経済社会審議会:SMIC改革論議で労使が対立

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

フランスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2002年10月

ラファラン首相の要請を受けた経済社会審議会(CES)は、複層化したSMICの一本化を図るために検討を続けてきたが、解決策リストの内容で労使は合意に到ることができなかった。

1998年に週35時間制法(オブリ法)が成立し、労働時間短縮の流れが加速したが、時短による最低賃金の目減りを防ぐために、オブリ法が週35時間制へ移行した労働者の最低賃金を移行時点の週39時間制労働者の最低賃金に固定するように定めたために、その移行時期に基づく複数の最低賃金が併存することになった。この措置により労働者は時短実現後も時短前の賃金水準を保障されることになったものの、制度は複雑化し、全業種一律最低賃金(SMIC)が年々引き上げられることによる不公平の拡大を指摘する声も高まっていた。

労働部と経済情勢部とを統合した特別委員会はリストを作成するために、2日間にわたって作業を続けた。しかし、最低賃金制度の抜本的な改正を求めるフランス企業運動(MEDEF)の姿勢は強硬で、労使の対立がしばしば作業を中断させた。

ナンバー2のドゥニ・ケスレール氏が率いるMEDEFの代表は自分たちの案を反映させることに固執した。「適合しなくなった」SMICを年間基準賃金(利益分配と資本参加を除くが、諸手当を含む)にすることがその案の骨子だ。さらに、その評価はもはや当局ではなく「独立委員会に任せ、「無資格労働者の生産性上昇率と雇用への効果に応じて」行うべきだと提案した。しかし、特別委員会の委員長クリスチャン・ラローズ氏(労働総同盟(CGT)繊維連盟書記長)は、「首相の提案は1970年1月2日の法律によって導入されたSMICそのものを問題にすることではなかった」と反論し、MEDEFの批判を遮る形で、オブリ法の導入とともに消滅した単一最低賃金へ復帰するために、3つのシナリオが作成された。

使用者側によって主張された第1のシナリオは、あらゆる新規のGRM(週35時間制へ移行した労働者へ適用される「月収保障」)を廃止し、法律が定めているように2005年に5つの既存のSMICの一本化を実現し、2009年の新規の単一保障を根拠のないものにすることで構成される。報告書には、「この解決策は、2009年に9.9%に達する時間あたりSMICに必要な政治加算額を限定できる」が、「週35時間制移行企業の賃金抑制を長期化させる不都合がある」と記されている。

第2のシナリオは、2002年に到達する水準で凍結されるGRMを経由して、2005年から2007年に段階的な移行を目指す。このシナリオも、労働者の「大幅な購買力の喪失」を導くことになる。したがって、委員会は、2003年との比較で予測される2003年の11%のSMICの時間率引き上げとGRMの最も高い水準を一致させる第3のシナリオを選好する姿勢を隠していない。一方で、報告書は、小規模企業のために、この上昇分は社会保険料の軽減によって補われなければならない」と述べていた。

「SMICと労働時間の短縮:分裂から収斂」と名づけられた40ページにわたる報告書は7月4日に、賛成22票で内容が採択された。使用者側では、手工業者連盟(UPA)は賛成票を投じたが、MEDEFは反対に回った。労働側も、キリスト教労働者同盟(CFTC)と管理職総同盟(CGC)は棄権した。

このあと、問題は総会に移され、ここでも労使が激論を戦わせたが、MEDEFに第3のシナリオを受け入れる余地はなく、結局話し合いは物別れに終わった。

フランスでは、200万人以上(13.9%)の労働者が最低賃金に基づく報酬を受け取っているが、その3分の1以上は従業員10人未満の企業で働いている。

関連情報