低資格若年者のための雇用促進策を策定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年10月

ラファラン内閣は、7月1日、フィヨン社会・労働・連帯相の提出した新たな若年者雇用促進策である「企業での若者(Jeunes en Entreprise)」法案を閣議決定した。この法案はかねてよりシラク大統領の選挙公約でもあったもので、ジョスパン政権が策定した「若年者雇用促進計画」による期間限定的な公共部門を中心とした若年者雇用促進策とは対照的に、民間企業での期間の定めのない社員(CDI)としての採用を促進することで、低資格若年者の雇用の促進・定着を図るものである。

低資格の若年者の雇用促進・定着を図る

本法案は、かねてよりフィヨン社会・労働・連帯相がアナウンスしていたとおり、学業に挫折した若者、具体的には「職業資格レベルⅤ若しくはそれ以下の者(注1)」という最も低資格の若年者(16~22歳)に企業への就職の機会を与え、社会からの孤立を避けることを目的とした雇用促進策である。学業のドロップアウトから就職までの間に期間が空くことが社会的孤立につながるとの考えから、16歳という低年齢から本措置の対象としている点が注目される。

これらの若年者を雇い入れた企業は、雇用2年目までは雇用主負担分の社会保険料の全額が、3年目には半額が免除される。ただし、この助成措置を受けられるのは従業員250人未満の企業又は事業所に限られる。その際の採用形態は、無期限労働契約(CDI)に限定されており、このことにより、解雇規制の厳しいフランスでは、一旦採用された若年者が当該企業に定着することが期待できる。この点、公共部門を原則とし、契約期間が終了すれば大部分は再び失業者となってしまう、ジョスパン政権の下で策定された「若年者雇用促進計画」(本ニュースレターNo.01-004参照)とは対照的であるといえよう。ただし、逆に企業側は採用に慎重となり、その分入り口は「若年者雇用促進計画」に比べ厳しくなることが予想される。

同法案の議会での審議は近日中に開始され、8月1日の可決成立が予定されている。

MEDEFには不満も

政府は、本施策により将来的には約30万人の若年者雇用創出が可能とみている。しかし、現時点で25歳以下の失業者数が39万人弱であることを勘案すると、この目標値は少し楽観的に思われる。

本施策に要する国の費用負担は、2002年は2500万ユーロ、2003年は1.9億ユーロ、2005年には5億ユーロを見込んでいる(3年にわたる措置で利用者が累積するため)。

本法案について、経営者団体の仏企業運動(MEDEF)は、本施策が職業訓練援助とセットとなっていない点を挙げ、低資格者の資格向上を促進する措置が含まれていないことに不満を表明している。

CAPは、コレ-ジュ(我が国の中学校に相当、小学校が5年制のため4年制)の第5学級(コレ-ジュの2年生に相当)終了の時点で14歳に達してしまった者(フランスには小学校段階から落第がある)、又は調整第4学級(3年生に相当する第4学級に成績不良にて進めなかった者が進むコース)に入っている者を対象に、3年間一般教養と職業教育の授業を行い、試験に合格した者に与えられる資格。一般にBEPより高度な専門的技能を持つとみなされる。

BEPは、第3学級(コレ-ジュの4年生)修了者に2年間職業教育を行い、修了者に与えられる資格。そのうち優秀な者には技術リセ第1学級(リセの2年生)への編入が認められる。ただし、BEPは団体協約の認定外の資格であるため、これだけでは技能保持者とは認められない。

CAP、BEP保持者は、一般には熟練工としての道を歩むことが想定されている。

法案の概要 対象・措置内容

  • 期間:無期限
  • 対象者:16~22歳の若年者職業資格レベルV(CAP職業適性証、BEP職業学習免状の所持者、及びバカロレア(大学入学資格)を持たない者)もしくはそれ以下の者(無資格者)この措置は、職業資格のレベルを理由に労働市場参入が最も困難な若者を対象とする。〔職業資格別若年者の失業率:無資格33.1%、第一段階初等免除(リセに進学できない者)24.8%、CAP/BEP16.4%、バカロレア13.5%、バカロレア+2年(短大、専門学校レベル)8.7%〕
  • 対象企業:全国商業工業雇用協会連合(UNEDIC)に加盟する従業員249名以下の全ての企業又は事業所
  • 採用形態:フルタイムまたはパートタイムでの無期限労働契約(CDI)に限る
  • 国の援助:社会保険料を3年間減免、最初の2年間は100%、3年目は50%の減免。
  • 企業での経験の既定承認:業界別労使により様式を規定する
  • 対象者人数:年間での利用見込み人数(3年間の措置のため累積していく)
2002年 2003年 2004年 2005年
18,000人 74,000人 144,000人 204,000人

国による援助

  • 国からの援助は、月額225ユーロの一定金額とし、オブリ法、ジュペ法などその他の助成金と重複受給可。225ユーロとは週35時間で労働する月額最低保証賃金の1147.52ユーロの雇用主負担金分である。
  • 賃金の幅によって、援助金額も増えるが、その一覧表はデクレにより規定される。
  • この措置は雇用主負担分の社会保障の軽減措置の全体的見直しを予示する。低賃金労働者に関する負担を少なくし、資格の低い労働者の採用を支援することを優先する。
  • またこの措置は週労働時間35時間の企業と39時間の企業の扱いを平等とすることを尊重したシステムとなっている。
  • 国の費用負担は2003年は1.9億ユーロ、2005年は5億ユーロ。2002年に関しては施行を7月1日とし2500万ユーロの負担見込み。
  • 労働・雇用・職業訓練局がこの措置のフォローを行う
  • 管理運営はUNEDICが行う

措置にかかる手続

  • 企業の若年者契約については法律によって規定される。
  • 若年者契約は企業での若年者採用を鈍化させないために、7月1日より遡及的に適用する。
  • この措置は首相の政策全般に係わる演説によって発表されており、臨時国会において採択される。

今後の予定

元老院の社会問題委員会: 聴取会7月11日、審議会7月17日

国民議会:聴取会7月23日、審議会7月30日

労使調停委員会 8月1日

元老院審議8月1日

国民議会審議8月1日

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