制度の微調整では解決が難しい非常勤労働者失業保険財政

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  • 国別労働トピック:2003年10月

深刻な赤字の累積に悩む芸能関係非常勤労働者失業保険制度。労使はその改革を目指して、4年前から交渉を続けてきたが、6月27日にフランス企業運動(MEDEF)の使用者側と、民主労働同盟(CFDT)、管理職総同盟(CGC)、キリスト教労働者同盟(CFTC)の労働側との間で、補償額の計算方式を改める協約について、ようやく合意に達した。しかし、多数派を占める労働総同盟(CGT)と労働者の力(FO)はこの協約への調印を拒否。さらに、政府の承認手続きに圧力をかけるために、ストによる徹底抗戦を呼びかけた。

このため、夏の風物詩ともいえる各地の音楽祭や演劇祭が次々と中止に追い込まれ、観光地や観光産業は大きな影響を受けることになった。ストには寛容と見られているフランス人だが、一般からかけ離れた有利な制度と組合の強硬姿勢には、必ずしも多くの支持が集まっているとはいえない。

ファッションモデル、振付師、演出家、レジャーパークの司会者、闘牛士、ピエロ、トランペット奏者、ピープショーのダンサー…彼らは芸能関係非常勤労働者制度に所属している以外に共通点がない。2002年には10万2000人がその資格で地域商工業雇用協会(ASSEDIC)から補償を受けた。手当受給者数の急増(10年でほぼ倍増)と収支の悪化(2002年には8億2800万ユーロの赤字)のために、政府も、使用者も、そして非常勤労働者自らも、制度の弱体化につながる制度の濫用を撲滅する必要性に気付いている。

この制度の最も驚くべき特徴は、すべての非常勤労働者が自ら従事している職業を自ら申告し、なんら確認が行われないことにある。ショービジネス企業に雇われるのにはいかなる免許も必要ない。そのため、毎年、1万5000人の新規非常勤労働者が制度を利用するために申し込む。これは、国立舞踊学院、国立音楽院、国立演劇学院、あるいは映画専門学校や各種の芸術専門学校を卒業した者の数の20倍から30倍にも達する。

「濫用はあらゆる部門に見られる悪弊から生じている」ようだ。手当受給者の3分の1近くは映画・テレビ・ラジオ部門に属し、3分の2はアーティストと技術者である。制度の赤字もこれに比例し、映画・テレビ・ラジオ部門で3分の1、ショー部門で3分の2が発生している。

全国商工業雇用協会(UNEDIC)が作成した秘密資料「非常勤労働者採用上位40企業のリスト」を見ると、国営と民間のテレビ・ラジオ局、テレビ番組制作会社、映画制作会社が上位を占めている。

視聴覚メディアには、非常勤労働や「永続的非常勤労働」が広く分布している。年間を通じて賃金を支払わないですむことにより、制作費の節約が可能になるからだ。非常勤労働者の賃金へ組み込まれる不安定雇用手当(少なくとも10%)のために、使用者は7日間のほとんどの時間について高い報酬を支払うが、問題なく容易に契約を終了させることができる。多くの場合、これらの1年契約の非常勤労働者はほかに選択肢もない。法廷に持ち込まれることもまれだ。

番組や映画の制作では、不正も一般化している。それが契約書の起草における単純な修正という形をとる場合もある。例えば、あるカメラマンの場合、月に3811ユーロの割合で20日間続けて働く代わりに、制作会社が月に10日ずつ2回に分けて賃金を申告させ、税引き前3125ユーロの報酬と手取り686ユーロの非課税補償額を提供するというわけだ。使用者にとってはありがたい契約だが、制度の赤字を深刻化させることにもつながる。最もコストのかかる仮定の場合、この公金横領はUNEDICにとって年に1万5000ユーロのもうけ損ないになる可能性がある。

闇労働の存在、超短期間についての賃金の過大申告(非常勤労働者は高い手当を手にすることができる)、手当受給資格である507時間の労働時間を達成するために偽の証明書を発行する仕事場などが、よく見られる不正だ。

発表された措置は十分なのだろうか。書類(退職年金、失業保険、休暇、著作権)の突き合わせは正しい方向へ向かうきっかけになるかもしれないが、調和がとれていない分類法のために技術上の難しさが少なくない。使用者による非常勤労働者名簿の届け出を義務づける制度も一部の不正者の熱意にブレーキをかけるだろうが、果たして根本的な解決につながるだろうか。

労働監督官たちが頼みにしているフィヨン社会問題相は、8月に制作会社の取り締まりを強化すると約束している。不法労働対策局(DILTI)は、労働監督官、関税監督官、税金監督官、社会保障家族手当負担金徴収組合(URSSAF)、憲兵、そして司法官に訴えることができる。しかし、取り締まりは、極めて難しく、監督官を養成する必要もある。DILTIの事務総長は「われわれの目的は罰することではなく、文化部門の雇用を合法的に発展できるようにすることだ」と強調した。

表1
  2002年の非常勤労働者の制度 2002年の失業保険一般制度
被補償失業者数 10万2600人 213万人
拠出者数 13万5000人 1600万人
2002年の赤字 8億2800万ユーロ 37億ユーロ
2003年の予測支出額 10億ユーロ 30億ユーロ
平均日額率 45.31ユーロ 28.66ユーロ
平均補償日数 205日 158日

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