貧困との戦い
―栄養失調と退学率が深刻な問題に

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年6月

UNICEFが3月に公表した統計によると、世界の3分の1、1億5000万人の子供達が栄養失調に悩まされているという。その多くがサブ・サハラ地域と南インドの子供達であり、インドネシアも全児童の25%以上が栄養失調であることが明らかとなった。更に学生の退学率も高くなっており、インドネシアが貧困から抜け出すには教育などの根本的な改革が必要とされている。

680万人の新生児が栄養失調

インドネシア小児科医協会の調査によると、2001年に生まれた8500万人の新生児のうち680万人(約8%)が栄養失調状態、そのうち180万人がひどい栄養失調、残りの500万人は食品摂取量の不足であるということが明らかとなった。栄養失調の児童は抵抗力が弱いため感染症にかかりやすく、健康な児童に比べて死亡率が非常に高い。仮に生き延びられたとしても成長の度合いが遅く、病気になりやすく、十分な栄養素を採取することができない、といった悪循環から抜けきれない。小児科医によると、児童の栄養失調は身体的のみならず精神的な成長も妨げてしまう効果があるという。

また、世界保健機構(WHO)の1998年の統計によると、5歳児以下で死亡した児童1220万人のうち、半分以上の660万人が栄養失調かそれに伴う要因で命を落としてしまうということだ。

貧困に加えて、(母子共に)教育レベルが低く、医療サービスへのアクセスが不十分であることも子供達を栄養失調にしてしまう要因となっている。また、インドネシアの場合、母乳で育てる母親が非常に少なく、母乳で育てられていた新生児は63%のみ、しかもこの割合は子供の成長と共に減少し、6カ月新生児に至ってはたった6%しか母乳を飲んでいないことが明らかとなっている(UNICEFの統計による)。

西ジャワ州で1万4000人の児童が退学を余儀なくされる

西ジャワ州のチアミスで、約1万4000人の小学・中学・高校生が、親の経済的事情により退学に直面している。チアミスの国家教育局のアアス局長によると、特に女子生徒の約60%が退学の意向を示しており、すでに4000人が退学手続きをとったということだ。彼女らの家庭の経済的な状況もさることながら、現地の工場等では高学歴の女子労働者を雇いたがらない傾向があるため、と同局長は分析している。特に農村部では、女性が教育機会を与えられても最終的に結婚してしまうのだから教育は不必要という概念が強く、女性が進学することに抵抗が根強く残っているそうだ。

教員数も大幅に不足、教育制度の改革が必要

また、チアミスの両隣の都市であるチレボンとインドラマユにおいては、教員の数が絶対的に不足しているという。インドラマユでは小学校に4000人の教師が、チレボンでは800人がそれぞれ不足しており、行政側は採用活動を活発化する方針だ。

教員は公務員の一員として、長い間非常に低賃金で教育に従事しなくてはならず、地方によっては最低賃金以下の給与しかえられない。「貧困を抜本的に改革しようとするならば、教員に月100米ドルの月給を与え、2000万人の教員職を政府が用意すれば、2015年までには貧困は大幅に削減するだろう」とある研究者は述べている。

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