所得格差増大

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年12月

ブラジル地理統計資料院のデータを元に、サンパウロ州政府のデータ処理財団と労組の研究機関DIEESEが、サンパウロ首都圏の就労人口の所得について共同研究した結果、失業増加、所得低下により所得の集中が激しくなっていることが、証明された。1994年と1998年を比較すると1人当り所得は32%増加したにもかかわらず、市民の10%に当たる低所得層は24%増加したに過ぎない。一方、10%の富裕層は37%増加させて、底辺と頂上の格差をさらに広げた。この底辺とトップの差は1994年に41.2倍であったものが、1998年は45.5倍となった。同期に労組の指数で年間失業率は14.6%から17.3%へ増加しており、低額所得者の失業増加が、この格差を広げた。またブラジルも国際経済のグローバル化に組み込まれて、サンパウロ市は多国籍企業の拠点となった結果、所得が高い職種が集中した半面、職工のように工業の中級所得層は、工業の地方分散によって地方へ移転し、中級職種は減少したことも上下の格差を広げた。この期間に首都圏の就労人口に占める工業労働力が23.8%から19.1%へ減少したことでも、工業移転の大きさを証明する。なお住宅事情を見ると、マイホームの居住者は56.3%から54.3%に減少、大衆貯金の預金者は51.998%から35.1%へ低下して国民貯蓄の減少を示した。電話所有世帯は31.8%から50.4%へ、自動車所有世帯は41.6%から48.9%へ、社会水準の上昇を示しているが、スラム街の住民は市民全体の6.2%から9.1%へ増加、寄り合い世帯も4.6%から5%となり、底辺の経済状態悪化を証明した。また、この調査では女性が世帯主の家族が世帯全体の20.8%から27.5%へ増加して、男性の早期死亡や別居離婚の増加を証明した。

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