「賃金交渉試行規則」がスタート

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年4月

計画経済時代の中国では、企業の賃金水準は、すべて中央政府が統一的に管理していた。改革開放以降、利益配分に関する企業の自主権が拡大されてきたが、従業員の経営や意思決定への参加あるいはモニターリング体制の確立が遅れているため、近年では、利益配分の不平等や格差の拡大などの社会問題が顕著になり、労使紛争も多発するようになった。

非国有企業は、改革開放以降、急速なスピードで発展してきた。しかし、一部の非国有企業では、勝手に従業員の賃金を減額したり支払いを遅延したりしている。これによって引き起こされた労使紛争の案件も直線的に上昇している。たとえば、大連工業開発区は、初期に起きた50件のストライキ事件を調べたところ、うち70%以上が従業員の処遇が低すぎたこと、あるいは賃金のピンハネによるものだと分かった。賃金問題は、企業の労使問題の中でも、ひときわ目につく事柄である。

1994年に公布した「労働法」では、企業の労働組合が労働者を代表して、賃金、労働条件および労働保険などの問題について、企業側と交渉すると定めている。1995年と97年に、労働部は「団体契約規定」と「外資企業賃金団体交渉の指導意見」を公布し、企業の賃金交渉をより具体化させた。それをうけて、全国総工会は、「賃金団体交渉指導意見」を打ち出し、各企業の労働組合(工会)に対して、団体交渉の具体的な内容などを発表した。また、全国総工会は、指導グループを設立し、賃金交渉を2000年の重要な仕事とした。

この一連の動きを踏まえて、2000年10月10日に、労働社会保障部は、「賃金団体交渉試行規則」(原文は「工資集団談判試行弁法」)を可決し公表した。これは、賃金交渉制度が法・制度的に確立されたことを意味している。

賃金団体交渉制度は、すでに幾つかの省と市で実施されている。江蘇省の総工会は、労働行政部門に協力して、労使関係の三者協調制度を発足させ、団体交渉を共同で指導している。上海市では、2000年から250社の外資企業の中に団体交渉を導入した。2001年から、さらに新たに250社を試行対象にすることを指定している。福建省総工会と省の労働行政は、1999年から賃金契約の様式を作成し、賃金団体交渉についての通達を出していた。2001年からはさらに福州、泉州とアモイの3市まで拡大している。

江蘇省常州市常捷電子有限公司は、十数年前から「労働組合と経営側との交渉制度」を発足させ、労働組合は定期的に、従業員の賃金や福祉などについて、経営側と交渉してきた。賃金交渉の成果として、従業員の平均賃金は交渉制度発足当初の月180元(1元=14.89円)から現在の月1208元まで上がり、集団的な労働争議も一度も発生しなかった。

30の省と市における最低賃金保障基準(元)

地域 基準 地域 基準 地域 基準
北京 400 浙江 320~380 海南 250~350
天津 340~350 安徽 165~240 重慶 210~270
河北 210~290 福建 210~380 四川 160~220
山西 180~300 江西 200~290 貴州 182~260
内モンゴル 221~273 山東 220~320 雲南 220~300
遼寧 180~240 河南 190~290 陝西 185~260
吉林 210~270 湖北 180~260 甘粛 240~289
黒龍江 170~250 湖南 190~280 青海 220~260
上海 423 広東 250~~547 寧夏 230~390
江蘇 210~320 広西 170~200 新彊 230~390

注:チベットではまだ確立されていない。

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