公式統計で組合加入者数が増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年12月

9月に発表された「労働力調査」によれば、労働組合加入者数は、1998年から99年の間に10万人以上増加し、全体で約730万人に達した。組合加入者数が公式統計で増加を記録したのは、1979年以来初めて。組合別では、建設関連職技術者組合(UCATT)、合同機械電気組合(AEEU)、小売流通関連労働組合(USDAW)、各教員関連組合などの伝統的分野で増加した。

今回の結果について労働組合会議(TUC)のモンクス書記長は、組合をとりまく環境はここ30年間で最も良好だと論評している。加入者増加に特に寄与しているのが、雇用関係法の一部として6月に施行された組合承認規則である。同規則は、職場(交渉単位)の50%以上の労働者が組合員であれば、自動的に使用者に組合を団体交渉の相手として承認させるなど、組合に有利な条項を含んでいる(本誌2000年9月号参照)。

また、組合が未組織事業所に提示している「パートナーシップ」も増員に寄与している。労使協調路線と言ってもよいこのアプローチには様々なモデルがありうるが、たとえばAEEUが1999年8月に英国第2のチャーター航空会社の姉妹会社、モナーク・エアクラフト・エンジニアリング(MAEL)との間で締結したパートナーシップ協定では、AEEUは同社の唯一の交渉相手として承認される代わりに、争議行為に訴えることを禁じられ、仲裁者の決定を受け入れねばならないなど、使用者にとって受け入れやすい内容となっている(本誌1999年11月号参照)。法律事務所のDLAによれば、9月までの12カ月間に新たに締結された承認協約は265件にのぼっており、さらに、パートナーシップなどの新しい協定の締結要求が組合から700件以上でている。

加入者を増加させるために、TUCはより直接的な行動も行ってきた。青年組合員をメンバーとするオーガナイジング・アカデミーは、組合への勧誘を使命とし、1999年には1万8000人を加入させた。加入者の増加にはまた、組合の意識変化も寄与していると見る識者もいる。以前とは異なり、組合は、富の創出と企業業績の向上において積極的な役割を担おうとしている。こうした姿勢は、TUC年次大会でモンクス書記長の基調演説でもはっきりと見て取れる。組合間の抗争を戒めたばかりか、経済成長、投資、訓練、生産性向上について語り、労使間のパートナーシップを称賛した。

もっとも、懸念材料がないわけではない。製造業などの一部の部門では組合員数は引き続き減少しており、また情報技術(IT)をはじめとするニュー・エコノミー部門には組合は浸透していない。さらに組織率については、これまでとほとんど変わっておらず、たとえば、正規従業員の場合は、3人に1人が加入しているにすぎない。TUCが特に懸念しているのは、若年層の組織率の低さである。たとえば40~49歳では5人に2人が加入しているが、20~29歳ではわずか5人に1人となっている。

ただ、こうした負の側面を勘案したとしても、組合員数の増加傾向は今後しばらくは続くであろうというのが、政労使の一致した見方である。

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