職業訓練校の現状と問題点

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年8月

5月2日の教育デーを受けて、現地マスコミでインドネシアの職業訓練校の現状と問題点が取り上げられた。現在、大ジャカルタ首都圏だけで、職業訓練校としては経済・会計学校が340校、技術訓練校が110校、観光業学校が25校存在し、各校では約100人から1000人の生徒が学んでいる。職業訓練校の卒業生は関連産業に就職できることが望ましいが、卒業生の多くは実社会に必要な技術を身につけていないためそれが難しいというのが現状である。

職業訓練校の問題点としては、柔軟性の欠如・不適切なカリキュラム、高コストの学校運営、学校と産業との間の大きなギャップがあげられる。「産業と教育の提携」をスローガンに、1994年に当時の教育文化相がキャンペーンを繰り広げたが、結果として失敗に終わっている。これを受けて、職業訓練校の質の改善のためには迅速な行動(政策)が必要であり、カリキュラム・訓練システムは新しい状況に適応するように改定されるべきであるとの批判も出ている。

職業訓練校委員会のハリー・ダルソノ氏は、「政府は実社会と職場の急速な変化に敏感かつ適応していかねばならない。そして、訓練校は、交渉力や協調力、政策決定、批判的な思考、相互関係やコミュニケーションといった総合的なスキルの向上にも焦点を当てなくてはならない」としている。

しかし、大学の学位が取れないために、親は子供を職業訓練校に入学させたがらない。従来の認識では、職業訓練校は通常の中学・高校よりも劣っているとされてきた。ハリー氏は、若者が職業を得るために必要な特殊な技術を身につけるために、職業訓練教育は最も効果的な方法と述べている。しかし、社会とビジネスは急速に変化しており、生涯を通じて同じ職業に従事できる人は非常に少数であろう。学校のカリキュラムが特定の労働状況を満たすようにしか計画されておらず、非常に保守的で硬直的なものになっているために、学校と産業の間には大きな溝が存在している。教育委員会では、急速な技術変化に対応するために、政府に職業訓練校のドラスティックな改革を要請している。マレーシア、タイ、フィリピンといった近隣の国と比較しても、インドネシアの職業訓練に対する政策は遅れており、教育、殊に職業教育は軽視されているのが実状である。

現在の経済不況のなか、大学を卒業しても職を得られないでいるのか、それとも職業訓練校で技術を得てキャリアを積むのかは子供たちの判断に委ねられている。

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