経済移民が急増

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年12月

雇用年金省が9月に発表した統計によると、2000年4月からの1年間にイギリスに入国した経済移民は15万人を超えた。それ以前の4年間は2万人であったのと較べると、その急増ぶりがわかる。技能労働者不足に対応するため、政府が移民政策を転換したことが背景にある。

2000年4月から2001年4月までに入国した移民労働者は15万600人。このうちオーストラリアからが最も多く1万人で、フランス、南アフリカ、スペイン、インドがこれに続く。

アジアと中東からの移民の数は4年間に2倍に増え、移民全体の4分の1を占めるに至った。同地域からは特に女性移民の増大が目立ち、3倍に増えている。インドからの移民は情報技術(IT)分野へ、フィリピンからの移民は医療分野へ、向かっている。

今回増えた15万人の移民のうち8割は35歳以下で、高齢化による年金危機を解決するのに寄与することが期待されている。

移民が増大している背景には、政府の移民政策の転換がある(本誌2002年13月号参照)。近年進められてきた関連法の改正や新制度の導入により、現在イギリスは、経済移民の受け入れではヨーロッパの中で最も開放的かつ効率的な制度を有するに至っている。入国に当たって大半の移民は就労許可制度を利用している。ITや医療など特に人材不足が目立つ分野の申請者は優先され、そうした分野の使用者は、移民の受け入れを申請する前に、欠員を国内の労働市場で賄う努力をしたことを証明する必要はない。

また昨年、高度な専門技能を有する外国人を対象にした「高度技能移民プログラム」(Highly Skilled Migrant Programme=HSMP)が新設された。1.学歴、2.職歴、3.過去の収入、4.就労希望分野での業績、5.一般開業医(GP)特別枠-の5つの得点項目で技能や経験を判定し、75点以上あれば、英国からの求人がなくても入国して自由に求職・就職することができる。

こうした移民制度の経済効果について内務省は、移民を通じて人口が1%増えるとGDPは1.25~1.5%増えるとの調査結果を報告している。また、1999~2000年に移民は25億ポンドの税収増をもたらしてもいる。

今後は、農業、建設、ホスピタリティーなどの分野で必要な低技能労働者を対象にした移民制度の導入が期待されている。

ただ、こうした政府の政策転換によって技能不足が移民によって解決できるようになっていることを知らない企業がまだ多く、政府は情報提供の方法を改善する必要がありそうだ。

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