AFL-CIO冬季執行評議会

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年5月

2001年2月10日から15日にかけて、ロサンジェルス市でアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)冬季執行評議会(注1)が開催された。同評議会は、ブッシュ共和党新政権発足後初めての定期評議会である。

概要は以下のとおり。

1 組織拡大

2000年の組合組織率が13.5%と過去最低を記録したことから、組織拡大のための議論に多くの時間を割いた。

2000年にAFL-CIOにより、新たに組織された者は40万人で、1999年の年の60万人に比べ明らかにペースダウンしており、危機感を募らせた。傘下組合間での格差も大きく、サービス労組が11万9,000人増、教師連盟が4万5,000万人増、州・郡・市労組が1万7,000人増と大幅に伸ばした一方、自動車労組が1万5,000人減、鉄鋼労組が9,000人減と逆に組合員数を大幅に減らした。

2001年の組織化方針としては、全体で100万人の新規組合員の獲得を図るため、AFL-CIOとして、傘下組合が取り組む①組織化支援のための機構改革、②産業・坤域の組織化ターゲットに関する戦略調査、③複数組合による組織化キャンペーン、④オルガナイザー(組織拡大を図る人材)の確保・訓練を援助するとともに、⑤VOICE@WORKキャンペーンを通じて組織化のための環境整備を図ることとした。VOICE@WORK又は、地域の活動家、宗教家、政治家等を巻き込み企業の反労組活動の周知を図り地域社会から組織化支援を得ることを目的とした戦略で、2000年はこれによる100の組織化キャンペーンを実施する。

また、大規模組織化のターゲットとしては、現在ロサンジェルス国際空港、サンフランシスコ空港で行っている多数組合による組織化キャンペーンを他の空港に拡大し、小売、飲食店、雑役、赤帽、レンタカー会社等で従事する労働者の横断的組織化を図り、また、フロリダ、ジョージア、ルイジアナ、テキサス、ケンタッキーといった従来組合勢力の弱い南部州の組織化を進めるため、組織化スタート資金として100万ドルを投入する。

2 政治活動の強化

メディケアの薬剤費への適用、患者の権利法の成立、最低賃金の引上げの3点を最重点に、政府、議会に積極的に要求する。共和党政権、共和党支配の議会という状況の下では、組合は防御的にならざるを得ないが、レーガン政権時代に行ったように州の立法行為や団体交渉を通じて組合のアジェンダを積極的に推進する。例えば、州法によるメディケア対象者への薬剤費支給、州家族医療休暇の拡大、州最低賃金の引上げを求めることや、労働協約により人間工学基準め具体化を図ることなどを行う。

選挙キャンペーンに関しては、2000年11月の大統領・議会選挙では敗北(ゴア候補を支持)したものの、組合の取組は大きな成果を納めたと総括。前回選挙に比べて新たに230万人を選挙人登録し、全投票者に占める組合員家族の割合を3ポイント増加させ26%とした(組合員家族は2対1の割合でゴア氏に投票)。

なお、今回の執行評議会には、チャオ新労働長官も出席し、AFL-CIO幹部と意見交換を行った(秘密会)。

会談後の記者会見で、チャオ長官は会談の中身について言及は避けたが、組合の関心を聴き学ぶことが目的であるとし、有意義な会合であったとした。

組合関係者によると、組合幹部から様々な要望が出されたが、新長官からは、組合とブッシュ大統領との運絡役としての役割を果たしたいこと、政策決定に際しては事前に組合と議論する機会を設けることを約した。

3 減税政策

ブッシュ大統領の提案する減税案(1・6兆ドルを掲げているが、諸調整を行うと2.6兆ドルにのぼるとする)は、財政黒字の大半を富裕層に回し、医療、住宅、教育、社会保障への公共投資に何も残さないもので、道徳的に間違いであるとする(例えば、減税全体の24%を占める不動産税の廃止は、上位1%の高所得者層に88%を還元し、下位80%の中低所得者層には1%を還元するのみ)。

AFL-CIOは、メディケアの薬剤費適用に3,750億ドル、学校の近代化に1,850億ドル、1,200万人の成人・児童へのメディケア適用に3,150億ドル等の公共投資を行うとともに、次の減税を行うよう提案する。

  1. 繁栄の配当金:全ての成人、子供1人当たり400ドルを支給する(年間計1,100億ドル)。
  2. 所得税減税:5,700ドルまでの所得について非課税とする〈年間計450億ドル)。
  3. 児童税額控除:子供1人当たり1・000ドルを税額控除する(年間計440億ドル)。

4 移民政策

2000年2月の執行評議会で歴史的転換を図った(注3)移民政策を推進するため、次のような新たな取組を進める。

  1. 法律が移民の貢献及び権利を尊重するようにこ公共政策を変更するよう闘う(安全衛生・雇用差別禁止等の現行法令の)履行、地域社会や職場に貢献している違法移民への合法的地位の付与、1-9制裁(事業者による労働資格の検証)の廃止を求める)。
  2. 移民に対する偏見や誤解を解消するため組合員や地域社会において移民問題に関する広範な教育を行う。
  3. 組合、移民、移民支持者の強固で永続的な絆をつくるための地域の活動を推進し、移民にその権利を積極的に周知する。

5 国際政策

1998年にILOが採択した労働の基本原則及び権利に関する宣言に関する労働者の権利を周知するため、世界148カ国の職場、組合事務所、政府事務所に周知用のポスターを掲示する運動を、国際自由労連(ICFTU)加盟労組221組合(148カ国、労働者1億5,500万人)とともに展開する。

参考

『月例海外情勢報告』(厚生労働者国際課海外情報室)2001年3月

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