ネット経済の発展とe-ビジネス就業者

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

中国では、パーソナル・コンピュータの保有台数が2000万台を超えている。インターネット利用者数は急速に伸びており、2000年6月ではすでに1690万人を上回り、半年ごとに倍増する勢いで、近いうちに日本を抜くといわれている。ネット人口の急増を受けて、ネット・ビジネスもそれに負けない勢いで急成長し、インターネット業界ではやや乱立気味と言われるほど新規参入者が数多く現われた。米国留学帰国組や国内若手起業者によって設立された「捜狐」、「網易」と「新浪」などのポータル(玄関)サイトは、すでに米店頭株式市場(ナスダック)に上場を果たし、新浪は1日当たり2700万以上のアクセス件数があり、網易の創業者で会社の6割近くの株式をもつ丁磊(29歳)は、ナスダック上場に伴い、2.7億米ドルの個人資産を形成し、国内ネット・ビジネス億万長者ナンバー・ワンの地位に上りつめた。現在、登録された国内の企業サイトはすでに約3万4000に達したほかに、海外、特にアメリカにサーバーを置く中国語サイトも多く、国内で多大な人気を得ている。その他に、ネット書店、ネット・スーパーなどの電子商取引も現在では2000以上も生まれている。2000年の電子商取引額は8億元(1元=約13円)の見込みで、2002年には100億元に達すると予測されている。

ネット・ビジネスの発展は、丁磊のような億万長者を生んだだけでなく、他の業界より飛びぬけて高い収入を手に入れる若年層を誕生させた。2000年3月、ポータルサイトの「首都在線」は、年収20万元でネット司会者の公開募集を行った。全国各地から若者が殺到し、5月30日の最終審査で、清華大学外国語学部4年生の苑杭が首位に選ばれ、その場で「首都在線」での就職が決定され、年収20万元の雇用契約を結んだ。卒業を控えて就職活動中の女子大生が年収20万元の仕事を手に入れたのは、まさにインターネット時代だからこそ生まれた現代の神話である。

ネット・ビジネスの高収入は、伝統産業から数多くの優秀な人材を引き寄せた。ネット事業に携わる会社は、その規模と経営内容によって賃金のばらつきも大きいが、就業者は一般的に他業種の平均より高賃金を得ている。たとえば、総経理(社長)の場合、大手会社は有能な経営者を勧誘するためには年収60万元を約束することもあり、中小会社でも年収10万元の支給を惜しまない。平均的には20万元から40万元の年収を得るほか、会社の株式も取得できる。技術主管の副総経理(副社長)の年収は、大手会社ならおおよそ20万元から40万元の間で、小規模な会社なら約15万元であり、低くても約10万元である。ミドル層の技術者も、15万元から20万元の年収が得られる。また、中堅社員の場合、大手企業なら年収が8万元から12万元の間で、小企業でも6万元から8万元である。編集者やジャーナリストの月給は約3000元から4000元、編集責任者の月給は5000元から6000元で、部門責任者の月給は約1万元である。電子商取引や金融ビジネスのサイトでは、専門性が要求されるため、ニュースやその他の総合サイトより経営者の賃金がさらに高い。

中国のネット企業は新旧交替が激しく、現存の8割から9割が淘汰されるとも見込まれている。しかし、ネット経済発展の勢いは衰えることがなく、ドット・コムの世界が新たな神話を誕生させても驚くことはないであろう。

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