シャングリ・ラ・ホテルのスト泥沼化、バリでもホテル・スト発生

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年4月

2000年年末から続いているジャカルタ市のシャングリ・ラ・ホテル労使紛争(本誌2001年3月号参照)は、2001年1月15日に、労組側がホテルを提訴する方針を固めた。

2000年12月22~26日のストに参加したシャングリ・ラ・ホテル独自の労働組合(SPMS)の組合員は420人で、全員が解雇処分を受けている。SPMSはこの措置を、労働者の団結権を認めた「2000年第21号労働組合法の第28条」に違反するとし、提訴の法的根拠とする予定。仮に経営側が有罪となった場合、1~5年の禁固刑および1億(1万526米ドル)~5億ルピア(100ルピア=1.18円)の罰金が科される。

経営側はすでに解雇した労働者に対して、1カ月半から4カ月の基本給を解雇金として支払いを済ませている。たとえば、皿洗い等の労働者は月額28万ルピアで、これは州の最低賃金である38万4000ルピアを下回っている。この点に関して経営側は、最低賃金を下回った給与の支払いは行ってないと主張、交通費に関しても平均10万ルピアを支払っていると述べている。

1月18日に行われた「労働と社会福祉に関する第6審議会」の公聴会でも、経営側と労働者側との話し合いがもたれたが、結局合意には至らなかった。

その後、オーストラリア労組評議会(ACTU)のバロー議長が、1月に開催されたスイス・ダボスでの世界経済フォーラムに出席した際、世銀のウォルフェンソン総裁に、シャングリ・ラ・ホテルの労働紛争への介入を求めたことが明らかになった。ACTU側は、経営側が労働者の権利を冒涜しているという見解を見せている。

バロー議長が世銀総裁に介入を求めてきた要因として、この労働紛争が予想以上に長引いているという点と、シャングリ・ラ・ホテルが1992年に世銀と地元民間コンソーシアムが融資した資金によって設立されたという経緯があるためと見られている。

ホテル側は依然として、ストに参加したシャングリ・ラ・ホテル自立労働組合(SPMS)組合員420人の解雇処分を取り消しておらず、解雇者に関する取り扱いについての国会からの提案も拒否している。

シャングリ・ラ・ホテル従業員1200人のうち900人は SPMS組合員。SPMSは国際食品労連(IUF)に加盟しており、IUFから2000万ルピアの支援金を受けている。

バリのホテルで働く数千人の従業員が抗議デモ

ジャカルタのホテル・ストに続き、バリ全域でも、観光業界で働くおよそ1万人の労働者が、バリ、デンパサールのマルガラナ・ニティ・マンダラにおいて2001年1月31日、抗議デモを行った。彼らは、カルティカ・プラザ・クタ・ホテル(HKPK)の経営者との間で紛争が未だに解決していない従業員に賛同し、かれらと団結して抗議デモを行ったものである。

この抗議デモ行動は、いまだにHKPK経営陣との間の紛争を首尾よく解決できないでいるバリ労働省とバリ知事に対して行われた。その間、バリ地方政府とバリ労働省地方局は、ストライキ行動がさらに続くまでは、仲裁に入る時機ではないと判断した。「もしも1週間以内に解決しない場合には、われわれはもっと大規模な抗議デモを行うことになるであろう」と、バリ観光労働組合地方支部役員会会長ニュマン・ナダヤナ氏は述べた。

HKPK 従業員のデモとストライキは、2000年12月18日から始まった。その時、従業員は、輸送手当、イドルフィットリ祝祭手当(THR)、さらに年間ボーナスの引き上げを要求した。この中の最初の2つの手当、すなわち輸送手当とTHRの引き上げに関してはすでに会社側との合意を得たが、年間ボーナスに関しては、会社経営が現在、赤字状態なのでいまだに合意に達していない。すなわち当該ホテルの従業員による要求が未だ満たされていないため、抗議デモが行われたのである。

デンパサール市観光労働組合地区支部役員会会長マデ・サラ氏率いる、従業員の代表7人が、バリ州知事代理グスティ・バグス・アリット・プトラ氏のもとを訪れ、バリ州知事デワ・マデ・ベラサ氏と、抗議デモ参加者全員との対話集会の準備をしてくれるよう要求した。

しかし、知事は支障があるので、もしも上記の行動がバリの観光イメージを壊さないように、観光倫理に従って行われる場合に限り、知事代理のアリット・プトラ氏がバリ労働省地方局長と同席して全従業員と対話する用意がある、としてプトラ氏が対話集会に赴いた。この対話集会の中で、ナダヤナ氏は、現在に至るまで、経営幹部は、特に観光部門において、ホテル従業員と経営者側との労使関係の問題の処理に関して積極的とはいえなかった、と述べた。

バリのバドゥン県労働局長のケトゥット・メダン氏は、バリの観光業界で働く労働者と経営者側との紛争は、経営者側の指導力の低下が原因で発生したものである、と述べた。経営者側は、従業員の厚生福利の問題に対し熱心ではないとされている。

さらに、バリのホテル従業員の間でストライキが発生したり、民主化運動が起こったのも、仕事の条件に関する従業員側と経営者側の間のコミュニケーションの欠如が原因とされている。仕事の条件に関する、従業員と経営者側との意見交換が率直な形で行われることになれば、調和のとれた労使関係が実現することになるであろう。

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