急増した致死労働災害件数

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年4月

1999年前半には1088件の労働災害が発生、223人が死去し(1998年同期比26%増)、1231人が怪我をした。不十分な監督(国内には労働安全監督官が141人しかいない)、不十分な労働者訓練、企業が安全措置をとらないことがこの急増の原因とされる。さらに最近では労働費用を下げるために熟練度の低い労働者を短期間雇うことが多くなっていることも一因と指摘されている。特に労働災害が起こっているのはホーチミン、ハノイ、クワンニンで、産業別では発電、石炭、建設業に多い。また、死者を出した178の事故のうち、2人だけが起訴された。このため、労働・傷病兵・社会問題省(MoLISA)の中にはより厳しい処罰が必要であるという意見がある。なお、外資系企業は一般に労働安全衛生について高い評価をうけている。

労働災害の犠牲になっても、労働災害補償による対応が遅れ、補償制度の運営は非効率である。したがって実際に労働災害補償を受給している労働者は大変少ない。現行労働法では、労働災害の犠牲者やその家族は損害賠償を使用者あるいは社会保険からの給付で得ている。しかし基礎的な生活費を賄うには、金額が低すぎるという声が労務専門家から出ている。通常、労働能力の81%を失った労働災害の犠牲者は30カ月分の給料相当額、すなわち1200万ドン(100ドン=0.76円)から1500万ドンを使用者から直接受けている。一方、労働能力の61%を失った労働災害の犠牲者は、社会保険から月14万4000ドンから23万ドンを受給する。

労働・傷病兵・社会問題省(MoLISA)の労働保護局のブ・ナム・ビン代表によると、同省は労働災害の犠牲者を救済するための新基金の創設を提案している。この基金に使用者が労働者給与の0.2%から1%を拠出し、労働災害の犠牲やその家族に対する補償を行う。LPBは、各国営企業や同一産業(特に事故の多い石炭採掘、発電、建設など)に属する企業が、この新基金を創設することを促したいとしている。さらに、この基金は医療費の支払いや労働条件の改善にも用いられることが予定されている。

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