高齢者支援のための休日廃止案に労働団体は抗議の声

カテゴリー:高齢者雇用労使関係労働条件・就業環境

フランスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2003年11月

欧州を襲った熱波はとりわけ高齢者を直撃した。猛暑の影響でフランスの死亡者数が例年を1万人以上上回ったとの推計は衝撃的で、シラク大統領はラファラン首相に猛暑の影響と公衆衛生対策に関する報告書をまとめるように求めた。ラファラン首相は10月1日の閣議に「老化と依存」と題する行動計画を提出するために、8月26日から衛生専門家との一連の協議を開始した。

ラファラン首相は、フィヨン社会問題相およびファルコ高齢者担当閣外相とともに、およそ3時間にわたって、公共と民間の高齢者受け入れ組織の専門家と会談した。首相は退職年金改革の時と「同じエネルギー」を動員すると宣言し、ファルコ閣外相も、「手直しやつぎはぎの対策ではなく、真に新しい政策」を約束した。次回以降はテーマ別の作業部会が設置されるが、この日の最初の会合では時間は総括と必要事項のリスト作成に充てられた。そのなかで、首相は世論への影響を測るかのように、1つの観測気球を打ち上げた。すなわち、高齢者対策の財源を拡大するために休日を1日廃止する可能性について言及したのである。

このアイデアは、これによって徴収される社会保険料増額分を、例えば、高齢者の介護に割かれる新しい社会保障部門の資金に充てるというものだ。この方法に最初に触れたのはジュペ国民運動連合(UMP)総裁である。ジュペ総裁は8月24日付の「パリジャン・ディマンシュ」紙のなかで、連帯制度を強化するために特定の財源を持つ第5部門(家族手当、医療、労災、老齢年金に加えて)を創設するべきだと言及した。

先例となるドイツはこの方式により、高齢者対策資金のために数年間で70億ユーロを集めることに成功したという。とはいえ、この提案を実施に移すまでには障害が少なくない。日付の選択が微妙なうえに(メーデーは依然としてタブーだし、宗教的な祭日も問題があるので、5月8日の戦勝記念日が犠牲になる可能性がある)、政治的な象徴性が重要になる。そのため、ラファラン首相は国民的連帯を証明する強力な措置を主張している。

しかし、すでに週35時間制の弾力化を実施した政府にとって、休日の廃止は労働時間短縮の傾向に逆行する明確な事実となるだけに、労働側を説得するのも容易ではあるまい。フランス企業運動(MEDEF)のセリエール会長は、「これまで以上に働くことによって問題を解決しようというアイデアは素晴らしい」と絶賛しているが、労働団体から聞こえてくるのは批判と皮肉ばかりだ。労働者の力(FO)のブロンデル書記長は、「これはソ連の収穫の日を思い起こさせる」、労働総同盟(CGT)のデュマ同盟書記は、「セリエール会長の関心を引く内容ではあるが、高齢者問題を解決するものではない」と手厳しい。

政府が退職年金改革並みの熱意を持って高齢者対策に取り組むと見ている向きは少ないが、猛暑対策が後手に回って多数の死者を出した事態への批判をかわすために、休日廃止のアイデアを強力に推進することになれば、新たな火種を抱え込むことにもなりかねない。

2003年11月 フランスの記事一覧

関連情報