2003年最低賃金基準と「最低賃金規定」の施行

カテゴリー:労働法・働くルール労働条件・就業環境

中国の記事一覧

  • 国別労働トピック:2004年7月

2003年各地の最低賃金基準

最低賃金制度は、国有企業が経営システムを変革する過程で、企業内の賃金配分に自主権を十分発揮しつつ、労働者が不当に低い賃金となることがないよう、国がマクロな視点から監督する目的で、1993年以来導入されてきた。具体的には、1993年に労働部(現労働社会保障部)が「最低賃金保障制度に関する規定」を公布し、全国的に展開している。

94年に労働法が制定されたことで、最低賃金制度は以下の通り、明確に規定されることになった。

<労働法>

第48条
国は最低賃金保障制度を実行する。最低賃金の具体的基準は、省、自治区、直轄市の人民政府が制定し、国務院に報告して記録にとどめる。労働者使用単位が労働者に支給する賃金は、当地の最低賃金基準を下回ってはならない。
第49条

最低賃金の基準を確定し、調整する場合は、次の諸要素を総合的に参照すべきである。

  1. 労働者本人および平均扶養人口の最低生活費用、
  2. 社会平均賃金水準、
  3. 労働生産性、
  4. 就業状況、
  5. 地区間の経済発展水準の差異。

最低賃金は、労働者が法定労働時間内に提供した労働に対して、企業が支払うべき労働報酬の最低水準を示すものである。政府、工会、企業の三者代表の民主的な協議により、当該地の賃金の最低水準の状況、物価、労働者のエンゲル係数、平均賃金、労働力の需給状況、労働生産性、当該地の総合的な経済の効果と利益などを基礎に審議され、決定される。最低賃金は、国有企業、集団企業、外国投資企業、私営企業等での賃金に適用されるが、現在、チベットを除く30の省、自治区、直轄市が最低賃金制度を実施し、基準を公布している。各地の最低賃金基準は、以下のとおりである。

各地の最低賃金基準(2004年4月時点)
地区 実施時期 最低賃金基準(元/月)
北京市 2004.4.1 495
天津市 2004.3.1 402-412
河北省 2002.3.1 250-350
山西省 2002.1.1 220-340
内モンゴル自治区 2002.10.1 290-330
遼寧省 2000.3.27 230-360
そのうち瀋陽 2000.11.6 250-380
そのうち大連 2001.11.4 300-420
吉林省 2002.5.1 240-310
黒龍江省 2003 235-390
上海市 2003.7.1 570
江蘇省 2002.7.1 260-460
浙江省 2003.9.1 390-520
そのうち寧波 2003 520
安徽省 2002.7.1 270-370
福建省 2001.10.1 235-450
そのうちアモイ 2000.7.1 330-420
江西省 2000.3.1 190-250
山東省 2002.10.1 290-410
そのうち青島 2002.10.1 380-410
河南省 2003.10.1 240-380
湖北省 2002.1.1 240-400
湖南省 2003.7.11 300-400
広東省 2001.9.1 270-574
そのうち深セン 2003.5.1 465-600
広西省 2001.9.19 305-340
海南省 2001.7.2 300-400
重慶市 2002.10 260-320
四川省 2002.6.28 230-340
貴州省 2002.9.1 260-350
雲南省 2002.7.1 270-360
チベット - -
陜西省 2001.10.1 245-320
甘粛省 2000.3.1 240-280
青海省 1999.10.1 220-260
寧夏回教自治区 2001.12 290-350
新彊ウィグル自治区 2001.10.1 260-460

労働保障部令第21号「最低賃金規定」の施行

労働法に定められた最低賃金の実施を確実に行うため、労働社会保障部は、3月1日から「最低賃金規定」を制定し、管理監督を強化している。「最低賃金規定」は、地方政府が労働者の最低賃金基準を定める際の指針となるものである。新規定に定められた最低賃金とは、労働者が週40時間の法定労働時間、又は法律によって締結された労働契約における労働時間内に、通常の労働を提供したという前提のもとで、使用者が法律によって支給しなければならない最低労働報酬である。

新規定により、最低賃金の基準は、2年ごとに一回調整されることになる。この新規定では、月間最低賃金の基準を確定し、調整する場合は、当地の就業者及びその扶養人口の最低生活費、都市部居住民の消費価格指数、労働者個人が納付する社会保険料と住宅積立金、労働者の平均賃金、経済の発展水準、就業状況など諸要素を参考にすべきであることが定められている。

労働者の提供する労働に対して、使用者単位が労働者に支給すべき賃金は、次の各項を差し引いたのち、各当該地の最低賃金基準を下回ってはならない。

  1. 労働時間延長賃金(超過勤務手当)
  2. 昼間勤務、夜間勤務、高温、低温、坑内、有毒有害など特殊環境条件下での勤務手当
  3. 法律、法規と国の規定による労働者の福祉待遇のためのコスト

新規定では、規定違反に対する罰則が強化されていることや最低賃金の具体的計算方法が明確に規定されていることなど、内容的により厳密な管理の方向を示されているといえる。新規定は3月1日から施行されているが、この施行にあわせて1993年の旧規定である「企業における最低賃金に関する規定」は廃止された。

新規定の93年旧規定からの変更点をまとめると以下の通りである。

  1. 93年規定では対象外であった郷鎮企業も対象となるなど適用範囲が拡大された。
  2. 新たにパートタイム労働者の時給についても最低賃金が定められた。
  3. 最低賃金には、福利費以外の社会保険費、住宅積立金を対象とする。
  4. 最低賃金の見直しは、2年に一度行われる。
  5. 最低賃金の修正は、公布から10日以内に行う。
  6. 使用者単位が規定に違反した場合には、賠償金として最低賃金の1倍から5倍を支払う。

関連情報