ただし、実際に活動が開始されたのは2002年末、および、とくに2003年になってからである)。見習労働制度の進展具合は、すべての州で同じではない。数年前から計画が採用され、利用者数が多い「堅固な」モデルをもつ州と並んで、見習労働に関する措置が「例外的な」あるいは「断続的な」性格をもつにとどまる州も残っている。いずれの場合においても、当該地域の制度の発展は、制度の普及にかかっている。訓練モデルに対する支援措置を実現するに際しては、多大な財源が必要である。訓練の提供が増加するということは、見習労働に関する費用が増えることを意味する。2002年にかかった費用は1億2800万ユーロであり、うち1億600万ユーロが北部におけるものであった。財源ごとみると、国の資金の利用が40%を若干下回る程度で、総計約5100万ユーロである。州は、前年に比べて、州実施計画(POR)よりも自らの財源を多く利用している。2003年委任立法276号の施行によって、新たな指針に基づくモデル(中でも3種の見習労働類型が設けられている点)に改めることが要求されるため、見習労働に関する州の制度に大きな影響が出ることが予想される。同時に、見習労働に関する政府モデルは、労働社会政策省主導の制度から地方分権的制度への移行を定めており、この結果、州の役割は拡大され、制度を規制する権限が委ねられることになろう。

4-7.高等教育・訓練

中上級レベルの特別な技術能力をより多くの若年者および成人に獲得させるという必要性に応えるため、IFTS(高等技術教育訓練)制度が定められた。この制度は、国および州の財源を利用して運営される(承認された計画にかかる総額のうち、州が30%以上を負担)。制度の計画は、州が行う。ただし、指針は、全国で同一のものが採用される。

3年計画が策定された第1年目(1998/1999年)に実施された分析によると、設置されたコースは約3倍に増え、2000/2001年には600を超えていたとされている。各コースには、平均約70人の応募者があり、全体の登録者数はおよそ1万人であった。IFTSコースは、多様な目的を達成するのに適したものと思われる。性別でみると、男性の登録者が若干多い(55.6%)。31歳を越える成人登録者が、全体の15.7%を占めていることも特徴である。IFTSコースの結果分析によると、コース終了から1年以内に、受講者の50.8%が何らかの職に就いたことがわかっている。これらの者の一定割合が、IFTSコースの終了時に転職したことを考慮すると、新たに労働市場に組み込まれた者の割合は、回答のあった者の34.7%となる。このうち24.2%は、学生で、以前研修を受けていたのと同じ企業に就職している。データでは、コースが就職に際し役に立っているのは、21歳未満の若年者であることが明らかになっている。実際、これらの者に関しては、コース登録時には就業者の割合が6.3%だったのが、コース終了から1年以内には46.2%に増加している。逆に、35歳を超える主体については厳しい状況である。コース開始前からすでに75.6%が職に就いていたということもあるが、コース終了時の上昇率は9%を少し上回る程度であった。

いずれにせよ、IFTSコースは就職を容易にするという目的に適したものといえそうであるが、より年齢の高い主体や、すでに就職の困難を抱えていたような主体の就業可能性を高めるという問題については不確かな制度だと思われる。就業者を性別でみると、女性がいまだに、より多くの就職の困難を抱えていることがわかる。事実、旧受講者で職に就けたのは、男性は54.3%であるのに対し、女性は46%である。

2004年4月29日の統一会議で承認された協定により、全国レベルの37の職業資格基準が定められたが、これをもって、1999-2003年に実施されたIFTS計画の第1段階がひとまず終了することになった。IFTSコースは、この4年間に大きな発展を遂げている。1999/2000年には397コースだったのが、2002/2003年には約600コースへ、同時期の生徒数も4360人から11520人へと増加した。2002/2003年の財源は1億220万3178.18ユーロで、うち5131万3087.00ユーロ(約45%)を国が、残りの5089万0084.18ユーロを州が負担している。訓練の地域的な要請を超えた技術的な特化という需要、そしてより一般にはヨーロッパ社会の要請に応えるため、新段階については、IFTS制度と学術研究・テクノロジーの転換に関する措置との緊密な連関が要求されることになろう。教育大学研究省、労働社会政策省およびピエモンテ・サルデーニャ州が2004年5月10日に署名した協定により指導された措置は、こうした流れの中で捉えることができる。この協定は、a)教育、訓練、労働、学術研究およびテクノロジーの転換とを結びつけるための措置に関する数年間の計画を定めること、b)IFTS制度を運営するために、機能的なセンターを設置して優先的に措置を講じること、を目的としている。新段階は、IFTSに関する全国委員会が再設置された2004年7月15日から開始されており、研究センター、産業管区および地域の補完計画と密接に関連したセンターが少なくとも各州に1つ以上設けられることになるかもしれない。

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