(香港特別行政区)熟練労働者不足、海外投資家の懸念材料

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年4月

香港の労働市場は依然として回復傾向にあり、人口統計局が2001年1月16日に発表した統計によると、10月・12月期の失業率は4.5%で、前期比で0.1ポイントの低下となり、失業者数は15万1000人で、こちらは第3四半期の15万7100人から6100人減少した。他方、不完全雇用率は2.7%で前期と同じであり、不完全雇用者数は9万300人から9万1000人に僅かに増加した。政府スポークスマンは、このような労働市場の改善は景気の強力な回復基調に裏打ちされていると述べている。

このような景気・労働市場の回復にもかかわらず、香港における熟練労働者の不足が、外国企業が香港に投資するのを躊躇する懸念材料になっているとの声が、最近有識者や立法会議員から上がっている。

香港科学技術大学経済開発センター所長のフランシス・ルイ教授は、ヨーロッパの携帯電話会社の幹部から、香港の技術者不足のために投資を控えている事実を伝えられたことを報告している。同教授は、2005年までに、香港は中等教育以下の教育しか受けていない余剰労働力が13万人になり、深刻な熟練労働者不足に見舞われるだろうと述べている。同教授はそれまでに、8万人の中等教育の上級程度以上を終了した労働者と3万5000人の大卒労働者が必要になるとしている。また同教授は、香港の労働者の教育向上を図るとともに、熟練労働者を海外から導入する必要性を強調し、その理由として、これらの熟練労働者の方が高い購買力を有し、香港経済の底上げにも有益だからだと述べている。

また、観光業界を代表する自由党のハワード・ヤング立法会議員は、ある外国の多国籍企業が香港の熟練労働者不足を理由に、最近拠点を上海に移した例を報告している。さらに、労働側代表の立法会議員リー・チュク・ヤン氏は、香港のニュー・エコノミーは今後技術部門の産業にリードされるのは確実であるのに、政府も経済界も雇用者の再教育・訓練に投資することが余りにも少ないとしている。それゆえ同氏は、労働者に有給で再教育のための休暇を与える使用者に対して補助金を出すように、政府に要請している。

最近ハイテク関連の熟練労働者として香港に帰還する移入者が増加していることが報告されているが、この問題と並んで熟練労働者確保の問題は、今後も香港で論議されることになろう。

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