最高裁、障害者差別と先任権との間の優先順位を示す判決

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年7月

身体・精神的な障害を理由とする雇用差別に関する基本法である、障害を持つアメリカ人法(ADA)は、障害を持つ労働者が、他の点では資格要件を満たしている場合、職場環境の整備などの「合理的な便宜」をはかることを求めている。最高裁は、2002年4月29日の注目された判決で、大抵の場合、障害を持つ労働者に対し、より高い先任権を持つ労働者が通常配置される職種を使用者が提供する義務はないとした。

賛成5対反対4の判決は、一時解雇が増加している最近のような状況に重要な意味を持つ先任権と「合理的な便宜」のどちらが優先するのかを示したものである。ブライヤー判事は多数派意見の中で、通常、「合理的な便宜よりも先任権が優先される。しかし、ADAによる保護を求める労働者が、より高い先任権の者が就くことになっている仕事を何らかの特殊な事情のために、要求することを妨げるものではないと述べている。この判決は、障害者側、使用者側双方の弁護士に、大変、理にかなっている判決と受け止められている。

審議された件で、USエアウェイズ社の貨物部門で働くロバート・バーネット氏が腰痛を起こし、同氏は郵便室への異動を希望していた。同室は先任権の高い従業員が優先的に配属される部門であったことから、US社は、同氏を郵便室に仮配属したものの、正式な配属とはしないまま、事実上は、「職務上の傷害による休暇」を与えた。これに対してバーネット氏は、同社がADAの定める障害者への「合理的な便宜」をはからなかったとして1994年に提訴、カリフォルニア地裁は、略式判決でUSエアウェイズ社の主張を支持したが、サンフランシスコの連邦巡回控訴院は、障害者に便宜をはかるために先任権に例外を設けるべきだとしてバーネット氏の訴えを認める逆転判決を言いわたしていた。

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