新失業保険協約、政府が承認を拒否

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

7月24日、ファビウス蔵相とオブリ雇用相は、使用者団体、労働団体、および全国商工業雇用協会(UNEDIC)の担当者に対して、政府による新失業保険協約の承認拒否を通告するとともに、「交渉の再開」を要求した。

蔵相と雇用相は共同通告書の中で、経営側、民主労働同盟(CFDT)、およびキリスト教労働同盟(CFTC)によって調印された失業保険協約の承認を政府が拒否することになった理由について、1点1点論拠を挙げている。政府は、協約のいくつかの条項が雇用復帰援助制度(PARE)のために「掲げられた目的と矛盾している」と判断して、「交渉の再開が望ましい」との結論に到達した。しかし、7月26日には、失業者へ不利益を与えないために、雇用置き換え手当(ARPE)と転職協定の延長に関する契約変更を認める2つのアレテ(命令)が官報に掲載される。政府は、これらの規定を新失業保険UNEDIC協約から切り離すことができると考えている。

協約の調印当事者にとっては、政府の拒否が現実のものとなった。7月11日に、フランス企業運動(MEDEF)のセリエール会長は、「間接的にも政府と協約の再交渉はしない」と言明していた。7月14日には、シラク大統領がPAREへの支持を表明したが、これも大きな意味を持ちえなかった。大統領の発言の翌日、オブリ雇用相はいらだちを隠さずに、「新規定は大統領が掲げた配慮とは裏腹に、『労使間の亀裂』を拡大することになる」と述べている。

雇用相と蔵相が署名した5ページに及ぶ通告書は、7月24日の午前中に各団体の責任者宛に発送される。

協約が調印される前の6月3日、両相はすでに交渉者宛に警告書を送っていた。今回、両相は「求職者へ個別的な援助を行う目的」に全面的な支持を表明しつつも、すべての基本的なポイントで反撃を試みている。例えば、2003年までにUNEDICに予測される750億フランの黒字について、両相は「失業補償の拡大に向けられるのは40億フラン以下にすぎず、この補償を受ける場合の最後の14カ月間の労働月数が8カ月から4カ月に短縮されたが、追加的な受給者は3万人にすぎず、手当受給失業者数はわずか0.3ポイントの増加にしかならない」と強調した。両相は、1993年以降、手当受給失業者の割合が11ポイント以上も低下していると指摘した。

2番目の批判は、「協約がPAREに必要な資金調達手段を保証していない」ことに向けられている。この結果、手当の逓減が実施されることになるという。「710億フラン(1フラン=14.06円)が保険料の引き下げに用いられることになるが、労働者のために予定されている引き下げ額よりも使用者の場合の方が40%も大きい」との指摘もある。PAREのために「いかなる具体的な予算枠」も定められていないので、PAREはいずれかの手当の中止もしくは廃止によって資金調達されるほかない。ところが、「こうした節約額をいまから決めることができないのは明らかだ」と両相は批判する。

第3に、政府は「二重システムの出現」を拒否した。もし「本当の努力をしない」失業者に対する制裁が「当然」となった場合、「失業者が拒否する権利を持たない雇用」の定義が曖昧なだけに、制裁は「国の責任になるに違いない」と政府は考えている。

第4に、政府は、転職協定などの措置の廃止を非難している。別に用意された論拠の中で、政府は、代わりとなるいかなる同等のシステムも定められていないと指摘する。ところで、これらの転職協定は、福祉プラン作成の義務を負わない中小企業に雇用されていた従業員が、経済的理由に基づいて解雇された場合に活用されている。やはり廃止が予定されている転職職業訓練手当の場合も、同様である。

第5に、両相は、「国は一部の規定について事後的な法的有効性の確認を条件とする協約を承認できない」とする1995年のコンセイユ・デタ(国務院)の判決を引用した。したがって、「協約が違法な条項を含んでいるという事実だけでも、協約全体の承認には障害となる」。

結論として、政府は、各当事者へ責任ある行動を呼びかけるとともに、交渉の再開を求め、必要ならば政府も参加すると提案している。しかし、このシナリオは MEDEF、CFDT、CFTC から一貫して拒否されているので、交渉拒否の可能性も大きい。経営側がこの労使共同運営機関を離脱した場合、大審裁判所に付託され、旧協約を遅滞なく適用するために暫定的管理者が指名されることになる。

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