従業員の遺伝子検査を実施した鉄道会社がEEOCと和解

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年5月

雇用機会均等委員会(EEOC)は、バーリントン・北サンタフェ鉄道会社が、従業員に受けさせている遺伝子検査を中止させるため、アイオワ州北地区の連邦地裁に2001年2月9日に提訴した。テキサス州フォートワースの同鉄道会社の広報担当者によると、同社が全国的に実施している政策として、従業員に対し遺伝子検査を受けるように要求し、「職務内容と関係なく」手根管症候群(反復的な動作による手首の傷害)にかかりやすい遺伝子特性を持っているか調べている。

EEOCは、提訴に踏み切った理由として、同社のプログラムが、従業員のプライバシー権を侵害していること、さらに、雇用の継続と遺伝子検査とを結びつけていることから障害者に対する差別を禁止した法律に違反していることをあげている。EEOCによれば、従業員は遺伝子検査について知らされておらず、検査への同意を求められてもいない。また、EEOCによると、少なくとも1人の従業員は、血液サンプルの提供を拒否したため、直ちに解雇すると脅されている。EEOCは、血液サンプルの提供を拒否した従業員に対する懲戒処分を撤回させる裁判所命令を要求している。ただし、同鉄道会社の広報担当者は、遺伝子検査は義務的なものではなく、検査を拒否した者を懲戒処分にしたこともないと述べている。

米国では、何社が遺伝子検査を参考にして採用や解雇の決定をしているか明らかではないが、遺伝子の塩基配列と病気との関わりが次第に明らかにされつつ現在、使用者が医療費削減のために遺伝子検査を利用することが増えるのではないかと懸念されている。米国経営者協会が2000社以上を対象に行った調査によると、7社だけが遺伝子検査を行ったと回答したが、約16%の回答者が労働災害にあいやすいかどうかを検査 (これは遺伝子検査でないかもしれない)している。

2000年2月には、クリントン大統領が大統領令で、連邦職員に対し、遺伝子情報に基づく差別を行うことを禁止し、約24州でも同様な措置が取られている。国会では、遺伝子情報による差別に関する措置を検討し始めたが、立法には至っていない。EEOCは、遺伝子検査に関する調停を既にいくつか行っているが、EEOCが遺伝子検査に関して訴訟を起こすのは、これが初めてである。

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