欧米系多国籍企業の一流大学卒業生の人材争奮戦

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年4月

中国の大学では、毎年7月には卒業式が行われるが、高学年の大学生は、卒業する前の年の11月から、すでに就職活動に入っている。11月になると、卒業を控える大学生は履歴書作りにはげみ、面接会が相次いで設けられ、企業の人事部門もあわただしい雰囲気に包まれる。

近年、北京や上海などの有名大学では、優秀な卒業生を狙う欧米系多国籍企業の動きがにわかに注目されている。中国に進出している欧米系多国籍企業は、成績優秀な有名大学卒業生を採用するために、さまざまな智恵を競い合っている。その一つは、企業名を明記する奨学金の設立である。たとえば、上海市では、復旦大学、交通大学という二大有名校の奨学金スポンサーのリストには、ベンツ、GE、IBM、モトローラ、P&Gなど100社近い欧米名門企業の名前がずらりと並んでいる。ノキアやエリクソンの最高責任者が中国を訪れた際にも、わざわざ、北京の清華大学と上海の交通大学のキャンパスに足を運び、学生に対して講演を行った。欧米系企業は、自己アピールやイメージ作戦に余念がない。

欧米系企業の中で IBMは、求人活動に大学生に親しみやすいインターネットを活用し、ひときわ目立っている。IBM(中国)人事部マネジャーの張氏によると、IBMは2000年から、新卒の求人活動を、中華英才網というネット企業に委託している。中華英才網は全国の大学で IBMの宣伝活動を行い、面接会をアレンジし、インターネット上で学生の応募を受けつけている。書類選考で応募者を絞り込んだうえで、IBMから提供された試験問題で二度にわたって筆記試験を行う。このようなプロセスを経て最後に残った学生に対して、IBMの人事部が直接に面接を行う。中華英才網には、特別なソフトを利用して応募者の分析や総括を行い、IBMに報告することも義務づけられている。IBMのように、人材募集を、第三者のプロ会社に委託する欧米系企業もたくさん現われている。

このように、名門大学の優秀卒業生は、卒業する前にすでに有名企業から内定をもらうことは決して珍しくない。欧米系多国籍企業は、優秀な人材を集めることに力を入れている。優秀な人材の採用に常に一歩遅れる日系企業は、今後、いかにこの激しい人材争奪戦に立ち向かい、人の採用で独自色を出すか、大きな課題となっている。

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