経営側トップ、総選挙でのSPD政権継続を予測

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年7月

2002年秋に連邦議会選挙(総選挙)を控え、 その見通しについての各種世論調査結果の報道が少しずつ本格化する中で、 ハンデルスブラット紙がドイツの経営側トップを対象とする調査を行い(1999年3月以降毎月行っている)、 その圧倒的多数が社会民主党(SPD)を主軸とする現政権の継続を予測する結果となった。

今回の調査は、 ハンデルスブラット紙の委託を受け、 プセフォス選挙調査・社会科学研究所が2001年4月2日から17日の間に804人のドイツ経営者のトップを対象として行ったもので、 このうち87%が2002年秋の総選挙後もシュレーダー首相が引き続き首相として政権を運営すると予測し、 政権交替を予測したのは8%にすぎなかった(分からない・無回答が5%)。 SPD政権の継続を予測した経営側トップは、 2000年3月の調査では59%であり、 2000年10月の調査では80%だったから、 この1年の間にシュレーダー政権継続の予測は大きく進展したことになる。

ただ、 SPDの連立の相手としてはどの政党かということでは回答は分かれ、 46%が現連立政権の一翼を担う90年連合/緑の党と回答したのに対して、 41%は現在野党の自由民主党(FDP)が相手になると回答した。 最近になってFDPの人事刷新があり、 SPDとFDPの接触も伝えられており、 もし経営側トップ41%の予測が実現すると、 1982年にヘルムート・シュミット(SPD)がヘルムート・コール(CDU)に政権の座を明け渡して以来のこととなる。

このような高い政権継続予測にもかかわらず、 政府の業績に対する評価は必ずしも高くはなく、 5段階評価(1:大変良い、 2:良い、 3:普通、 4:悪い、 5:大変悪い)で、 政府全体に対する評価は3.3だった。 主要閣僚に対する評価は、 シュレーダー首相(SPD)3.0, アイヘル蔵相(SPD)2.9、 フィッシャー外相(緑の党)3.1, リースター労相(SPD)4.0だった。 これから見ても、 リースター労相に対する経営側の評価はかなり低い。

ただ、 野党の中心であるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)にたいする評価は3.8であり、 SPDに対する評価よりかなり低く、 アンゲラ・メルケルCDU党首に対する評価も3.4, フリードリヒ・メルツCDU・CSU院内会派代表に対する評価も3.8で、 かなり低くなっている。 FDPに対する評価は3.3で、 CDU・CSUより高くなっている。

ドイツの政治情勢を概観すると、 CDU・CSUの保守政党は、 コール前首相の献金疑惑以来国民の批判にさらされ、 人事を刷新して初めての女性党首を選出したが、 メルケル新党首のもとでもさしたる党勢の回復を見せておらず、 他方、 シュレーダー首相はSPD左派のラフォンテーヌ前党首兼蔵相との権力闘争に勝利し、 経営側からの批判を受けながらも現実路線を進め、 税制改革、 年金改革、 経営組織法改正等の重要案件で、 着実に実績を積み上げている。 今回の調査結果からは、 このような情勢の下で経営側が現政権の継続を予測せざるをえない状態になっていることが看取され、 来年の総選挙を控えて、 今後の同種の調査の動向も注目される。

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