連邦最高裁、雇用差別申立時には直接証拠は必要なしと判示

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年6月

連邦最高裁は2002年2月26日、全員一致で控訴審の判決を覆し、雇用差別訴訟原告の労働者が使用者に対する申立を容易にする判決を示した。連邦最高裁は、使用者が労働者による雇用差別訴訟の棄却を求めて争った場合、労働者が雇用差別の直接の証拠(目撃者の証言など)を示す必要はないとした。直接証拠は、後の証拠開示手続きの際に用意されることが多く、訴訟に値するかどうかを検討する初期段階に直接証拠を原告に要求するのは適当でないと判断した。年齢、性別、人種などによる雇用差別については、申立をする時点では、証拠となる書類などを揃えることは困難であるため、この判決は重要なものと考えられている。

原告のハンガリー国籍の男性は、89年に53歳で上席副社長として、ニューヨークに本社がある再保険会社ソレマ社(フランス企業Scor社傘下)に採用された。しかし6年後に降格され、より若いフランス人が同氏の職務の大部分を担当することになった。この人事に抗議したところ、同氏は解雇されたため、同氏は国籍による差別を受けたとして地裁に提訴した。しかし地裁は、国籍による雇用差別があったとする一応の証拠が十分ではないとして訴訟を棄却、控訴審もやはり訴訟を棄却していた。

ベライゾン社、妊娠による雇用差別で和解

雇用機会均等委員会(EEOC)は2002年2月26日、ベライゾン社の前身、ナイネックス社およびベル・アトランティック社が、妊娠休暇あるいは出産休暇を取った現・元従業員に対する雇用差別を行ったと主張する集団代表訴訟原告と和解したと発表した。この和解により、65年7月2日~79年4月28日に妊娠あるいは出産休暇を取った、もしくは65年7月2日?83年12月31日に育児休暇を取ったことがあり、しかも、1994年1月8日以後の少なくとも一時期にベル・アトランティック社またはナイネックス社(現ベライゾン社)と雇用関係にあった北東部・東部13州とコロンビア特別区の何千人もの現・元女性従業員に、これまでは支払われていなかった給付が支払われる。

新たな給付総額は何百万ドルにも上ると予想され、EEOCによると妊娠に関連した雇用差別の和解金額としては最大級である。和解によると、妊娠一度につき各原告は、休暇時期に依存して決まる2週間?7週間のサービス・クレジット(勤続期間を反映し、年金受給資格の有無や年金額を決定するのに用いられる。)を獲得するほか、早期退職勧奨に応じる機会を逃した原告は、さらに12週分のサービス・クレジットを獲得する。

EEOCは、上記期間に妊娠・出産休暇や育児休暇を取った女性従業員に対し、被告2社がサービス・クレジットを与えておらず、公民権法第7編、妊娠差別法などに違反するとして、ニューヨーク州の連邦地裁に訴えていた。ベライゾン社のスポークスウーマンは、同社は関連法を遵守しているので雇用差別との主張はあたらないが、何年にもわたる訴訟や調査を経て、和解が原告、被告双方にとって最も有益と判断したと語っている。

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